弁護士のホームページ制作で制作費を着手金と受任件数に換算する考え方
制作費を「着手金の何件分か」に換算する考え方
ホームページの制作費を検討するとき、金額そのものの高い・安いだけを見ても判断材料としては不十分です。制作費は、事務所にとっては支出である一方、ホームページが相談を呼び込む仕組みとして機能するのであれば、投資としての側面もあります。
投資として捉える場合、制作費を自分の売上の単位に置き換えると比較しやすくなります。弁護士の場合、最も身近な単位は着手金です。「制作費は着手金の何件分か」と換算すると、金額の大きさが自分の業務と結びついた数字に変わります。
ただし、「着手金○件分だから○件受任すれば回収できる」とは単純には言えません。ホームページを公開してから検索で見つかるようになるまでには時間がかかりますし、見つかったとしても相談に至る割合は事務所ごとに異なります。したがって、回収期間は一点の数字ではなく、幅で持つのが現実的な考え方です。
換算の手順──着手金の確認・受任見込み・回収期間の3ステップ
ステップ1:着手金の水準を確認する
換算に使う着手金の金額を決めるところから始めます。事務所で複数の分野を扱っている場合、分野ごとに着手金の水準は異なります。どの分野を基準にするかで換算の結果が変わるため、主要な分野ごとに計算しておくと見通しが立ちやすくなります。
| 取扱分野 | 着手金の目安 | 制作費 ÷ 着手金 |
|---|---|---|
| (例:離婚) | (例:30万円) | (例:90万 ÷ 30万 = 3.0件) |
ここで考慮しておくとよい点が2つあります。
1つ目は、着手金だけで換算するか、報酬金も含めるかです。受任時に確実に入るのは着手金で、報酬金は事件の結果によります。着手金だけで換算したものを堅めの見積もり、報酬金を含めたものを楽観的な見積もりとして並べると、幅が見えます。
2つ目は、ホームページ経由の相談がどの分野に偏るかは、公開してみないと分からないことです。サイトの設計や記事の内容によって特定分野の相談が集まることがあるため、主要な分野それぞれで換算しておくのが無難です。
ステップ2:月あたりの受任見込みを幅で置く
次に、ホームページ経由で月に何件の受任が見込めるかを考えます。ここが最も難しい部分です。
ホームページを作った実績がない段階では、受任見込みの根拠がありません。制作会社が「月に○件の問い合わせが来ます」と説明する場合、その数字がどの規模の事務所の、どの分野の、どの地域の実績から出たものかを把握しておく必要があります。
見込みを立てるときの考え方として、次の点が整理の助けになります。
- 一点の数字(「月3件来る」など)ではなく、幅で持つほうが実態に近い見積もりになります
- 「新規相談の件数」と「受任に至る件数」は分けて考えます。相談が来ても受任に至らないことがあります
- ホームページ経由の相談者は、紹介で来た人と異なり事務所との接点がない状態で相談に来ます。紹介経由より受任率は低くなると想定しておくほうが堅い見積もりになります
ステップ3:回収期間を幅で計算する
ステップ1とステップ2の数字が揃ったら、回収期間の幅を出します。計算式は次のとおりです。
回収に必要な受任件数(ステップ1) ÷ 月あたりのHP経由受任(ステップ2) = 回収期間(月)
楽観・中間・堅めの3つのシナリオで計算すると、回収期間の幅が見えます。ただし、この計算には含まれていない要素があります。
- 公開までの期間:制作の発注から公開まで数週間から数か月かかります。その間は回収が始まりません
- 検索で見つかるまでの期間:公開直後に検索結果の上位に表示されるわけではありません
- 運用費:制作費とは別に、サーバー代・保守費・記事の追加費用などが発生します
これらを加味すると、計算上の回収期間よりも実際に投資が報われたと判断できるまでの期間は長くなります。
制作費だけでなく「作らなかった場合」も考える
回収期間の幅が出たとしても、その数字だけでは「作るべきかどうか」は決まりません。判断には、もう一つの見積もりが必要です。それは「ホームページを作らなかった場合に、同じ期間で相談の経路がどう変わるか」という視点です。
整理の軸として、次のような問いが考えられます。
- 今の相談経路(紹介、弁護士会の相談センター、ポータルサイトなど)は何か。月に何件の新規相談が来ているか
- その経路は今後も同じ件数を維持できるか
- 制作費と同じ金額を別の集客手段(ポータルサイトの掲載、リスティング広告など)に使った場合との比較
ホームページと他の集客手段では、費用の性質が異なります。この違いを把握しておくと、単純な金額比較を超えた判断ができます。
| 手段 | 費用の性質 | やめた場合 |
|---|---|---|
| ホームページ制作 | 初期投資+運用費 | サイトと記事は残る。更新が止まれば検索順位は徐々に下がるが、すぐには消えない |
| ポータルサイト掲載 | 月額の掲載料 | 掲載をやめれば流入は止まる |
| リスティング広告 | クリック課金 | 広告を止めれば流入は止まる |
| 紹介 | 金銭コストは小さい | 紹介元との関係が続く限り来るが、自分の意思で件数を増やしにくい |
制作費の総額を把握するための確認項目
着手金で割り算をする前提として、制作費の総額を正しく把握しておく必要があります。見積書に記載された制作費だけでなく、制作後に発生する費用を含めた総額で考えると、より実態に近い換算になります。
| 費用項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 制作費(初期) | 見積書の金額 | |
| 月額費用 × 12か月 | サーバー・保守・ドメイン等 | |
| 記事追加(年間) | 本数 × 単価、または月額プラン | |
| 1年目の総コスト | 上の合計 | |
| 2年目の追加コスト | 月額費用+記事追加(制作費は不要) |
1年目の総コストで換算すると、制作費だけの場合より回収に必要な受任件数は増えます。一方で、2年目以降は制作費が不要になるため、年あたりのコストは下がります。何年で判断するかによって見え方が変わるため、1年と2年の両方で計算しておくと比較しやすくなります。
まとめ
ホームページの制作費を投資として見積もる手順は、自分の着手金の水準で制作費を割り、着手金の何件分かを出す。次にHP経由の月間受任を幅で仮置きし、回収期間の幅を出す。そして、その幅を「ホームページを作らなかった場合」と並べる、という流れで整理できます。
一点の回収期間は出ません。出るのは、楽観から堅めまでの幅です。その幅に、公開までの期間、検索で見つかるまでの期間、制作後の運用費を加えると、実態に近い見積もりになります。制作費だけでなく、月額費用を含めた1年・2年の総コストで計算し直すと、制作費だけで換算した場合とは異なる数字が見えてきます。