弁護士がウェブ集客の運用代行を月額の中身と成果の出どころで判断する方法
結論・要点
月額と増える相談の件数は、そのままでは並べられません。並べられるのは、月額に含まれる作業の中身と、提案書に並ぶ数字が誰の・何を・いつ数えたものかの2つです。この2つを揃えると、提案は「頼む」「範囲と測り方を書き足してもらってから頼む」「いまは決めない」の3つに分かれます。いまは決めないことは、断ることとは別の選択です。
目次
- 運用代行の提案に返事ができないとき──月額と増える相談の件数は、そのままでは並べられない
- そのままでは並べられない2つの理由と、こちらから示さないもの
- 月額に何が含まれているかを揃える──12の項目に並べ直す
- 提案書に並ぶ成果の数字を読む──出どころを聞く2問
- 【モデルケース解説】提案書1通を12項目に並べ直して、判定を出す
- 3つのどれに当たるかを決める
- まとめ──運用代行は、月額の中身と成果の数字の出どころが揃えば、自分の記録で判断できる
運用代行の提案に返事ができないとき──月額と増える相談の件数は、そのままでは並べられない
断る理由も、頼む理由も言葉にできない
ウェブ集客の運用代行の提案を受けたが、その月額で毎月何が行われるのかが読み取れない。「相談が増えます」と説明されたが、何件増えるのかは書かれていない。提案書に他社の成功事例の数字が並んでいるが、自分の事務所に当てはまる数字なのかが分からない。自分でやれば外に払う費用はかからないが、その時間が取れるのかも分からない。断る理由も、頼む理由も、どちらも言葉にできないまま返事を保留している。
ウェブ集客の作業を外に出すかどうかで止まるとき、止まる場所はおおむねここです。
並べられるのは、月額の中身と、数字の出どころ
前のページで、制作費を相談1件あたりの採算で見る方法を扱いました。制作費は一度きりの費用ですが、運用代行は毎月続く費用です。続く費用は、続けるか止めるかを毎回判断することになるので、判断の形を先に決めておく値打ちがあります。
月額と「増える相談の件数」を、そのまま並べて比べることはできません。ただし、その月額で毎月どの作業が行われるのかと、提案書に並ぶ数字が何を数えたものなのかは、提案書と、一度の質問で確かめられます。この2つが揃うかどうかで、判断は3つに分かれます。
このページは最初にその3つの分かれ方を置き、そのあと、月額に含まれる作業を同じ項目に並べ直す方法、提案書に並ぶ成果の数字の読み方を示し、最後に、自分の提案が3つのどれに当たるかの決め方と、頼むと決めたあとに数え始めることを置きます。
そのままでは並べられない2つの理由と、こちらから示さないもの
月額は作業の対価で、その作業の範囲が会社ごとに違う
同じ「月額」という言葉でも、記事を作るところまでなのか、既存のページの書き換えも入るのか、広告の運用まで見るのか、地図やSNSの更新まで含むのか。範囲が違えば額が違うのは当然で、額の大小そのものからは何も読み取れません。どちらの会社が優れているかという話ではなく、比べる前の形が揃っていない、という話です。
期待成果は、これから起きることの見込み
見込みは、それが何を根拠にした数字なのかが示されて初めて、判断の材料になります。根拠が示されないまま置かれた数字は、大きくても小さくても扱いようがありません。
こちらから示さないもの
運用を外注すると相談が何件増えるかは、こちらからは示しません。運用を外に出した事務所で相談がどれだけ増えたかを示す数字を手元に持っていないからです。月額がいくらなら妥当かという相場も示しません。同じ月額に含まれる作業が会社ごとに違う以上、額だけを集めた平均は比べる対象になりません。このページに出てくる表の金額の欄はすべて空欄で、提案書から自分で書き写す形にしてあります。
提案の形と、扱い方
| 提案書の形 | 揃っていないもの | どう扱うか |
|---|---|---|
| 月額が一式で、作業の内訳がない | 作業の内訳 | 内訳が出るまで決めない |
| 作業の一覧はあるが、成果をどの数字で測るかが書かれていない | 成果の測り方 | 測る数字と報告の形を書き足してもらってから決める |
| 成果の数字は並んでいるが、誰の事務所の・何を数えた数字かが書かれていない | 数字の出どころ | 出どころを聞く。答えが出てこないなら、その数字は判断の材料から外す |
| 広告の運用が含まれるが、広告費が月額に含まれるのか別なのか読み取れない | 費用の切り分け | 切り分けを確かめてから、月額の欄を埋め直す |
| 作業の内訳も、測る数字も、報告の形も書かれている | — | 自分が使う時間と並べて、頼むかどうかを決められる |
3つの判定は、次の意味です。頼むは、上の表の最後の行に当たる状態です。書き足してもらってから頼むは、提案そのものは扱えるが、範囲か測り方のどちらかがまだ文字になっていない状態です。いまは決めないは、揃えようとしても項目が埋まらない状態と、こちらの側にまだ比べる前の記録がない状態を指します。断るという選択肢と、いまは決めないという選択肢は別のものです。
月額に何が含まれているかを揃える──12の項目に並べ直す
提案書は、たいていこちらの見たい項目立てにはなっていません。会社ごとにまとめ方も、項目の粒度も違います。そこで、こちらで項目を決めて、提案書の記載をその項目に割り振り直します。埋まらない項目が出たら、それが確かめる対象です。
| 項目 | 提案書に書かれていること | 自分でやる場合 | どこに書いてあったか |
|---|---|---|---|
| 記事・ページを月に何本作るか | |||
| 原稿を誰が書くか(下書きまでか、公開まで含むか) | |||
| 弁護士が内容を確認する時間(月あたり) | |||
| 既存ページの書き換えが含まれるか | |||
| 写真・図の用意が含まれるか | |||
| 広告を運用する場合、広告費は月額に含まれるのか別か | |||
| Googleビジネスプロフィールの更新が含まれるか | |||
| SNSの投稿が含まれるか | |||
| 問い合わせが来たあとの返信を誰が書くか | |||
| レポートに載る数字と、報告の頻度 | |||
| 最低契約期間と、解約の予告期間 | |||
| 解約したあとに、作った記事とページが残るか |
右端の列は、○か×ではなく、提案書のどこに書いてあったかで埋めてください。書いてあった項目にはその箇所を、口頭で聞いた項目には「口頭」と、どこにも見当たらない項目には空欄のままにします。口頭と空欄が付いた項目が、そのまま確かめる対象の一覧になります。
弁護士が内容を確認する時間は、外注しても消えない
事務所の名前で出す原稿である以上、目を通すのは事務所の側です。ここを空欄のままにすると、外注が実際より軽く見えます。月に何本の原稿が上がってくるのか、1本あたりどれくらい見る必要がありそうかを、提案書の本数から自分で見当を付けて、月あたりの時間として書き込んでください。
広告費と運用の手数料は、切り分けを確かめる
広告費が月額に含まれる提案と、広告費が別で手数料だけの提案では、同じ月額でも意味がまったく違います。切り分けが読み取れないうちは、月額の欄を埋めないでおくほうが安全です。
やめる側の条件も、判断に効く
最低契約期間と解約の予告期間、そして解約したあとに作った記事とページが残るかは、金額の欄ではありませんが、続けるかどうかを次に決めるときの材料です。やめる側の条件が分かっていなければ、比べる材料が片方しかない状態になります。
「自分でやる場合」の列は、費用ではなく時間で埋める
月に何本書けるか、その1本にどれくらいかかるか、写真や図をどうするか、更新をいつやるか。自分でやる場合に費用が乗るのは、サーバーやドメインの費用、素材や道具の費用といったところで、あとは時間です。
この列が埋まると、頼むか自力でやるかが、額の話ではなく「その時間を出せるか」の話に変わります。どちらが有利かは、こちらからは言えません。事務所によって、出せる時間も、月に取れるまとまった時間の形も違うからです。
表が埋まったら、提案書の額を金額の欄に書き写します。このとき、額の大小ではなく、埋まらなかった項目がいくつ残ったかを見てください。
提案書に並ぶ成果の数字を読む──出どころを聞く2問
提案書には、これまでの実績として数字が並んでいることがあります。その数字を、自分の判断に使える数字と、使えない数字に分けます。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| 誰の事務所の数字か | 弁護士の事務所か、別の業種か。分野は自分と同じか。商圏の規模は近いか |
| 何を数えた数字か | 表示された回数/クリックされた回数/サイトを見た人の数/問い合わせの件数/相談として受けた件数/受任した件数のどれか |
| いつからいつまでの数字か | 開始前の値が書かれているか。後の値だけでは、増えたのかどうかが読み取れない |
| 何件の事例をまとめた数字か | 1つの事務所か、複数の平均か、複数のうち最も良かったものか |
| その期間に同時に何をしていたか | 広告を出していたか、別の会社にも頼んでいたか、紹介が増える出来事があったか |
| 誰が数えたか | 代行会社の管理画面の数字か、事務所が相談の記録で数えた数字か |
| 自分の事務所で同じ数え方ができるか | できない数字は、頼んだあとに自分の結果と突き合わせられない |
確かめ方は2問で足りる
数字を1つ選んで、「これは何を数えたものですか」「開始前の値はいくつでしたか」と口頭で聞き、返ってきた答えを提案書に書き足してもらいます。この2問で、上の観点の多くは埋まります。
答えが出てこないこともあります。それは、その会社が不誠実だという話ではありません。担当した事務所の側の記録に触れられないことも、守秘の関係で出せないこともあります。ただ、書けない数字は判断の材料にならない、というだけのことです。材料から外して、残りの項目で判断します。
これから何を測るかは、こちらから決められる
提案書に測る数字が書かれていなければ、自分から出してください。選ぶ基準はひとつで、自分の事務所で数えられる数字にすることです。相談の記録に一言残せば数えられるもの、たとえば経路別の新規相談の件数は、事務所の側で数えられます。検索順位のように、事務所の記録の側には残らない数字は、報告として受け取るものであって、判断の中心には置きません。
ここではっきり書いておきます。測る数字を決めても、始める前に「何件増えるか」は出ません。前もって決められるのは、何を数えるか、いつ数えるか、誰が数えるかの3つだけです。この3つを開始前に決めておくと、あとで続けるかどうかを判断するときに、代行会社の説明ではなく、自分の事務所の記録で決められます。決めておかなければ、そのときも同じ場所で止まります。
【モデルケース解説】提案書1通を12項目に並べ直して、判定を出す
事務所の設定と、届いた提案
想定読者にあたる事務所を1つ立てて、提案書を受け取ってから判定を出すところまでを通しで見ていきます。地方都市で相続と離婚を扱う、弁護士2名・事務員1名の事務所です。サイトはあり、相談の入り口は紹介とポータルサイトが中心です。
届いた提案は、月額で記事の作成と検索順位の改善を請け負うもので、他の事務所の成功事例が数字で並んでいました。
STEP1: 12項目に割り振り直した
| 項目 | どこに書いてあったか | 分かったこと |
|---|---|---|
| 記事・ページを月に何本作るか | 提案書に記載あり | 本数は書かれていた |
| 原稿を誰が書くか | 口頭 | 下書きまでか公開まで含むかが書面にない |
| 弁護士が内容を確認する時間 | 空欄 | 提案書には項目自体がなかった |
| 広告費は月額に含まれるか | — | 広告は今回の範囲外だった |
| レポートに載る数字と報告の頻度 | 提案書に記載あり | 「検索順位」のみ。問い合わせから先が入っていない |
| 最低契約期間・解約の予告期間 | 空欄 | 書面にない |
| 解約後に記事とページが残るか | 空欄 | 書面にない |
割り振ってみると、口頭と空欄が4項目残りました。この4つが、そのまま確かめる対象の一覧になりました。
STEP2: 弁護士が確認する時間を、自分で見当を付けて書いた
提案書に項目がなかったため、本数から自分で見当を付けて、月あたりの時間として書き込みました。ここを空欄のままにすると、外注が実際より軽く見えるためです。書き込んでみると、「自分でやる場合」の列との差が、費用の差ではなく時間の差として見えるようになりました。
STEP3: 成果の数字の出どころを2問で聞いた
並んでいた数字を1つ選び、「これは何を数えたものですか」「開始前の値はいくつでしたか」と聞きました。返ってきたのは、サイトを見た人の数であり、開始前の値は担当した事務所の側の記録なので出せないという答えでした。
不誠実だという話ではありません。ただ、開始前の値が分からない以上、増えたのかどうかは読み取れないため、この数字は判断の材料から外しました。
STEP4: 3つのどれに当たるかを決めた
この事務所では、判定は「いまは決めない」になりました。理由は2つです。
- 経路別の新規相談の件数を、まだ数えていなかった。 比べる前の値がないので、頼んでも、続けるかどうかを後から自分で確かめられません
- レポートに載る数字が「順位」だけだった。 問い合わせから先が報告に入っていないため、測り方を書き足してもらう必要がありました
断ったのではありません。測り方の書き足しを依頼し、そのあいだに経路別の相談件数を数え始めることにしました。次に返事をするときには、判断の材料が2つとも揃っている状態になります。
3つのどれに当たるかを決める
「頼む」に当たる場合
- 作業の項目が一通り埋まり、埋まらない項目が残っていない
- 弁護士が内容を確認する時間の欄が、月あたりの時間で埋まっている
- 何を測るか、いつ報告するか、誰が数えるかが文字になっている
- 最低契約期間・解約の予告期間・解約後に成果物が残るかが書かれている
- 「自分でやる場合」の列と並べたうえで、その時間を出すより頼むほうがよいと自分で判断できている
「範囲と測り方を書き足してもらってから頼む」に当たる場合
- 作業の内訳はあるが、成果を何で測るかが書かれていない
- 広告費と手数料の切り分けが読み取れない
- 原稿の下書きの範囲が曖昧で、弁護士の確認時間が見積もれない
- レポートに載る数字が「順位」だけで、問い合わせから先が報告に入っていない
いずれも、提案そのものを断る理由にはなりません。書き足してもらってから、同じ表で埋め直します。書き足してもらえるかどうか自体も、判断の材料になります。
「いまは決めない」に当たる場合
- 経路別の新規相談の件数を、まだ数えていない。 比べる前の値がないので、頼んでも後から自分で確かめられません
- 成果の数字の出どころが出てこない。 材料から外した結果、残った項目だけでは判断できない状態です
- 月額が一式のままで、内訳が出てこない。 内訳のない額は、次に見直すときにも比べられません
- 事務所の分野や体制が変わる予定がある。 受ける相談の中身が変われば、揃えた項目自体が変わります
頼むと決めた場合も、開始の前から数え始める
- 経路別の新規相談の件数。 開始の前の数か月分がこの形で残っていれば、開始後の数字と並べられます
- サイト経由の相談の中身。 運用代行が作った記事から来ているのか、以前からあるページから来ているのかは、ここを残しておかないと分かりません
- サイト経由の相談から受任に至った割合。 相談が増えても、受任に至らない相談ばかりであれば、次に手を入れる場所は記事の本数ではありません
いつ判断し直すかを、契約の開始時に決めておいてください。最低契約期間があるなら、その期間が終わる前に、上の記録で判断できる状態になっているはずの時期があります。その時期を先に決めて、代行会社にも伝えておきます。決めておかないと、更新の連絡が来た日に、その場で判断することになります。
まとめ──運用代行は、月額の中身と成果の数字の出どころが揃えば、自分の記録で判断できる
このページで学んだこと──揃える2つと、3つの判定
月額と、増える相談の件数。この2つは、そのままでは並べられません。並べられるのは、月額に含まれる作業の中身と、提案書に並ぶ数字が誰の・何を・いつ数えたものかの2つです。この2つを揃えると、提案は「頼む」「範囲と測り方を書き足してもらってから頼む」「いまは決めない」の3つに分かれます。
作業を並べ直す表には、外に払う費用だけでなく、弁護士が内容を確認する時間と、自分でやる場合に要る時間まで乗せてください。ここが空いていると、外注が実際より軽く見えます。提案書の数字は、出どころを1回聞いて書き足してもらい、答えが出てこない数字は判断の材料から外してください。
揃わない項目が残るなら、いまは決めないでかまいません。断ることとは違います。待つあいだに経路別の相談件数を数え始めれば、次に返事をするときには材料が増えています。
次のステップ──サイトの中身を整える章へ
次のページからは、「集客できるサイトに整える」の章に入ります。最初のページ「近隣事務所とホームページを見比べる4つの項目」では、自分のサイトのどこに差が出ているかを、書いてあるものの有無で判定する方法を扱います。
このページで埋めた12項目の表は、頼むと決めた場合も、自分でやると決めた場合も残ります。次に別の会社から提案が来たときに、同じ項目に割り振り直せば、2社を同じ形で並べられます。
✓ 実践チェックリスト
- □ 提案書の記載を、こちらで決めた12の項目に割り振り直した
- □ 右端の列を○×ではなく「提案書のどこに書いてあったか」で埋めた
- □ 弁護士が内容を確認する時間を、本数から見当を付けて月あたりの時間で書いた
- □ 広告費と手数料の切り分けを確かめた(読み取れないうちは月額の欄を埋めていない)
- □ 最低契約期間・解約の予告期間・解約後に成果物が残るかを確かめた
- □ 「自分でやる場合」の列を、費用ではなく時間で埋めた
- □ 成果の数字について「何を数えたものか」「開始前の値はいくつか」を聞いた
- □ 答えが出てこない数字を、判断の材料から外した
- □ 3つの判定のどれに当たるかを決めた(「いまは決めない」を断ることと混同していない)
- □ 経路別の新規相談の件数を、開始の前から数え始めた