この章で学ぶこと
この章では、弁護士のホームページで広告規制に触れやすい表現を4つのカテゴリに分けて整理します。それぞれの表現について、使える/使えない/条件付きの判断と、使えない場合の代わりの書き方を学びます。根拠は日本弁護士連合会の「弁護士等の業務広告に関する規程」です。
ホームページの文言も広告規制の対象になる
広告規程は、弁護士の「業務広告」に関するルールを定めています。ここでいう業務広告とは、不特定多数に向けて自己の業務を知らせる行為を指します。ホームページは不特定多数がアクセスできるため、広告規程の対象になります。
広告規程第3条は、広告に次の内容を含めてはならないと定めています(要約)。
- 事実に合致しない内容
- 誤導または誤認のおそれのある内容
- 誇大または過度な期待を抱かせる内容
- 他の弁護士と比較した内容
- 法令または日弁連・弁護士会の会則に違反する内容
「事実であれば何を書いてもよい」わけではありません。事実であっても、誤導のおそれがあるもの、過度な期待を抱かせるものは規制の対象になります。この点が、ホームページの文言を考えるうえで最も重要な前提です。
使えない表現と代わりの書き方 — 得意分野の表示
得意分野をどのように表現するかは、最も質問が多いテーマのひとつです。
| 表現 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 「○○専門」 | 使えない | 弁護士法上の専門分野認定制度が存在しないため、「専門」と表示すると客観的な裏付けのない表現になります。誤導のおそれがあると判断されます |
| 「○○に特化」 | 使えない | 「専門」と実質的に同じ意味であり、同様に誤導のおそれがあります |
| 「○○に強い弁護士」 | 条件付き | 客観的な根拠(取扱件数等)に基づかない場合、誇大表現に当たるおそれがあります |
| 「取扱分野: ○○」 | 使える | 自分が取り扱っている分野の事実の表示であり、規制に触れません |
| 「得意分野: ○○」 | 条件付き | 実際に多く取り扱っている分野であれば、事実の表示として使えます。ただし取扱実績がない分野に使うと虚偽表示になります |
| 「積極的に取り組んでいる分野: ○○」 | 使える | 自分の意思・姿勢の表示であり、客観的な能力の保証と受け取られにくいです |
代わりの書き方の例
「離婚専門の弁護士です」ではなく、「離婚事件を中心に取り扱っています。直近○年間で○件の離婚事件に対応しました」のように、事実に基づく情報として記載します。数字を使う場合は、実際の取扱件数であることが前提です。
使えない表現と代わりの書き方 — 実績・成果の表示
解決実績や成果をホームページに載せたい場合は多いでしょう。実績の表示自体は禁止されていませんが、書き方によっては規制に抵触します。
| 表現 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 「勝訴率○○%」 | 使えない | 過度な期待を抱かせる表現に当たります。個別の事案によって結果は異なるにもかかわらず、高い確率で勝てるという印象を与えます |
| 「慰謝料○○万円を獲得」(特定の事例) | 条件付き | 個別の事例として記載すること自体は可能ですが、「必ずこの結果が得られる」と受け取られる書き方をすると誤導になります。依頼者の同意と匿名化が前提です |
| 「必ず解決します」 | 使えない | 結果の保証に当たります。弁護士は結果を保証できないため、過度な期待を抱かせる表現になります |
| 「年間○件の相談実績」 | 使える | 事実の表示です。ただし実際の数字であることが必要です |
| 「弁護士歴○年」 | 使える | 経歴の事実の表示であり、規制に触れません |
代わりの書き方の例
「勝訴率90%」ではなく、「離婚事件を年間○件取り扱っています。個別の事情により結果は異なりますが、解決事例を以下に紹介します」のように、事実の表示と個別事例の紹介を分けて書きます。解決事例を載せる場合は、依頼者の同意を得たうえで匿名化してください。
使えない表現と代わりの書き方 — 費用・比較の表示
| 表現 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 「地域最安値」 | 使えない | 他の弁護士との比較表示に当たります(広告規程第3条)。また、客観的な根拠の確認が困難です |
| 「他事務所より安い」 | 使えない | 同上。比較広告の禁止に該当します |
| 「着手金○○万円〜」 | 使える | 自事務所の報酬基準の表示です。ただし「〜」を使う場合は、上限の目安や費用が変動する条件もあわせて記載しないと、誤認のおそれが生じます |
| 「初回相談無料」 | 使える | 事実であれば問題ありません。ただし「初回」の定義(30分まで、1時間まで等)を明記しないと誤認のおそれがあります |
| 「費用は○○万円から○○万円の範囲が目安です」 | 使える | 範囲を示し、事案によって異なる旨を付記すれば、誤認のおそれは低いです |
代わりの書き方の例
「地域最安値の料金設定です」ではなく、「当事務所の離婚事件の着手金は○○万円から○○万円です(事案の内容・争点の数により変動します)」のように、自事務所の報酬基準を具体的に示します。他事務所との比較は行いません。
使えない表現と代わりの書き方 — キャッチコピー
ホームページのトップに目を引くキャッチコピーを置きたいという要望は多いですが、キャッチコピーほど規制に触れやすい表現もありません。
| 表現 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 「○○(分野名)No.1」 | 使えない | 比較表示の禁止に該当します。「No.1」が何の指標で、どの範囲での比較かにかかわらず、使えません |
| 「○○の問題は全部お任せください」 | 使えない | 「全部」という表現が過度な期待を抱かせます。弁護士が対応できない問題(他士業の管轄など)もあります |
| 「あなたの味方になります」 | 条件付き | 姿勢の表現としては許容される余地がありますが、結果の保証と受け取られかねないため、前後の文脈に注意が必要です |
| 「○○で困ったらご相談ください」 | 使える | 相談を促す一般的な表現であり、規制に触れません |
| 「○年の経験を活かして対応します」 | 使える | 経歴の事実に基づく表現であり、結果の保証には当たりません |
代わりの書き方の例
「離婚問題No.1の法律事務所」ではなく、「離婚・男女問題に注力しています。まずはお気軽にご相談ください」のように、取り組んでいる分野を事実として示し、相談を促す表現にします。
判断に迷ったときの確認先
個別の表現について「これは使えるのか」と迷うことは、規程を読んだ後でも起こります。判断に迷ったときの確認先を整理しておきましょう。
1. 日弁連の広告規程と解説を読む
「弁護士等の業務広告に関する規程」の全文は、日弁連のサイトで公開されています。あわせて「業務広告に関する指針」も公開されており、具体的な表現例が示されています。まずはここを確認してください。
2. 所属弁護士会に問い合わせる
弁護士会によっては、広告に関する相談窓口を設けているところがあります。具体的な文言を見せて、規程に抵触するかどうかの意見を聞くことができます。新しい表現を使う前に確認しておくと安心です。
3. ホームページ制作会社に頼りすぎない
制作会社が提案するキャッチコピーや文言は、マーケティングの観点からは効果的でも、広告規程に照らすと問題がある場合があります。制作会社は弁護士の広告規制に詳しいとは限りません。最終的な文言の判断は、弁護士自身が行う必要があります。
まとめ — 表現ごとに使える/使えない/条件付きの3つに分けて判断する
ホームページの文言が広告規制に触れるかどうかは、表現ごとに次の3つに分けて判断します。
- 使える: 事実の表示(取扱分野、経歴、相談実績、費用の目安)
- 使えない: 比較表示(No.1、最安値)、結果の保証(必ず解決、勝訴率)、裏付けのない能力表示(○○専門)
- 条件付き: 事実の裏付けがあれば使えるもの(得意分野、解決事例)。条件を満たさなければ使えません
判断の基準は「事実に基づいているか」と「誤導・誇大にならないか」の2点に集約されます。書きたい表現が浮かんだら、この2点に照らして確認する習慣をつけておくと、規制を過度に恐れることなく、伝えたい情報を適切に伝えられるようになります。