ポータル掲載効果の測り方──CPA・受任率・ROIで継続か撤退かを判断する
結論・要点
ポータルに掲載し続けるべきかどうかは、感覚ではなく数字で判断できます。月ごとのCPA(相談1件あたりの獲得コスト)・受任率・ROI(投資対効果)を記録し、自社サイト経由の数字と比較すれば、「まだポータルが必要な段階か」「縮小してよい段階か」が見えてきます。本記事では計測の具体的な方法と、判断フローを解説します。
目次
- ポータル効果を測る3つの指標──CPA・受任率・ROI
- 自社サイトのROIとポータルのROIを同じ基準で比較する
- 「継続・縮小・撤退」の判断フロー──数字で決める3つの質問
- 【モデルケース解説】12ヶ月の計測データから判断を下す
- 計測を習慣化する──月末15分のルーティン
ポータル効果を測る3つの指標──CPA・受任率・ROI
ポータルサイトへの掲載が「効いているか」を感覚で判断すると、費用対効果の低いプランを払い続けるリスクがあります。CPA・受任率・ROIという3つの指標を月次で記録することで、数字に基づいた判断ができるようになります。
CPA(相談1件あたりの獲得コスト)の計算──「ポータル費用と自社コスト比較」の記事の復習と月次運用
CPA(Cost Per Acquisition)とは、相談1件を獲得するためにかかったコストのことです。ポータルのCPAは「月額掲載費 ÷ 月間ポータル経由の相談件数」で計算します。たとえば月額5万円のポータルで月2件の相談が来た場合、CPA=50,000円 ÷ 2件=25,000円です。
「ポータル費用と自社コスト比較」の記事で学んだこの計算を、毎月末に記録する習慣にすることが重要です。月ごとの相談件数は季節や経済状況で変動するため、単月の数字ではなく3ヶ月の移動平均で見ると傾向が掴みやすくなります。
受任率──相談から受任に至る割合を分野別に記録する
受任率とは、ポータル経由の相談件数のうち、実際に依頼(受任)に至った割合です。計算式は「受任件数 ÷ ポータル経由相談件数 × 100(%)」です。分野によって受任率は大きく異なるため、分野別に記録することがポイントです。
たとえば離婚分野は複数事務所を比較する相談者が多いため受任率が低い傾向があります。一方、相続分野は「相続手続きを急いで依頼したい」という意図で相談に来る方が多く、受任率が高い傾向があります。受任率が低い分野はポータルのCPAが実態より低く見えることがあるため、相談件数だけでなく受任件数まで追跡する必要があります。
ROI(投資対効果)──ポータル費用に対して得られた売上の比率
ROI(Return on Investment)は「ポータルへの投資が利益を生んでいるか」を示す指標です。計算式は「(ポータル経由の売上 − ポータル費用) ÷ ポータル費用 × 100(%)」です。ROIがプラスであればポータルは利益を生んでいますが、マイナスであれば費用対効果が合っていない状態です。
ROIを計算するには、ポータル経由で受任した案件の報酬を記録する必要があります。分野によって報酬額の差が大きいため(例:債務整理は1件あたり数万円、相続は数十〜数百万円)、件数だけでなく売上金額で評価することが大切です。
| 指標 | 計算式 | 計算例 | 判断基準 |
|---|---|---|---|
| CPA(相談1件あたりの獲得コスト) | 月額掲載費 ÷ 月間ポータル経由相談件数 | 50,000円 ÷ 2件 = 25,000円 | 自社サイトのCPAより低いか比較する |
| 受任率 | 受任件数 ÷ ポータル経由相談件数 × 100 | 1件 ÷ 2件 × 100 = 50% | 分野別の平均から大きく外れていないか確認する |
| ROI(投資対効果) | (ポータル経由売上 − ポータル費用) ÷ ポータル費用 × 100 | (150,000円 − 50,000円) ÷ 50,000円 × 100 = 200% | プラスなら継続検討・マイナスなら撤退を検討 |
自社サイトのROIとポータルのROIを同じ基準で比較する
ポータルと自社サイトの効果を比較するときに陥りがちな誤りは、「ポータルは相談件数で評価し、自社サイトは費用感覚で評価する」という異なるものさしを使うことです。CPAとROIという同じ基準で並べることで、初めて正確な比較ができます。
自社サイトのCPA計算──記事制作コストを月間相談件数で割る
自社サイトのCPAは「記事制作にかかったコスト ÷ 自社サイト経由の月間相談件数」で計算します。記事制作コストは、弁護士自身が書く場合は「時間 × 時給換算」、外注する場合は「外注費」として計上します。月に5時間執筆・時給換算6,000円なら月3万円、外注費が月3万円ならそのままの数字です。
注意すべきは、自社サイトの場合は「今月の記事制作コスト」ではなく「これまでの記事制作コストの累計」を分母にする点です。記事は公開後も継続して検索流入をもたらすため、累計コストを累計相談件数で割ることが実態に即したCPA計算になります。
自社サイトの複利効果──記事は蓄積するためCPAが年々下がる
自社サイトとポータルの最大の違いは、コストと成果の関係にあります。ポータルは「毎月同じ費用を払い続けないと相談が来ない」構造ですが、自社サイトの記事は一度公開すれば資産として蓄積され、追加コストなしに翌月以降も相談を呼び込み続けます。
記事制作コストを月3万円(年間36万円)とした場合、年を追うごとに記事数と相談件数が増加し、CPAは下がり続けます。1年目は記事12本で月1件の相談(CPA=年間36万円 ÷ 12件=30,000円)でも、2年目には記事24本・月3件(CPA=年間36万円 ÷ 36件=10,000円)、3年目には記事36本・月5件(CPA=年間36万円 ÷ 60件=6,000円)まで下がります。この「記事が増えるほどCPAが下がる」現象が、自社サイトの資産性の正体です。
ROI比較表──ポータル vs 自社サイトを並べて見る
ポータルは毎年同じCPA・同じROIを繰り返しますが、自社サイトは年を重ねるごとにROIが改善します。以下の比較表は、同じ事務所がポータルと自社サイトを同じ基準で評価した場合のモデルです。記事制作コスト月3万円・1案件平均報酬15万円の前提で計算しています(いずれも本記事のモデルケース用の試算値)。
| 年次 | 媒体 | 費用累計 | 相談件数累計 | CPA(円) | 売上累計(目安) | ROI(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | ポータル | 60万円 | 24件 | 25,000円 | 180万円(受任率50%・12件×15万円) | 200% |
| 1年目 | 自社サイト | 36万円 | 12件 | 30,000円 | 90万円(受任率50%・6件×15万円) | 150% |
| 2年目 | ポータル | 120万円 | 48件 | 25,000円 | 360万円 | 200% |
| 2年目 | 自社サイト | 72万円 | 48件 | 10,000円(累計) | 360万円 | 400% |
| 3年目 | ポータル | 180万円 | 72件 | 25,000円 | 540万円 | 200% |
| 3年目 | 自社サイト | 108万円 | 108件 | 6,000円(累計) | 810万円 | 650% |
1年目はポータルの方がCPAが低く見えますが、2年目以降は自社サイトのCPAが逆転します。ポータルのROIが横ばいのまま推移するのに対し、自社サイトのROIは年々改善します。この比較を「同じ基準(CPA・ROI)」で見ることが、予算配分の判断の出発点です。
「継続・縮小・撤退」の判断フロー──数字で決める3つの質問
ポータルを「継続するか・縮小するか・撤退するか」の判断を感覚で行うと、赤字のプランを惰性で続けるリスクと、まだ必要な段階で撤退するリスクの両方があります。3つの質問に順番に答えることで、感覚ではなく数字から判断できます。この3問は四半期ごと(3ヶ月に1回)に実施し、判断を更新します。
Q1: ポータルのROIはプラスか?
最初の質問はシンプルです。直近3ヶ月のポータルROIを計算し、プラスかマイナスかを確認します。ROIがマイナス(ポータル費用 > ポータル経由の売上)であれば、掲載を続けることで赤字が拡大しているため、撤退を検討します。
ただし「受任に時間がかかる案件(相続・顧問契約など)」は計測期間によってROIが歪む可能性があります。直近3ヶ月ではなく6ヶ月のデータで判断する方が精度が上がります。
Q2: 自社サイトのCPAはポータルのCPAを下回ったか?
Q1でROIがプラスだった場合、次の質問は「自社サイトとポータル、どちらの方が効率的か」です。自社サイトの累計CPA(累計制作コスト ÷ 累計相談件数)と、ポータルの月次CPA(月額掲載費 ÷ 月間相談件数)を比較します。
自社サイトCPA > ポータルCPAであれば、まだポータルの方が相談獲得効率が高い状態です。この段階での撤退は相談件数の減少につながるため、ポータルを継続しながら自社サイトへの投資を続けます。自社サイトCPA < ポータルCPAになって初めて、次の質問に進みます。
Q3: 自社サイト経由の相談件数は目標値に達したか?
Q2をクリアした(自社サイトの方が効率的になった)場合でも、絶対数が足りていなければポータルはまだ補完的な役割を担っています。自社サイト経由の月間相談件数が「月の目標相談件数の50%以上」を満たしているかを確認します。
50%未満であれば「縮小」(プランのダウングレードや掲載本数を絞る)が適切です。50%以上を満たしていれば、自社サイトが主軸として機能しているため「撤退」を検討できます。
| Q1 ROIはプラスか | Q2 自社CPA < ポータルCPAか | Q3 自社相談が目標の50%以上か | 判断 | 推奨アクション |
|---|---|---|---|---|
| NO | ─ | ─ | 撤退 | ポータルが赤字。解約または最小プランへ即時変更 |
| YES | NO | ─ | 継続 | ポータルがまだ効率的。自社サイト強化を並行して続ける |
| YES | YES | NO | 縮小 | 自社サイトが効率的だが絶対数不足。プランをダウングレードし3ヶ月後に再判定 |
| YES | YES | YES | 撤退可 | 自社サイトが主軸として機能。ポータル解約を検討 |
【モデルケース解説】12ヶ月の計測データから判断を下す
ここでは、「ポータルの費用構造・CPA計算」「向き不向き判断」「依存リスクと移行計画」「ポータルと自社サイトの併用設計」の各記事と同じ事務所を例に、12ヶ月の実際の計測データから判断フローを適用するプロセスを解説します。
事務所の設定と12ヶ月間の計測データ
この事務所の設定は次のとおりです。弁護士1名・地方都市(人口約30万人)・取扱分野は離婚・相続・交通事故。ポータルに月5万円で掲載開始(1〜5ヶ月目)。6ヶ月目に費用対効果を見直し、月3万円のプランに縮小。自社サイトは1ヶ月目から毎月2本のペースで記事を追加し、12ヶ月で計24本を公開しました。
記事制作コストは外注費を月3万円(年間36万円)として計上しています。12ヶ月の計測データは以下のとおりです。
| 月 | ポータル費用 | ポータル相談(件) | ポータルCPA(円) | 自社相談(件) | 自社CPA・累計(円) | ポータルROI(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 50,000円 | 2件 | 25,000 | 0件 | ─ | 200%(受任1件・15万円) |
| 2ヶ月目 | 50,000円 | 2件 | 25,000 | 0件 | ─ | 200% |
| 3ヶ月目 | 50,000円 | 1件 | 50,000 | 0件 | ─ | 100%(受任1件・15万円) |
| 4ヶ月目 | 50,000円 | 2件 | 25,000 | 0件 | ─ | 200% |
| 5ヶ月目 | 50,000円 | 2件 | 25,000 | 1件 | 150,000(累計15万÷1件) | 200% |
| 6ヶ月目(縮小) | 30,000円 | 1件 | 30,000 | 1件 | 90,000(累計18万÷2件) | 200% |
| 7ヶ月目 | 30,000円 | 2件 | 15,000 | 1件 | 63,000(累計21万÷3件) | 400% |
| 8ヶ月目 | 30,000円 | 1件 | 30,000 | 2件 | 40,000(累計24万÷6件) | 200% |
| 9ヶ月目 | 30,000円 | 2件 | 15,000 | 2件 | 30,000(累計27万÷9件) | 400% |
| 10ヶ月目 | 30,000円 | 1件 | 30,000 | 3件 | 20,000(累計30万÷15件) | 200% |
| 11ヶ月目 | 30,000円 | 2件 | 15,000 | 3件 | 15,000(累計33万÷22件) | 400% |
| 12ヶ月目 | 30,000円 | 1件 | 30,000 | 4件 | 7,500(累計36万÷48件) | 200% |
STEP1: 月次CPA・受任率・ROIの推移を確認する
12ヶ月のデータを振り返ると、ポータルのCPAは掲載プランを縮小した6ヶ月目以降、月によって15,000〜30,000円の間で変動しています。受任率はどの月も概ね50%(2件相談 = 1件受任)で安定しており、ポータルROIは最低でも200%を維持しています。
一方、自社サイトのCPAは月を追うごとに急速に下がっています。5ヶ月目に初めて相談が来た時点ではCPA 150,000円でしたが、記事の蓄積とともに相談件数が増加し、12ヶ月目には累計CPA 7,500円まで改善しました。
STEP2: 自社サイトとのROI比較を行う
12ヶ月目時点での比較です。ポータルCPA=30,000円(12ヶ月目単月)に対し、自社サイトの累計CPA=7,500円。自社サイトのCPAがポータルのCPAを大きく下回っており、Q2はYESになります。ROIで見ると、ポータルROIが200%(横ばい)に対し、自社サイトは年間売上目安360万円(受任24件×15万円)÷制作コスト36万円=ROI 900%以上と、大幅に上回っています。
自社サイトの「記事が蓄積されるほどCPAが下がる」という複利効果が、数字として明確に表れています。この段階で、自社サイトへの投資効率がポータルを明確に上回っていることが確認できます。
STEP3: 判断フローで「継続・縮小・撤退」を決定する
12ヶ月目の数字を判断フローの3問に当てはめます。Q1「ポータルROIはプラスか」→ YES(200%)。Q2「自社CPA < ポータルCPA」→ YES(7,500 < 30,000)。Q3「自社相談が目標月5件の50%(2.5件)以上か」→ YES(月4件 > 2.5件)、しかし月4件は目標5件の80%であり、完全に主軸化するにはもう一歩です。
| 質問 | 回答 | 根拠データ |
|---|---|---|
| Q1: ポータルROIはプラスか | YES | 12ヶ月目ROI=200%(黒字) |
| Q2: 自社CPA < ポータルCPAか | YES | 自社CPA 7,500円 < ポータルCPA 30,000円 |
| Q3: 自社相談が目標の50%以上か | YES(ただし80%) | 月4件 ÷ 目標月5件 = 80%(閾値の50%は超えるが満足できる水準ではない) |
| 最終判断 | 縮小継続 | 現行の月3万円プランを維持。3ヶ月後に再判定(目標月5件を達成していれば撤退を検討) |
Q1・Q2・Q3のすべてがYESですが、Q3の達成度が80%にとどまるため「縮小」(現行の最小プランを維持)が適切な判断です。3ヶ月後の再判定で月5件に達していれば、撤退を本格的に検討します。
自社サイトのCPAをさらに下げるには、効率的に記事を増やすことが鍵です。キジラクの検索データによると、弁護士が狙える分野の月間検索数は離婚だけで348万回以上に上ります(キジラク調べ・抽出日: 2026-07-13)。こうした需要に向けて計画的に記事を積み上げることで、CPAの改善が加速します。キジラクを使えば、検索データに基づく記事計画で制作時間を短縮できます。14日間の無料トライアルで試せます。
計測を習慣化する──月末15分のルーティン
計測の仕組みを作っても、続けなければ意味がありません。月末に15分だけ時間を確保し、決まった項目を更新するルーティンを設定することで、データが自然と蓄積されます。
月末に更新する計測シートのテンプレート
「ポータルの費用構造・CPA計算」の記事で紹介した記録テンプレートに、受任件数・売上を追記することでCPAとROIが自動計算されます。スプレッドシートにCPA・ROIの計算式を事前に設定しておくことで、月末に数字を入力するだけで判断に必要な全指標が出そろいます。
| 項目 | 記入例 | 算出方法 |
|---|---|---|
| ポータル月額費用 | 30,000円 | 請求書から転記 |
| ポータル経由相談件数 | 2件 | 相談記録から集計 |
| ポータル経由受任件数 | 1件 | 相談記録から集計 |
| ポータル経由売上 | 150,000円 | 受任案件の報酬から集計 |
| ポータルCPA | 15,000円 | 月額費用 ÷ 相談件数(自動計算) |
| ポータルROI | 400% | (売上−費用)÷ 費用 × 100(自動計算) |
| 自社サイト経由相談件数 | 4件 | 問い合わせフォーム・電話記録から集計 |
| 記事制作コスト(月) | 30,000円 | 外注費または時間×時給換算 |
| 自社サイトCPA(累計) | 7,500円 | 累計制作コスト ÷ 累計相談件数(自動計算) |
四半期ごとの判断フロー実施リマインダー
月次の計測は「データを積む」作業ですが、「判断を下す」のは四半期ごとです。3ヶ月分のデータが揃った時点で、Q1・Q2・Q3の3問を回します。カレンダーアプリに「ポータル判断フロー実施」のリマインダーを設定し、毎年の契約更新時期の1ヶ月前に必ず実施するようにしておくと、更新・縮小・解約の判断が自然なタイミングでできます。ポータルの契約更新は通常年1回のため、更新前に必ず判断フローの結果を確認することが、無駄な費用を払い続けないための習慣になります。
✓ 実践チェックリスト
- □ ポータル効果の3指標(CPA・受任率・ROI)の計算方法を理解した
- □ 自社サイトのCPAを記事制作コストから算出した
- □ ポータルのROIと自社サイトのROIを同じ基準で比較した
- □ 判断フロー(3つの質問)で現在の「継続・縮小・撤退」を判定した
- □ 月末の計測ルーティンを設定した
- □ 四半期ごとの判断フロー実施リマインダーをカレンダーに入れた
ポータルの効果計測と判断方法を学びました。ここまでで「ポータルと賢く付き合う」シリーズは完了です。次は「SNS・AIと自社サイトの関係」の記事で、SNSや生成AI・AI検索といった新しいチャネルと自社サイトの補完関係を学び、時代の変化に対応する集客の考え方を身につけます。