この章で学ぶこと
ポータルサイト経由で相談は来るのに受任できないとき、場面ごとの原因と対処法を学びます。受任率の目安、「費用が高い」と断られる場合、相談だけで終わる場合、電話とメールの差、複数の弁護士と比較される場合の5つのケースについて、自分の状況に当てはめて判断できるようにします。
弁護士がポータルで相談は来るのに受任できないときの実務Q&A
集客の手段としてポータルサイトを活用している弁護士にとって、「相談は来るのに受任に至らない」という状況は珍しくない。月に5〜6件の相談がある。しかし受任は月1件あるかないか。「費用が高い」「他の先生にも相談してみます」と言われて終わることが多い。そもそも自分の受任率が低いのかどうかすら分からない。
受任できない原因は、場面によって異なる。この章では、ポータル経由の受任でよくある疑問を一つずつ取り上げ、場面ごとの対処法を整理する。自分のケースに近い項目から読んでもらえればよい。
Q1 受任率の目安はどのくらいか — 自分の数字は低いのか
まず「受任率」の定義を決めておく。ここでは、ポータル経由の相談件数に対して、実際に受任に至った件数の割合を指す。月5件の相談で1件受任なら受任率20%だ。
ポータル経由の受任率の明確な統計データは公開されていない。ただし、集客支援の現場では、ポータル経由の受任率は20〜30%程度と言われることが多い。月5件の相談で1〜2件受任できていれば、特別低いとは言えない。
ただし、この数字は分野によって大きく変わる。
- 離婚・相続 — 相談者が「弁護士に頼む」と決めてから連絡してくるケースが比較的多く、受任率は高めになりやすい
- 債務整理 — 費用の問題が直接関わるため、相談しても費用面で断念するケースが出やすい
- 交通事故 — 弁護士費用特約の有無で受任率が大きく変わる。特約がない場合は費用面で離脱しやすい
自分の受任率を把握するには、まず相談件数と受任件数を3か月分記録してみるとよい。分野別に分けると、どの分野で受任率が低いかが見えてくる。
Q2 「費用が高い」と言われて断られる場合の対処法
「費用が高い」で終わる相談が多い場合、2つの原因が考えられる。
原因A 相談者が弁護士費用の相場を知らない
初めて弁護士に相談する人は、着手金や報酬金の仕組みを知らない。「数万円で済む」と思って連絡してきて、数十万円と聞いて驚く。これは弁護士の料金が高いのではなく、相談者の想定が現実と合っていないだけだ。
対処法は、相談前に費用の目安を伝えておくことだ。ポータルのプロフィール上で「離婚の着手金は○○万円〜」のように範囲を記載しておけば、その金額を見たうえで連絡してくる人が増える。結果として、費用で断られる割合は下がる。
原因B 案件の経済的利益と弁護士費用のバランスが合わない
たとえば、回収額が30万円の債権で着手金が20万円かかると言われれば、費用対効果が合わないと感じるのは当然だ。この場合は料金設定の問題というよりも、その分野でポータルから集客する構造自体に無理がある可能性がある。少額案件が多い分野では、ポータル以外の集客手段(自社サイトでの情報発信など)を検討する価値がある。
Q3 「相談だけで終わる」「愚痴のような相談」が多い場合
相談者が何かを依頼したいのではなく、ただ話を聞いてほしいだけ、というケースは実際に多い。特に、無料相談を前面に出している場合、依頼意思のない相談者が集まりやすい。
このタイプの相談が多い場合、見直すべきポイントは2つある。
プロフィールの訴求内容
「お気軽にご相談ください」「どんなことでもまずはお電話を」といった表現は、相談のハードルを下げる一方で、依頼意思のない層も呼び込む。「離婚調停を検討中の方」「相続放棄の期限が迫っている方」のように、具体的な状況を示す表現に変えると、依頼意思のある層が集まりやすくなる。
無料相談の設計
無料相談を時間無制限にしていないだろうか。「初回30分無料」のように時間を区切ると、相談者も弁護士も、限られた時間の中で要点を話そうとする。結果として、依頼に発展する可能性のある相談が効率的に進む。時間を区切ること自体は相談者にとってもマイナスではない。「30分で今後の方向性をお伝えします」と言えば、むしろ安心感を与えられる。
Q4 電話相談とメール相談で受任率に差はあるか
結論から言えば、一般的に電話相談のほうが受任率は高い傾向にある。理由は2つだ。
理由1 電話で連絡する人は切迫度が高い
メールで問い合わせる人は、まだ情報収集の段階にいることが多い。一方、電話で連絡してくる人は、「今すぐ話したい」という切迫感があるケースが多い。離婚を突然切り出された、借金の督促が来た、といった差し迫った状況だ。切迫度が高い相談者は、相談の場で依頼を決断しやすい。
理由2 電話では信頼関係を構築しやすい
声のトーンや話し方で、弁護士の人柄が伝わる。メールの文面だけでは伝わらない安心感や誠実さが、電話では伝わる。「この先生なら任せられそうだ」という感覚は、電話のほうが生まれやすい。
ただし、電話相談に対応できる時間帯が限られている場合は、メール相談を受け付けないわけにはいかない。その場合は、メールの返信を早くすることで差がつく。メール相談者は複数の弁護士に同時に連絡していることが多い。最初に丁寧な返信をくれた弁護士に決める人は少なくない。
Q5 複数の弁護士に相談している人への対応はどうすればよいか
ポータル経由の相談者は、同時に2〜3人の弁護士に連絡していることが珍しくない。「他の先生にも相談してみます」と言われるのは、比較検討の最中だということだ。
この状況で受任率を上げるポイントは3つある。
応答の速さ
前述のとおり、最初に返信した弁護士が選ばれやすい。メール相談なら数時間以内、遅くとも当日中に返信する。電話の折り返しも同様だ。
見通しの具体性
「まずは資料を拝見してから」で終わるのではなく、相談の段階で分かる範囲の見通しを伝える。「お話の内容からすると、○○の手続きが考えられます。期間は○か月程度、費用は○○万円前後が目安です」というレベルの情報があると、相談者は比較判断しやすくなる。他の弁護士が曖昧な回答しかしていなければ、具体的な見通しを示しただけで選ばれる。
次のステップの提示
「ご検討ください」で終わるのではなく、「もし進める場合は、○○の書類をお持ちいただければ、次回の面談で方針を確定できます」と具体的に伝える。相談者が次に何をすればよいかが明確になると、行動に移りやすい。
まとめ
ポータル経由で受任できないときの対処法は、場面ごとに異なる。
- 受任率の目安 — ポータル経由で20〜30%程度と言われるが、分野によって差がある。まず3か月分の数字を記録する
- 「費用が高い」で断られる — プロフィール上で費用の目安を事前に示す。分野と料金帯の整合性も確認する
- 相談だけで終わる — プロフィールの訴求を具体的な状況に絞り、無料相談の時間を区切る
- 電話とメールの差 — 電話のほうが受任率は高い傾向。メールの場合は返信速度で差がつく
- 複数の弁護士と比較されている — 応答の速さ、見通しの具体性、次のステップの提示で差をつける
すべてを一度に変える必要はない。自分の相談で最も多いパターンがどれかを見極めて、そこから改善するのが現実的だ。