解決事例ページの作り方──守秘義務を守りつつ専門性を示す
目次
- 解決事例ページに必要なコンテンツ(What)
- なぜ解決事例ページが必要か(Why)
- サンプルサイトで見る実例(How it looks)
- 実践チェックリスト
離婚(被請求者側)専門サイトの解決事例ページは、業務紹介ページが「何ができるか」を伝えるのに対して、「実際にどう解決したか」を証明するコンテンツです。被請求者側の検索データを分析すると、「自分と同じ状況でどうなったか」というリスク・デメリットを知りたいキーワードが609件、「実際にいくらになったか」という金額を知りたいキーワードが271件確認されています。これらの検索意図に答えられるのは解決事例だけです。守秘義務との両立が気になる方も多いと思いますが、匿名化の4原則(名前・年齢・地域・固有事情の変更)を守れば、弁護士法の守秘義務規定に抵触することなく事例を公開できます。この記事では事例ページに必要な要素(What)→なぜ事例ページが必要か(Why)→サンプルサイトで見る実例(How it looks)の3層で解説します。
解決事例ページに必要なコンテンツ(What)
解決事例ページには2つの層があります。複数の事例を並べる一覧ページ(/cases/)と、1件ずつ詳しく解説する個別事例ページ(/cases/case-1/ 等)です。それぞれで「何を書くか」の役割が異なるため、分けて整理します。
事例一覧ページの設計──「自分に近い事例があるか」を一目で判断させる
一覧ページは「自分の状況に近い事例があるか」を確認する入口です。最初に用意する件数は3〜5件で十分です。少ない件数でも、状況のバリエーションが揃っていることの方が重要です。
一覧ページの各カードには次の4点を含めます。①タイトル(状況と結果の両方を入れる)、②状況タグ(「財産分与」「DV」「養育費」等、業務分類と対応するタグ)、③結果ハイライト(1〜2行で示す結果の要約)、④個別ページへのリンク。タイトルは「財産分与の事例」のような業務名だけでなく、「財産分与で適正額を獲得した事例」のように、状況と結果が伝わる形にします。訪問者が「これは自分の状況に近い」と判断できる情報量がカードに入っていることが、一覧ページの設計の核心です。
個別事例ページの4段構成
個別事例ページは次の4段構成で統一します。構成を揃えることで、事例が増えてもサイトに一貫性が生まれ、訪問者が事例間を比較しやすくなります。
- 相談内容: 相談者がどのような状況で相談に来たかを説明する。属性(年代・家族構成・職業の概要)、争点(財産分与の対象資産・養育費の金額・慰謝料請求の根拠等)、相談時の懸念点(「相手から請求された額が高すぎる」「証拠が不十分だと言われた」等)を含める。固有名詞・地名・特定できる数字は匿名化する
- 対応内容: 弁護士が何をしたかを具体的に書く。「交渉しました」ではなく「○○の法的根拠に基づき、△△の主張を行い、□□の証拠資料を提出しました」という具体性が専門性の証拠になる。弁護士の戦略的判断(なぜその手段を選んだか)を書けるとE-E-A-Tが高まる
- 結果: 数字で示せる場合は具体的に記載する(「請求額200万円に対して、和解額80万円で解決」等)。数字が特定につながる場合は「請求額の4割程度で解決」のように幅を持たせた表現でも十分な情報になる。「必ず同様の結果になります」等の結果保証表現は使わない
- ポイント解説: この事例で重要だった法的ポイントや、同じ状況の方が知っておくべきことを解説する。事例の応用性を広げるセクションで、他の訪問者が「自分にも当てはまる可能性がある」と感じられる内容にする
事例ページ必須項目と匿名化の4原則
解決事例ページで必ず対応すべき匿名化の4原則を確認しておきましょう。
| 項目 | 内容の例 | 匿名化の要点 |
|---|---|---|
| 相談者の属性 | 40代・会社員・子1名 | 氏名は使わない。年齢は「40代」等の範囲表記。子の人数は変更可。職業は業種にとどめる |
| 争点・請求内容 | 財産分与で不動産の評価額が争点になった | 不動産の所在地・具体的な住所は記載しない。金額は「数百万円規模」等に一般化できる |
| 対応内容 | 鑑定評価書を取得し、相手方の主張額との差異を反証した | 弁護士の具体的な法的戦略は記載してよい。「鑑定会社A社に依頼」等の固有名詞は除く |
| 結果 | 請求額の約40%で和解成立 | 具体的な金額が特定につながる場合は割合表記。期間は「約〇ヶ月」でよい |
| ポイント解説 | 不動産評価の証拠収集が結果を左右した点 | 法的解説は特定の事件でなく一般論として書ける。むしろここが最も自由に書ける部分 |
また、結果に関する表現には注意が必要です。「同じ状況では必ず〇〇が取れます」「絶対に有利になります」といった断定表現は弁護士業務広告規程に抵触する可能性があります。「この事例では〇〇という結果になりました」「同様の状況で有利な解決ができた実績があります」のように、あくまでその事例における結果として書くことが原則です。
なぜ解決事例ページが必要か(Why)
総論07(E-E-A-T)と、離婚(被請求者側)の検索データを接続することで、解決事例ページが「業務紹介ページでは果たせない役割」を担っていることが分かります。
検索データが示す「自分と同じ状況の事例を知りたい」という意図
離婚(被請求者側)の1,255キーワードのうち、「リスク・デメリットを知りたい」というニーズが強く現れているキーワードは609件です(ニーズの強さが10段階中6以上のもの。1つのキーワードに複数のニーズが同時に現れるため重複を含みます/キジラク調べ・抽出日: 2026-07-16)。これは「自分がこの状況に置かれたらどうなるか」「放置するとどういう結果になるか」を知りたいという意図のキーワード群です。
「財産分与 拒否 どうなる」「養育費 払わないと どうなる」「慰謝料 請求された 対処法」といった検索をする被請求者は、弁護士に相談する前に「同じ状況の人がどうなったか」を知りたいと思っています。業務紹介ページが提供できるのは「弁護士に依頼するとこういうことができます」という説明ですが、事例ページは「実際にこういう状況でこういう結果になりました」という実証です。リスク・デメリットを知りたい検索者にとって、この「実証」の方が検索意図に直接応える情報になります。
さらに、このカテゴリの86%のキーワードで「自分のケースについて知りたい」という状況特定性が高い傾向があります。「財産分与 相場」より「財産分与 子あり 専業主婦 家 名義 離婚」のような具体的な状況で検索している人が多い。これは事例のタイトルや内容に状況の詳細(子の有無・職業・争点)を入れることで、そうした検索者に発見されやすくなることを意味します。
「実際にいくらになったか」に答えられるのは事例だけ
被請求者側の検索データでは、「金額がいくらになるか知りたい」というニーズが強く現れているキーワードが271件あります(同じくニーズの強さ6以上・重複を含む)。「財産分与 相場」「養育費 いくら払う」「慰謝料 請求 相場」など、実際の金額を知りたいという意図です。
業務紹介ページでも「養育費の相場」「財産分与の計算方法」は書けますが、それは一般的な説明にとどまります。「相手から300万円の慰謝料を請求されましたが、弁護士が証拠の不十分さを主張し、120万円で和解できた」という事例は、金額を知りたい検索者が本当に知りたい「実際の金額感」を具体的に示せます。匿名化後の参考値であることを明示すれば、金額を伏せる必要はありません。
| 業務紹介ページ | 解決事例ページ | |
|---|---|---|
| 答えられる問い | 「弁護士に頼むと何をしてくれるか」 | 「実際の状況でどう解決したか」 |
| 主に応える検索ニーズ | 進め方・手続きを知りたい/リスク・デメリットを知りたい | 同じ状況でどうなったか知りたい/実際の金額を知りたい |
| 掲載内容の性格 | 一般的な説明・手続きの解説 | 特定の事例の記録(匿名化済み) |
| SEO上の役割 | 業務分野KWでの検索ランキング | 状況特定KW・金額KWでの検索ランキング |
| E-E-A-Tへの寄与 | 専門性(Expertise)の提示 | 経験(Experience)の提示 |
E-E-A-Tの経験要素──解決事例は弁護士の直接経験の証拠(総論07)
総論07(E-E-A-T)では、Googleの品質評価でE-E-A-TのE(Experience=経験)が重視される点を学びました。特にYMYL(法律・医療・金融等、生活に重大な影響を及ぼす分野)では、情報の提供者が実際に経験したことを示しているかどうかが評価のポイントになります。
解決事例ページは、このE(経験)要素を示す最も直接的なコンテンツ形式です。弁護士が実際に関与した事件の記録として、「どのような状況で」「どのような判断をし」「どのような結果になったか」を記述することで、この弁護士が「実際に経験を積んでいる」という根拠を訪問者とGoogleの両方に示せます。一般的な法律解説記事が「書いてある内容の専門性(Expertise)」を示すのに対して、事例ページは「書いた人の経験(Experience)」を示せる点で、他のコンテンツと役割が異なります。
守秘義務と公開の両立──匿名化で開示可能な範囲
弁護士法23条および弁護士職務基本規程23条は、依頼者に関する情報の守秘を義務付けています。しかし、匿名化によって特定の依頼者と結びつかない形にした情報は、一般的な知識・経験の提示として扱えます。
実務上の判断基準は「この記述から依頼者本人が特定できるか」です。氏名・住所・職場名・事件番号等の直接特定情報を除くことは当然として、「特定の地域の特定の会社に勤める特定の年齢の方」のように組み合わせで特定できる情報も変更します。年齢は「40代」という範囲表記に、地域は「関東地方」程度に、職業は「会社員」「自営業」という大分類にとどめることが一般的です。依頼者の事前同意を取得できる場合はその旨を明記することが望ましいですが、匿名化が適切に行われている限り、同意なしの掲載が直ちに守秘義務違反になるわけではありません。不安な場合は、掲載前に依頼者への確認を行うか、弁護士会に相談することをお勧めします。
サンプルサイトで見る実例(How it looks)
上記の原則が実際のページでどう表現されているかを、サンプルサイト(sample-rikon.kijiraku.com/cases/)で確認しましょう。事例一覧ページと、2つの個別事例ページをウォークスルーします。
事例一覧ページ(/cases/)── 状況タグで「自分の事例」に気づかせる
サンプルサイトの事例一覧ページには、3件の事例カードが並んでいます。各カードは事例タイトル・状況タグ・結果の要約・詳細リンクで構成されています。
機能: 訪問者が「自分の状況に近い事例があるか」を一目でスキャンできる索引です。状況タグ(「財産分与」「DV」「養育費」等)がカードに付いていることで、業務紹介ページと同じ分類で事例を探せます。
なぜここに置くか: 検索から直接事例一覧ページに到着する訪問者と、トップページ・業務紹介ページから流入する訪問者の両方に対応する必要があります。直接到着の場合は「他にどんな事例があるか」を一覧で把握させ、流入の場合は「自分の業務(財産分与)の事例はあるか」を確認させます。状況タグはどちらの動線にも対応します。
自事務所への適用ポイント: 事例タイトルは「〇〇の事例」という形式でなく、「〇〇という状況で△△を実現した事例」のように状況と結果を両方入れましょう。状況タグは業務紹介ページの6業務分類(離婚協議・財産分与・親権・養育費・DV・不貞慰謝料)と対応させると、サイト全体の一貫性が高まります。最初は3件でも、1件ずつ確実に充実させていくことが重要です。
財産分与の事例(/cases/case-1/)── 金額と戦略の組み合わせがE-E-A-Tを示す
サンプルサイトの「財産分与で適正額を獲得した事例」(case-1)は、相談内容→対応内容→結果→ポイント解説の4段構成で記述されています。
機能: 「財産分与 相場」「財産分与 いくら」といった金額を知りたい検索に対して、「実際のケースでの金額感」を提示します。相談者の状況(不動産を含む財産分与で相手方と金額が折り合わなかった)→対応(不動産鑑定評価の取得と法的主張)→結果(相手方主張額との乖離を埋めた)→ポイント解説(不動産評価額の争い方)という流れで、弁護士の関与価値が具体的に伝わります。
なぜこの構成か: ポイント解説セクションが、E-E-A-T(経験要素)を最も強く示す部分です。「なぜ不動産鑑定評価を取得することが有効だったか」「相手方がどのような主張をしてきて、それに対してどう反論したか」という弁護士の思考プロセスと法的根拠を書くことで、「この弁護士はこの分野を実際に経験している」という信頼性が生まれます。
自事務所への適用ポイント: 「結果」のセクションで金額を書くことをためらう方も多いですが、金額を知りたい検索者(271件のキーワード)は実際の金額感を求めています。「和解額はご相談内容により異なりますが、この事例では請求額の約40%で解決しました」のように、個別性を断りつつ参考値を示す書き方が有効です。また、ポイント解説を弁護士本人の言葉で書くと、一般的な法律解説サイトとの差別化になります。
DV保護命令の事例(/cases/case-2/)── 緊急性の高い事例での注意点
サンプルサイトの「DV被害者の保護命令取得事例」(case-2)は、緊急性の高い状況を扱う事例です。
機能: 「DV 弁護士 相談」「保護命令 申請 流れ」といった、リスクや緊急時の対応を知りたい検索者に対して、「実際にどう対応できたか」を示します。相談内容の冒頭で状況の緊急性を伝え、弁護士の迅速な対応と保護命令取得というプロセスを追うことで、「急いで相談すべき」というCTAへの動線が自然につながります。
なぜこの事例が重要か: DV・保護命令は被請求者側サイトでも扱う業務のひとつです(DV加害側の依頼を受ける事務所と、被害者支援を行う事務所で立場は異なりますが、事例としてどちらも掲載できます)。緊急性の高い状況の事例は、訪問者が「今すぐ相談すべきかどうか」を判断する材料になるため、CTAへの誘導効果が高くなります。
自事務所への適用ポイント: DV・緊急案件の事例は匿名化を特に徹底してください。被害者の安全に関わる情報(避難先・保護施設の種類等)は記述しないことが原則です。また、ポイント解説で「証拠収集の方法」「保護命令申立ての実際の流れ」を詳しく書くと、同じ状況の訪問者にとって実用的な情報になります。
実際にsample-rikon.kijiraku.com/cases/から各事例ページに進み、4段構成の実例を確認してみてください。キジラクの記事作成機能を使えば、事例のポイント解説部分──弁護士の専門知識を反映した法的解説──を効率的に作成できます。事例の相談内容・対応・結果のメモを元に、KWデータに基づいた構成でポイント解説を整えることができます。
実践チェックリスト
- □ 解決事例が3件以上あるか(最低ラインとしてまず3件)
- □ 各事例が「相談内容→対応内容→結果→ポイント解説」の4段構成になっているか
- □ 名前・年齢・地域・固有の事情が匿名化されているか
- □ 「必ず取れます」「絶対に有利になります」等の結果保証表現を使っていないか
- □ 事例のタイトルに「状況」と「結果」の両方が入っているか
- □ 一覧ページに状況タグ(財産分与・養育費・DV等)があり、自分に近い事例を探しやすいか
- □ 個別事例ページの末尾にお問い合わせへのCTAがあるか
解決事例ページの設計原則と実例が確認できました。What(一覧+個別事例の構成要素と匿名化)→ Why(「同じ状況でどうなったか」「実際の金額」「自分のケース」を知りたいという検索データとE-E-A-T経験要素)→ How it looks(サンプルサイトの実例)の3層で理解することで、守秘義務に配慮しながら効果的な事例ページを設計できます。次の記事では、料金ページの作り方を学びます。「費用がいくらか知りたい」という不安は、被請求者側の検索動機で最大規模のひとつです。解決事例ページで「実際の結果」を見せた訪問者が次に気になる「費用はいくらか」に答えるページの設計を解説します(→料金ページの作り方)。
監修: 花井 直哉(キジラク運営)