弁護士が記事に回せる分量を実測で見積もる3つの手順
結論・要点
毎月続けられる分量は、予定表を眺めても意欲でも決まりません。決められるのは、期日が重なった月に原稿へ回せた時間と、1本を最後まで通して作ったときの実測時間の2つです。この2つを割れば、月に回せる本数が幅で出ます。予定に落とすときは低い側を基準にし、足りないときは工程ごとに自分でしか書けない部分と手放せる部分の線を引きます。
目次
- 月に何本という目標に根拠がないとき──続けられる分量は予定表を眺めても決まらない
- 先に「月に何本」を決める立て方が、うまくいきにくい2つの理由
- 手順1 自分の時間を数える
- 手順2 1本を最後まで通して作り、工程ごとに時間を計る
- 手順3 割って幅で持つ
- 【モデルケース解説】期日が重なる月を挟んで、回せる本数を幅で出す
- 回りきらない分の扱いと、始めた後に数え続けること
- まとめ──回せる分量は、期日が重なった月の時間と、1本の実測時間から幅で出せる
月に何本という目標に根拠がないとき──続けられる分量は予定表を眺めても決まらない
書けた月の感覚で組んだ予定は、忙しい月から先に落ちる
来月は期日が重なることが分かっている。今月は原稿に手を付けられたが、来月も同じようにできる気がしない。月に何本という目標を立ててはみたが、その数字の根拠が自分でも分からない。外に頼めば楽になるのは分かるが、自分がどこまでやれるのかが分からないので、どこから頼めばいいのかも決められない。
月ごとに使える時間の振れが大きい弁護士1〜3名の事務所では、記事の更新はここで止まりやすくなります。
決められるのは2つだけ
続けられるかどうかは、予定表を眺めても決まりません。意欲の問題として考えても決まりません。ただし、期日が重なった月に実際に原稿へ回せた時間と、1本を最後まで通して作ったときの実測時間なら、自分の予定表と自分の手元の記録から出せます。この2つがあれば、月に回せる分量は割り算で出ます。
前のページまでで、記事の設計とリライトの運用を扱いました。どちらも「続けられること」を前提にしています。このページでは、その前提そのものを自分の数字で置き直します。
このページは最初に答えを置き、そのあと手順の順に、自分の時間の数え方、1本を通して作って計る方法、月に回せる分量の出し方を示します。1本におよそ何時間、月におよそ何本という数字は示しません。示せる根拠を持っていないためです。
先に「月に何本」を決める立て方が、うまくいきにくい2つの理由
月ごとに残る時間の振れが大きい
期日が重なる月と、そうでない月とでは、事務作業に回せる時間がまるで違います。書けた月の感覚で予定を組むと、その予定は、いちばん時間の取れない月から先に落ちていきます。落ちたときに、時間が足りなかったのか、進め方が合わなかったのかも分からないままになります。
1本にかかる時間が人によって違う
書く速さも、題材への慣れも、どこまで自分で確かめるかも、図や写真を入れるかどうかも違います。他の事務所の所要時間を借りてきて自分の予定に当てても、当たっているかどうかを確かめる手立てがありません。
手順は3つ
| 手順 | やること | 出るもの |
|---|---|---|
| 1 | 直近2〜3か月の予定表から、原稿へ回せた時間を、期日が重なった月と重ならなかった月に分けて拾う | 月に使える時間。低い側と高い側の2通り |
| 2 | 1本を最後まで通して作り、工程ごとに時間を計る | 1本の実測時間と、工程ごとの内訳 |
| 3 | 月に回せる時間を、1本の実測時間で割る | 月に回せる本数(幅で) |
出る数字は一点にはなりません。低い側と高い側の両方で計算して、幅で持ってください。
ここで出るのは「自分が月に何本回せるか」であって、「月に何本出せば相談が増えるか」ではありません。出した本数で相談がどれだけ増えるかを示す数字を手元に持っていないので、必要な本数の側から分量を決める組み立てはしません。
手順1 自分の時間を数える
使うのは、直近2〜3か月の予定表と、期日簿です。そのうち、期日が重なった月と、重ならなかった月を1つずつ選びます。この2つを分けて出すのは、後で使う幅を自分で決めるためです。
予定表の空白を、そのまま使える時間として数えない
移動、書面の起案、打ち合わせの準備、事務所の事務は、予定表の欄に入っていないことがあります。空白の合計を使える時間として数えると、実際には無い時間で計算することになります。数えるのは、その月に実際に原稿や下調べに使えた時間です。使えたかどうかがはっきりしない時間帯は、使えなかった側に寄せてください。
まとまって取れた時間と、細切れの時間を分けて数える
どちらも同じ「時間」ですが、進む工程が同じとは限りません。まとまった時間でないと進まない工程があるのか、細切れでも進むのかは、人によっても題材によっても違うので、こちらからは決められません。手順2で1本を計るときに、工程ごとにどちらだったかを一緒に記録すると、あとで自分の答えが出ます。
見込みの時間を入れない
早起きすれば取れるはずの時間、期日が空けば回せるはずの時間は、まだ実際には無い時間です。ここに入れると、あとの計算がすべて見込みの上に乗ります。
自分以外に頼めた作業の時間は、分けて数える
事務局や他の弁護士に回せた作業(資料の用意、写真の手配、サイトへの載せ替えなど)があれば、別の行に書きます。自分の時間と混ぜてしまうと、あとの割り算で、自分の手元に残る時間がどれだけかが読み取れなくなります。
| 項目 | 期日が重なった月 | 重ならなかった月 |
|---|---|---|
| 原稿へ回せた時間(月あたり) | ||
| うち、まとまって取れた時間 | ||
| うち、細切れだった時間 | ||
| 自分以外に頼めた作業の時間 |
埋まったら、期日が重なった月を低い側、重ならなかった月を高い側に置きます。3か月分を出したなら、いちばん少なかった月を低い側に、いちばん多かった月を高い側に置く形でもかまいません。
手順2 1本を最後まで通して作り、工程ごとに時間を計る
作る前に用意しておくもの
- 工程ごとの時間を書き留める記録。 紙でも表計算でもかまいません。始めた時刻と終えた時刻を書ければ十分です
- 題材の候補。 すでに相談で繰り返し聞かれていることから選ぶと、下調べの時間が読みやすくなります
- サイトに載せる手順と、載せる権限。 載せるところまで自分でやるのか、誰かに頼むのかで、実測時間の中身が変わります
- 内容を確かめるときに開く手元の資料。 どこまで確かめるかは自分の基準で決めてください。基準は途中で変えないでください
- 載せた後に直す時間の枠。 公開して終わりにすると、その分の時間が実測から抜けます
進め方
① 工程を先に紙に書き出します。 題材を決める、読者と問いを決める、構成を作る、下書き、自分の実務に照らして確かめる、図表や写真、サイトに載せる、載せた後に直す。この分け方はそのまま使ってもかまいませんし、自分の進め方に合わせて足してもかまいません。
② 途中で止めずに、1本を公開まで通します。 途中で止めた1本を計っても、通したときの時間は出ません。
③ 工程ごとに、かかった時間と、まとまった時間が要ったかどうかを記録します。 中断した場合は、中断した回数も書き留めておくと、細切れの時間で進む工程かどうかが見えます。
④ 2本目も同じ形で計ります。 1本目は、進め方を決めながら作ることになるので、慣れの分だけ長く出ることがあります。2本目との差が大きければ、長いほうと短いほうを両方残して、手順3の幅に使ってください。
| 工程 | かかった時間 | まとまった時間が要ったか | 中断した回数 |
|---|---|---|---|
| 題材を決める | |||
| 読者と問いを決める | |||
| 構成を作る | |||
| 下書き | |||
| 自分の実務に照らして確かめる | |||
| 図表・写真 | |||
| サイトに載せる | |||
| 載せた後に直す | |||
| 合計 |
この表は、あとで外に頼む範囲を決めるときにもそのまま使えます。工程ごとの時間が手元にあれば、漠然と作業全体を頼むのではなく、どの工程を渡すかという形で話せます。
手順3 割って幅で持つ
計算は1段です。月に原稿へ回せる時間 ÷ 1本の実測時間 = 月に回せる本数。この割り算は、その月に残る時間で何本を最後まで通せるか、という意味です。
| 計算 | 低い側 | 高い側 |
|---|---|---|
| 月に原稿へ回せる時間 | 期日が重なった月の時間 | 期日が重ならなかった月の時間 |
| 1本の実測時間 | 実測の長いほう | 実測の短いほう |
| 月に回せる本数 |
予定に落とすときは、低い側を基準にします。高い側は時間の取れた月の数字なので、それで予定を組めば、期日が重なった月には届かない予定になります。届かない月が続けば、予定そのものを見なくなります。
低い側が1本に届かない場合
実測時間の側を短く見積もり直して数字を合わせにいかないでください。見積もりを短くすれば計算上の本数は増えますが、増えたのは前提の置き方だけで、使える時間は何も増えていません。
低い側が1本に届かない月には、更新そのものを止めるのではなく、次のような最小の形を置いておくと、手が止まりきりません。
- すでにあるページの、古くなった記載を直す
- 相談で繰り返し聞かれたことを、短い追記として既存のページに足す
- 次の月に書く題材を決めて、構成だけ作っておく
止めた月をつくると、次に再開するときに、進め方を思い出すところからやり直しになります。
いつやるかは、月ではなく曜日と時間帯で決める
「今月中に1本」という置き方だと、期日の準備が入った週から順に後ろへ動いて、気づいたときには月末に残っていることになりがちです。手順1で拾った時間は、もともと曜日と時間帯の形で出ているので、そのままの形で予定表に置けます。置いた枠が期日で潰れた月は、潰れた回数も書き留めておいてください。
本数を合わせるために、1本あたりの時間を削らない
時間を削ると、削られやすいのは自分の実務に照らして確かめる工程です。ここは、外の誰かに代われない工程でもあります。削るのであれば、確かめる工程ではなく、範囲のほう(1本で扱う題材を狭くする)を先に見てください。
【モデルケース解説】期日が重なる月を挟んで、回せる本数を幅で出す
事務所の設定
想定読者にあたる事務所を1つ立てて、時間を数えるところから外注の線引きまでを通しで見ていきます。地方都市で相続と離婚を扱う、弁護士2名・事務員1名の事務所です。記事は書いたほうがよいと分かっているものの、月に何本という目標に根拠がないまま止まっていました。
STEP1: 直近3か月の予定表から、2つの月を選んだ
期日が重なった月と、重ならなかった月を1つずつ選びました。予定表の空白をそのまま数えず、実際に原稿や下調べに使えた時間だけを拾いました。移動と書面の起案が空白の欄に入っていたためです。
拾ってみると、期日が重なった月と重ならなかった月とで、原稿へ回せた時間に大きな差がありました。この差が、そのまま低い側と高い側になりました。事務員に回せた作業(写真の手配、サイトへの載せ替え)は別の行に分けて書きました。
STEP2: 1本を最後まで通して作り、工程ごとに計った
題材は、相談で繰り返し聞かれてきたことから選びました。工程を先に紙に書き出し、途中で止めずに公開まで通しました。
| 工程 | まとまった時間が要ったか | この事務所で分かったこと |
|---|---|---|
| 題材を決める | 要らない | 相談の記録から選べたので短かった |
| 構成を作る | 要る | 細切れでは進まなかった |
| 下書き | 要る | 中断した回数が多いほど、後で読み直す時間が増えた |
| 自分の実務に照らして確かめる | 要らない | 細切れでも進んだが、削れない工程だと分かった |
| サイトに載せる | 要らない | 事務員に回せる工程だった |
| 載せた後に直す | 要らない | 計り忘れやすい。枠を先に取っておいた |
2本目も同じ形で計ったところ、1本目より短く済みました。進め方を決めながら作った分が、1本目には乗っていたためです。長いほうと短いほうを両方残しました。
STEP3: 割って、幅で持った
低い側は「期日が重なった月の時間 ÷ 実測の長いほう」、高い側は「重ならなかった月の時間 ÷ 実測の短いほう」で計算しました。「月に何本」の一点ではなく、「月に何本から何本のあいだ」という幅になりました。
予定に落とすときは低い側を基準にし、高い側は時間が取れた月の上振れとして扱うことにしました。
STEP4: 工程ごとに、自分でしか書けない部分と手放せる部分の線を引いた
低い側では足りないと感じたため、工程表を1行ずつ見て線を引きました。
| 区分 | この事務所で入った工程 |
|---|---|
| 自分でしか書けない部分 | 自分の実務に照らして確かめる/事務所としての取扱いの範囲を決める |
| 手放せる部分 | 題材の洗い出し/構成の下ごしらえ/文章の整え/図表の作成/サイトへの載せ替え/載せた後の記録 |
線を引いたあと、手放す工程の実測時間を合計して、手順3の割り算をやり直しました。自分の手元に残る時間で何本まで通せるかが、頼んだ後の分量になります。
回りきらない分の扱いと、始めた後に数え続けること
線は工程ごとに引ける
低い側の本数では足りないと感じた場合、次に決めるのは「どこまで自分でやるか」です。作業全体を自分で抱えるか、全部を外に出すかの二択にはなりません。
自分でしか書けない部分は、実務に照らした判断、事務所としての取扱いの範囲、依頼者に普段どう説明しているか、といった中身の部分です。手放せる部分は、題材の洗い出し、構成の下ごしらえ、文章の整え、図表の作成、サイトへの載せ替え、載せた後の記録といった、中身の判断を伴わない工程です。
どちらに入るかは、手順2で書き出した工程表を1行ずつ見て決めます。判断は分野や事務所の方針によって違うので、こちらから一律には決められません。
外に頼むと決める前に、確かめておく項目
- 原稿の下書きを誰が書くか
- 自分が内容を確かめる工程に、どれだけの時間が要ると見ておくか
- サイトに載せる作業を誰がやるか
- 題材を誰が決めるか。決める前にどこまで相談するか
- 途中で止まったときに、誰が動かすか
- 自分の事務所の取扱いの範囲を、どういう形で渡すか
始めた後に数え続ける3つ
- 毎回の実測時間。 1本ごとに、工程別の時間を残します。慣れてくれば時間は動きます
- 月ごとに実際に出せた本数。 予定した本数ではなく、出せた本数です。低い側の見積もりが合っていたかどうかは、この記録でしか確かめられません
- 期日が重なった月に落ちた分。 何本落ちたか、どの工程で止まったか。止まった工程が毎回同じなら、そこが最初に手放す候補になります
まとめ──回せる分量は、期日が重なった月の時間と、1本の実測時間から幅で出せる
このページで学んだこと──2つの数字と、3つの手順
毎月続けられる分量は、意欲では決まりません。期日が重なった月に原稿へ回せた時間と、1本を最後まで通して作ったときの実測時間。この2つを割れば、月に回せる本数が幅で出ます。使う数字はどちらも、自分の予定表と、自分で計った記録の中にあります。
予定に落とすときは低い側を基準にして、時間の取れた月の分は上振れとして扱ってください。低い側が1本に届かなくても、実測時間を短く見積もり直さないでください。最小の形を置いて、止めた月をつくらないほうが、記録は残ります。
低い側では足りないと感じたなら、作業全体を抱えるか手放すかではなく、工程表を1行ずつ見て、自分でしか書けない部分と手放せる部分の線を引いてください。削るのは、確かめる工程ではなく、1本で扱う題材の範囲のほうです。
次のステップ──記事から相談への導線へ
次のページ「記事→相談の導線設計」では、読まれている記事から相談につなげる形を扱います。本数をいくら積んでも、連絡先に届かなければ相談にはなりません。
ここで作った工程表は、記事を書き続けるあいだずっと使います。2本目、3本目と計り続ければ、見込みで置いた時間が実測に置き換わります。そして、期日が重なった月に何本落ちて、どの工程で止まったかを1行残してください。次に見積もりを直すときも、外に頼む範囲を決めるときも、その記録が材料になります。
✓ 実践チェックリスト
- □ 直近2〜3か月から、期日が重なった月と重ならなかった月を1つずつ選んだ
- □ 予定表の空白ではなく、実際に原稿や下調べに使えた時間を数えた
- □ まとまって取れた時間と細切れの時間を分けて数えた
- □ 見込みの時間(早起きすれば・期日が空けば)を入れていない
- □ 自分以外に頼めた作業の時間を、別の行に分けた
- □ 1本を途中で止めずに公開まで通し、工程ごとに時間を計った
- □ 2本目も同じ形で計り、長いほうと短いほうを両方残した
- □ 低い側と高い側の2通りで割り、幅で持った
- □ 予定の基準を低い側に置いた(実測時間を短く見積もり直していない)
- □ 工程表を1行ずつ見て、自分でしか書けない部分と手放せる部分の線を引いた