この章で学ぶこと
Google広告を代理店に頼まず、自分で小さく始めたいと考えている方に向けて、アカウントの開設から最初の配信開始までの手順を学びます。Google広告は、最初からすべての設定を完璧にする必要はありません。まず1つの分野、1つの地域に絞って配信し、数字を見ながら調整していく進め方が基本です。広告文の作成にあたっては、弁護士の広告規制に沿った書き方にも触れます。
Google広告を小さく始める場合の全体の流れ
Google広告の配信開始までの流れは以下の5ステップです。
| ステップ | 内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 1. アカウント開設と支払い設定 | Googleアカウントを使ってGoogle広告のアカウントを作成し、支払い方法を登録する | 15〜30分 |
| 2. キーワードの設定 | どのような検索に対して広告を表示するかを決める | 30分〜1時間 |
| 3. 広告文の作成 | 検索結果に表示される広告の見出しと説明文を作る | 30分〜1時間 |
| 4. 予算と入札の設定 | 1日の上限予算と入札方法を決める | 10〜15分 |
| 5. 除外キーワードの設定 | 広告を表示させたくない検索を除外する | 15〜30分 |
すべてを合わせても、初回の設定は2〜3時間で完了します。設定後すぐに配信が始まり、早ければ当日中に広告が表示されます。
手順1: アカウント開設と支払い設定
エキスパートモードで開設する
Google広告のアカウント開設ページ(ads.google.com)にアクセスし、Googleアカウントでログインします。初回アクセス時に「スマートモード」と「エキスパートモード」の選択を求められることがあります。エキスパートモードを選んでください。スマートモードはGoogleが自動で設定を行うため簡単ですが、キーワードの細かい設定や除外キーワードの設定ができません。弁護士の広告では、表示させたくない検索を除外する必要があるため、エキスパートモードでの運用が前提になります。
支払い設定
アカウント開設時に支払い方法を登録します。クレジットカードまたはデビットカードが必要です。広告費は後払い(一定額に達するか毎月の締め日に請求される)で、配信前に費用が発生することはありません。
キャンペーンを作成せずに開設する
開設時に「最初のキャンペーンを作成」という画面が出ることがあります。ここでは作成せずに進み、管理画面に入ってから設定するほうが、各項目を確認しながら進められます。
手順2: キーワードの設定 — 地域名×分野名で絞る
Google広告は、ユーザーがGoogleで検索したキーワードに連動して表示されます(検索連動型広告)。どのキーワードに対して広告を表示するかを設定します。
最初のキーワードの選び方
弁護士がGoogle広告を小さく始める場合、「地域名 × 分野名」の組み合わせから始めるのが基本です。
- 例: 「渋谷 弁護士 離婚」「新宿 弁護士 相続」「横浜 離婚相談」
地域名を入れる理由は、商圏外のクリックを避けるためです。「弁護士 離婚」だけだと、全国からのクリックに対して広告費が発生します。来所が前提の事務所であれば、来所できない地域からのクリックは費用の無駄になります。
マッチタイプの設定
キーワードを登録する際に、マッチタイプ(キーワードの一致範囲)を選びます。最初は「フレーズ一致」を使うのが安全です。
| マッチタイプ | 表示される検索の範囲 | 例(キーワード: 渋谷 弁護士 離婚) |
|---|---|---|
| 完全一致 | 登録したキーワードとほぼ同じ検索にのみ表示 | 「渋谷 弁護士 離婚」「渋谷 離婚 弁護士」 |
| フレーズ一致 | 登録したキーワードの意味を含む検索に表示 | 「渋谷 離婚 弁護士 費用」「渋谷区 離婚弁護士 おすすめ」 |
| 部分一致 | 関連すると判断された幅広い検索に表示 | 「東京 離婚 法律事務所」など、かなり広い範囲に表示される可能性がある |
部分一致は意図しない検索にも広告が表示されるため、最初から使うと無駄なクリックが増えやすくなります。フレーズ一致で始め、配信データを見ながら調整しましょう。
地域ターゲティングの設定
キーワードとは別に、広告を配信する地域を設定します。キャンペーンの設定画面で配信地域を指定できます。市区町村単位、または事務所からの半径で指定します。この設定をしておけば、キーワードに地域名を入れなくても、指定した地域のユーザーにだけ広告が表示されます。ただし、キーワードにも地域名を入れておくほうが、意図と合った検索に表示されやすくなります。
手順3: 広告文の作成 — 広告規制に沿った書き方
検索結果に表示される広告文(レスポンシブ検索広告)は、見出し(最大15本・各30文字以内)と説明文(最大4本・各90文字以内)で構成されます。Googleがこの中から組み合わせを自動で選び、検索に最も合う形で表示します。
広告文に入れるべき情報
- 事務所名
- 取扱分野(その広告で訴求する分野)
- 地域名(所在地・最寄り駅)
- 相談の方法(電話・メール・オンライン対応の有無)
- 初回相談の費用(無料の場合は「初回相談無料」と明記できる)
広告規制で避けるべき表現
弁護士のGoogle広告も「弁護士等の業務広告に関する規程」の適用対象です。以下の表現は避ける必要があります。
| 避けるべき表現 | 理由 | 代替表現の例 |
|---|---|---|
| 「勝訴率○%」「解決率○%」 | 誤導のおそれがある表示として禁止されている(規程第3条第4号) | 使わない(代替不可) |
| 「専門」(○○専門弁護士、○○専門事務所) | 公的な専門認定制度がないため、誤導のおそれがある | 「取扱分野: 離婚・親権」「離婚問題に注力」 |
| 「業界No.1」「地域で最も実績がある」 | 客観的に実証できない優位性の表示は誇大広告に該当する可能性がある | 使わない(代替不可) |
| 「必ず解決します」「絶対に勝ちます」 | 結果の保証は誤導のおそれがある | 使わない(代替不可) |
広告文は、事実として確認できる情報(所在地・取扱分野・相談方法・費用)を中心に構成してください。能力や結果を断定する表現は、規制に抵触するリスクがあります。
手順4: 予算と入札の設定
1日の予算
Google広告は1日の上限予算を設定できます。最初は1日1,000円〜3,000円程度から始めるのが安全です。月額に換算すると3万円〜9万円程度になります(Googleは日予算の最大2倍まで1日に使う可能性がありますが、月単位では日予算×30.4日を超えません)。
この金額で何クリック得られるかは、キーワードの競争度によります。弁護士関連のキーワードは1クリックあたりの単価が高い傾向にあり、地域や分野によってはクリック単価が数百円〜数千円になります。1日の予算が少なすぎると、1日に1〜2クリックしか得られず、効果の判断に十分なデータが集まるまでに時間がかかります。
入札方法
最初は「クリック数の最大化」(自動入札)を選ぶのが簡単です。Googleが設定した予算の範囲内でクリック数が最も多くなるよう、入札額を自動で調整します。データが集まってきたら「コンバージョン数の最大化」(問い合わせや電話の回数を最大化する入札)に切り替えることもできますが、コンバージョンの計測設定が必要になります。
手順5: 除外キーワードの設定 — 無駄なクリックを減らす
除外キーワードは、「この検索には広告を表示しない」というキーワードです。弁護士のGoogle広告では、以下のような検索を除外しておくと無駄なクリックを減らせます。
| 除外すべきキーワードの例 | 除外する理由 |
|---|---|
| 「弁護士 なるには」「弁護士 年収」「弁護士 試験」 | 弁護士を目指している人の検索であり、相談者ではない |
| 「弁護士 ドラマ」「弁護士 漫画」 | エンターテインメント目的の検索 |
| 「無料」(初回相談が有料の場合) | 無料相談を探している人がクリックしても、有料と分かった時点で離脱する |
| 「求人」「採用」「転職」 | 求職者の検索であり、相談者ではない |
除外キーワードは配信開始時にすべてを網羅する必要はありません。配信後に「検索語句レポート」(実際にどのような検索で広告が表示・クリックされたかのレポート)を確認し、相談に関係のない検索が見つかるたびに除外キーワードに追加していきましょう。この作業を週に1回程度行うことで、無駄な広告費を削減できます。
配信後に確認すべき数字
配信を開始したら、管理画面で以下の数字を確認します。
| 数字 | 意味 | 確認の目安 |
|---|---|---|
| 表示回数 | 広告が検索結果に表示された回数 | 表示回数が極端に少ない場合、キーワードの検索ボリュームが小さいか、入札額が低い可能性がある |
| クリック数 | 広告がクリックされた回数 | 表示されているのにクリックされない場合、広告文の訴求力が弱い可能性がある |
| クリック率(CTR) | 表示回数に対するクリック数の割合 | 検索連動型広告の場合、一般的に3〜5%以上が目安とされる |
| クリック単価(CPC) | 1クリックあたりの費用 | 想定より高い場合、キーワードの競争が激しい。地域や分野を絞ることで下がる場合がある |
| コンバージョン数 | 問い合わせ・電話などの成果の回数 | コンバージョン計測を設定していないと表示されない。設定方法は別途確認が必要 |
最初の1〜2週間はデータを集める期間と考え、頻繁に設定を変えないほうがよいでしょう。Googleのアルゴリズムが最適化するのに一定のデータ量が必要なためです。2週間分のデータが集まったら、検索語句レポートを見て除外キーワードを追加し、効果の低いキーワードを停止してください。
まとめ — まず1分野・1地域で小さく始めて効果を確認する
Google広告は、アカウント開設→キーワード設定→広告文作成→予算設定→除外キーワード設定の5ステップで配信を開始できます。代理店を挟まない場合、自分の手で設定を行うことになりますが、初回の設定は2〜3時間で完了します。
最初から複数の分野・広い地域で配信すると、予算が分散してどこに効果があるか分からなくなります。まず1つの分野、1つの地域に絞って配信し、2週間〜1ヶ月のデータを見てから、拡大するか・キーワードを変えるか・停止するかを判断してください。広告文の作成にあたっては、「弁護士等の業務広告に関する規程」に沿い、結果の保証や根拠のない優位性の表示を避け、事実として確認できる情報で構成することが重要です。