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弁護士の広告計測とROAS──費用対効果を数値で判断する方法

結論・要点

広告の効果は「感覚」ではなく数値で判断します。弁護士の広告では電話発信とフォーム送信をコンバージョン(成果)として計測し、1件の相談にかかった費用(CPA)と広告費に対する売上(ROAS)を計算することで、広告の継続・停止・改善を根拠に基づいて判断できます。本記事ではコンバージョン設定からROAS計算、改善判断までの手順を解説します。

目次

  1. なぜ計測が必要か──広告費を「感覚」で判断するリスク
  2. コンバージョン計測の設定方法──電話とフォームを計測する
  3. ROASの計算方法──広告費に対する効果を数値で把握する
  4. 【モデルケース解説】交通事故に注力する事務所が広告効果を計測・判断する
  5. 計測でよくある失敗と注意点

なぜ計測が必要か──広告費を「感覚」で判断するリスク

「広告を出しているけれど、問い合わせが増えたのかどうか分からない」──このように感じている弁護士は少なくありません。広告費を毎月支払っているのに、その効果を数値で把握していなければ、続けるべきか止めるべきかの判断ができません。感覚に頼った運用は、無駄な支出を見過ごすリスクがあります。

計測なしの広告運用で起きる典型的な失敗

計測をしていない広告運用では、次のような失敗が起こります。問い合わせの電話が鳴っても、それが広告経由なのか、紹介経由なのか、ポータルサイト経由なのかが分かりません。結果として「今月は問い合わせが多かった気がする」「先月よりは良くなった気がする」という感覚だけで広告費の判断をすることになります。

たとえば月5万円の広告費をかけていて、問い合わせが3件あったとします。しかし、そのうち広告経由が何件かを把握していなければ「広告に5万円かける価値があるのか」を判断できません。実際には3件とも紹介経由で、広告からの問い合わせはゼロだった可能性もあります。計測なしの運用は、費用対効果の判断そのものを不可能にします。

弁護士の広告で計測すべき指標(クリック数・CV数・CPA・ROAS)

広告の効果を数値で判断するには、4つの指標を計測する必要があります。弁護士の広告におけるコンバージョン(CV=広告の成果として計測する行動)は、「電話発信」と「問い合わせフォーム送信」の2つです。この2つを計測したうえで、以下の指標を確認します。

指標 意味 計算式 弁護士にとっての判断材料
クリック数 広告が何回クリックされたか Google広告の管理画面で自動計測 広告がきちんと表示され、関心を持たれているかの確認
CV数(コンバージョン数) 広告経由で電話・フォーム送信が何件あったか 電話発信数 + フォーム送信数 広告から実際に何件の問い合わせが発生したかの把握
CPA(顧客獲得単価) 1件の問い合わせにかかった広告費 広告費 ÷ CV数 1件の相談を得るためにいくらかかっているかの確認
ROAS(広告費用対効果) 広告費に対してどれだけの売上が得られたか 売上 ÷ 広告費 × 100(%) 広告費以上の売上が出ているかの判断基準

この4つの指標を把握していれば、「広告を続けるべきか」「予算を増やすべきか」「改善が必要か」を根拠に基づいて判断できます。逆に、これらを計測していなければ、広告運用は「感覚」で続けるしかありません。

コンバージョン計測の設定方法──電話とフォームを計測する

計測すべき指標が分かったら、次はGoogle広告でコンバージョンを計測できるように設定します。設定を完了させてから広告を出稿することで、最初から計測データを蓄積できます。

Google広告のコンバージョン設定の基本(何を計測するか決める)

Google広告の管理画面には「コンバージョン」という設定項目があります。ここで「どの行動を成果(コンバージョン)として計測するか」を定義します。弁護士の場合、成果として計測すべき行動は次の2つです。

  • 電話発信: 広告を見たユーザーがスマートフォンから電話をかけた
  • フォーム送信: 広告を見たユーザーが問い合わせフォームを送信した

この2つのコンバージョンアクションをGoogle広告の管理画面で作成します。作成の手順は、管理画面の「目標」→「コンバージョン」→「新しいコンバージョンアクション」から進めます。

電話発信の計測──スマートフォンからの電話タップを追跡する

電話発信のコンバージョンは2種類あります。1つは、広告に表示される電話番号を直接タップして発信するケースです。これはGoogle広告の「電話番号表示オプション」を設定することで自動的に計測されます。

もう1つは、広告をクリックしてLP(広告のクリック先ページ)に移動した後、ページ上の電話番号をタップして発信するケースです。こちらはGoogleタグ(計測用のコード)をサイトに設置し、電話番号のクリックをコンバージョンとして追跡する設定が必要です。弁護士への問い合わせは電話が多いため、この設定は必ず行ってください。

フォーム送信の計測──問い合わせフォームの完了を追跡する

フォーム送信の計測は、送信完了後に表示される「サンクスページ(送信完了ページ)」を利用します。ユーザーがフォームを送信すると、サンクスページに遷移します。このサンクスページへの到達をコンバージョンとして設定することで、フォーム送信の件数を正確に計測できます。

設定手順は、Googleタグをサイトに設置し、サンクスページのURLを「コンバージョン到達ページ」として登録します。サンクスページのURLが通常のページと異なることを確認してください。たとえば「/contact/thanks/」のように専用のURLを用意しておくと、計測の精度が上がります。

コンバージョン計測で注意すべき点

コンバージョン計測の設定は、必ず広告出稿の前に完了させてください。広告を先に出してしまうと、計測設定が完了するまでの期間のデータが取れず、正確な効果検証ができなくなります。以下のチェックリストで設定漏れがないか確認しましょう。

コンバージョン種類 設定方法 確認ポイント
広告からの直接電話 電話番号表示オプションを有効化 広告プレビューで電話番号が表示されるか
LP上の電話タップ Googleタグ設置+電話番号クリックのイベント設定 テスト発信でコンバージョンが記録されるか
フォーム送信 Googleタグ設置+サンクスページをCV到達地点に設定 テスト送信でサンクスページ到達が記録されるか

なお、GA4(Googleアナリティクス 4)との連携による詳細な計測方法は、「アクセス解析と計測」の記事で学びます。本記事ではまず、Google広告の管理画面内での基本的なコンバージョン設定を完了させることが目標です。

ROASの計算方法──広告費に対する効果を数値で把握する

コンバージョン計測の設定ができたら、次は計測データを使って広告の費用対効果を計算します。ここではROASとCPAの計算方法を、弁護士の事業構造に合わせて解説します。

ROASの計算式と弁護士にとっての意味

ROAS(Return On Ad Spend=広告費用対効果)は、広告費に対してどれだけの売上が得られたかを示す指標です。計算式は次のとおりです。

ROAS = 売上 ÷ 広告費 × 100(%)

弁護士の場合、売上は「相談→受任→報酬」のプロセスで発生します。広告から直接売上が発生するわけではなく、問い合わせ(相談)を経て受任に至り、報酬を受け取る流れです。そのため、ROASの計算には「受任率」と「報酬単価」の2つの要素を組み込む必要があります。

たとえば、広告費50,000円で2件の相談が来て、受任率50%で1件を受任し、報酬が300,000円だった場合、ROAS = 300,000 ÷ 50,000 × 100 = 600%です。広告費の6倍の売上が得られていることになります。

CPAの計算──1件の相談にいくらかかっているか

CPA(Cost Per Acquisition=顧客獲得単価)は、1件の問い合わせ(コンバージョン)を得るためにかかった広告費です。計算式は次のとおりです。

CPA = 広告費 ÷ CV数

月の広告費が50,000円でCV数が2件の場合、CPA = 50,000 ÷ 2 = 25,000円です。1件の相談を得るために25,000円かかっていることを意味します。この数値が高すぎるかどうかは、受任率と報酬単価によって変わります。

弁護士のROAS判断基準──受任率と報酬単価から逆算する

CPAが適正かどうかを判断するには、受任率と報酬単価から「CPAの上限」を逆算します。考え方は次のとおりです。

項目 計算式 数値例 意味
平均報酬単価 ── 300,000円 1件の受任で得られる報酬
受任率 ── 50% 相談のうち受任に至る割合
1件受任に必要な相談数 1 ÷ 受任率 2件 2件相談すれば1件受任できる計算
CPA上限 報酬 ÷ 必要相談数 150,000円 1件の相談に最大150,000円まで広告費をかけられる
実際のCPA 広告費 ÷ CV数 25,000円 CPA上限の150,000円を大きく下回っており、十分に採算が取れている
ROAS 売上 ÷ 広告費 × 100 600% 広告費の6倍の売上──継続する価値がある

このように、受任率と報酬単価からCPAの上限を算出し、実際のCPAがそれを下回っていれば広告は採算が取れていると判断できます。広告で狙うキーワードの検索データを確認して判断する際には、キジラクのキーワードデータも参考になります(キジラク調べ・抽出日: 2026-07-11)。

【モデルケース解説】交通事故に注力する事務所が広告効果を計測・判断する

ここまでの内容を、具体的な事務所のモデルケースに当てはめて実践します。計測データの確認からROASの計算、判断、改善アクションまでの一連の流れを追います。

事務所の設定と広告運用の状況

この事務所は、弁護士2名体制で人口30万人規模の地方都市に所在しています。交通事故分野に注力しており、リスティング広告を月50,000円の予算で1ヶ月間運用した段階です。広告では「地域名 交通事故 弁護士」「地域名 交通事故 慰謝料」などのキーワードを設定し、「リスティング広告の仕組み」の記事で学んだ品質スコアの改善と、「ランディングページとCVR」の記事で学んだLPの設計を事前に実施しています。

STEP1: 1ヶ月間の計測データを確認する

1ヶ月間の広告運用で、Google広告の管理画面から次のデータが得られました。

  • クリック数: 100回
  • コンバージョン数: 3件(電話発信2件+フォーム送信1件)
  • 広告費: 50,000円
  • コンバージョン率(CVR): 3%(3件 ÷ 100回 × 100)

クリック数100回に対してCV3件という結果です。まずはこのデータを使って、CPAとROASを計算します。

STEP2: CPAとROASを計算する

計測データをもとに、CPAとROASを計算します。この事務所の交通事故案件の平均報酬単価は400,000円、受任率は50%です。

指標 数値 計算 判断
広告費 50,000円 ── 月の広告予算どおり
CV数 3件 電話2件 + フォーム1件 3件の相談が広告経由で発生
CPA 16,667円 50,000 ÷ 3 1件の相談に16,667円かかっている
受任見込み 1.5件 3件 × 50% 3件の相談から1.5件の受任が見込める
売上見込み 600,000円 1.5件 × 400,000円 1ヶ月あたりの広告経由売上
ROAS 1,200% 600,000 ÷ 50,000 × 100 広告費の12倍の売上

ROAS1,200%は、広告費50,000円に対して600,000円の売上が見込めることを意味します。CPAも16,667円と、CPA上限(報酬400,000円 ÷ 必要相談数2件 = 上限200,000円)を大きく下回っています。

STEP3: 結果に基づいて判断する(継続・改善・停止)

ROASの計算結果をもとに、広告の継続・改善・停止を判断します。判断の基準は次のとおりです。

ROAS水準 判断 アクション
500%以上 十分に黒字──継続 現状の運用を維持。予算増額も検討
100〜500% 採算ライン──改善の余地あり キーワードの見直し・LP改善でROAS向上を図る
100%未満 赤字──改善 or 停止 キーワード・LP・広告文を総点検。改善しても赤字なら停止

このモデルケースではROAS1,200%のため、「十分に黒字──継続」の判断になります。ただし、CVR(コンバージョン率)は3%です。「ランディングページとCVR」の記事で学んだLP改善を適用すれば、CVRの向上によってさらにROASを高められる可能性があります。

STEP4: 改善アクションを実行して再計測する

ROAS1,200%で十分に黒字ですが、CVR3%にはまだ改善の余地があります。次の1ヶ月では、以下の改善アクションを実行して再計測します。

  • LP上の電話番号の視認性を高める(ファーストビューに配置)
  • 問い合わせフォームの入力項目を必要最低限に絞る
  • 広告文と LP の内容の一貫性を再確認する

改善を実施したら、翌月の計測データで再度CPAとROASを計算し、改善の効果を数値で確認します。たとえばCVRが3%から5%に向上すれば、同じクリック数100回でもCV数が5件に増え、CPAは10,000円に下がります。このように「計測→計算→判断→改善→再計測」のサイクルを毎月繰り返すことが、広告運用の基本です。1回の計測で終わりではなく、継続的にデータを確認して判断を更新していくことが重要です。

計測でよくある失敗と注意点

広告の計測と効果判断の手順を理解しても、実際の運用では陥りやすい失敗があります。ここでは、小規模法律事務所で特に多い2つの失敗パターンを取り上げます。

コンバージョン設定をせずに広告を始める

最も多い失敗は、コンバージョン設定をしないまま広告を出稿してしまうことです。この状態では、Google広告の管理画面でクリック数やクリック単価は確認できますが、何件の問い合わせが広告経由で発生したかが分かりません。

「今月は問い合わせが来たけれど、広告からなのか、検索からなのか、紹介からなのか分からない」──こうなると、CPAもROASも計算できず、広告の費用対効果を判断する方法がなくなります。広告費を毎月支払い続けているのに、その効果を把握できないまま「なんとなく続けている」状態は、最も避けるべき失敗です。広告を出稿する前に、必ず電話発信とフォーム送信のコンバージョン設定を完了させてください。

短期間のデータで判断してしまう

もう1つの失敗は、短期間のデータで広告の継続・停止を判断してしまうことです。たとえば、広告を出して1週間でCVが1件もなかったからといって「この広告は効果がない」と判断するのは早計です。

広告の効果を正しく判断するには、最低でも1ヶ月間のデータが必要です。理想的にはCV数が30件以上蓄積された段階で判断することが望ましいとされています(Google広告 ヘルプ(Google))。しかし、小規模法律事務所では月のCV数が3〜5件程度にとどまることも珍しくありません。その場合は、2〜3ヶ月のデータを累計して傾向を判断してください。少ないデータで結論を急ぐと、本来は効果のある広告を誤って停止してしまうリスクがあります。

✓ 実践チェックリスト

  • □ 広告で計測すべき4指標(クリック数・CV数・CPA・ROAS)を理解した
  • □ コンバージョン設定(電話発信・フォーム送信)を完了した
  • □ CPAを計算し、1件の相談にかかる広告費を把握した
  • □ ROASを計算し、広告の費用対効果を数値で判断した
  • □ 結果に基づいて広告の継続・改善・停止を決めた

広告の計測と効果判断ができるようになりました。これでリスティング広告の基礎から運用・改善までのサイクルが完成です。次の「ポータルサイトの活用」の記事では、弁護士ドットコム等のポータルサイトとの付き合い方を学びます。

学んだ方法を、手間なく実践する。

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