この章で学ぶこと
ホームページに「取扱分野」を1ページにまとめている事務所は少なくありません。しかし、箇条書きの一覧だけでは、検索エンジンにも相談者にも「この事務所がどの分野をどう扱っているか」が伝わりません。この章では、取扱分野を分野ごとのページに分ける理由、各ページに載せる6つの項目、広告規制に沿った書き方、そして何分野から始めるかの判断基準を学びます。
取扱分野を1ページにまとめず分野別に分ける理由
取扱分野を1ページにまとめている場合、そのページは「この事務所が何を扱っているか」の一覧としては機能します。しかし、一覧としての機能だけでは、検索からの流入も相談への転換も生まれにくくなります。
検索エンジンの認識の問題
検索エンジンはページ単位で内容を評価します。1ページに「離婚」「相続」「交通事故」「債務整理」が箇条書きで並んでいると、そのページが何についてのページなのかを判定しにくくなります。結果として「離婚 弁護士 渋谷」のような検索に対して、このページは候補に入りにくくなります。
分野ごとに独立したページがあれば、各ページの内容がその分野に集中するため、検索エンジンが「このページは離婚について書かれている」と判定しやすくなります。
相談者の行動の問題
相談者は、自分の問題を扱っている事務所を探しています。箇条書きの一覧に「離婚」と書いてあっても、それだけでは「この事務所は離婚のうち何を扱うのか」「どういう進め方をするのか」「費用はどのくらいか」が分かりません。分からないまま問い合わせるよりも、もう少し情報のあるサイトへ移動するほうが自然な行動になります。
分野別ページがあれば、相談者はその分野に関する情報をまとめて確認できます。ページの内容が自分の状況と合っていれば、問い合わせの心理的なハードルは下がります。
分野別ページに載せる6つの項目
分野別ページに載せる項目は、相談者が「この事務所に相談してよいのか」を判断するために必要な情報から決まります。以下の6つが基本になります。
| 項目 | 内容 | 載せる理由 |
|---|---|---|
| 1. 対応する問題の範囲 | その分野で扱う具体的な問題を列挙する(例: 離婚なら「協議離婚」「調停離婚」「財産分与」「親権」「養育費」「面会交流」など) | 相談者が自分の問題がこの事務所の対応範囲に入るかを確認できる |
| 2. 対応の流れ | 相談から解決までの一般的な進め方を示す(例: 初回相談→方針決定→交渉→調停→訴訟) | 何が起きるか分からない状態が、相談をためらわせる最大の要因になる |
| 3. 費用の目安 | 着手金・報酬金の目安、または料金表へのリンク | 費用が分からないと問い合わせ自体を避ける相談者が多い |
| 4. よくある質問 | その分野で相談者から実際に聞かれることをQ&A形式で載せる | 相談者が抱えている疑問と事務所の対応が一致していることを示せる |
| 5. 解決事例 | 匿名化した実際の事例(依頼者の同意が前提) | 類似の問題を扱った実績があることが、相談の決め手になりやすい |
| 6. 相談方法と連絡先 | 電話番号・メールフォーム・初回相談の費用(無料か有料か)・対応時間 | ページを読んだ直後に行動できる導線がなければ離脱する |
6つすべてを最初から揃える必要はありません。まず1〜3を埋めてページを公開し、4〜6は情報が揃った段階で追加するという進め方でも問題ありません。空白のまま放置するよりも、ある情報から先に出すほうが意味があります。
「専門分野」と書かずに強みを伝える方法 — 広告規制に沿った書き方
分野別ページを作るとき、「離婚問題の専門家」「相続専門」のような表現を使いたくなることがあります。しかし、この書き方には広告規制上のリスクがあります。
規制の根拠
日弁連の「弁護士等の業務広告に関する規程」第3条第3号は、「弁護士等の業務についての専門分野の表示」を広告として扱い、規制の対象としています。また同指針では、弁護士には公的な専門認定制度がないため、「専門」と表示すると誤導のおそれがあると指摘されています。
代わりに使える表現
| 表現 | 考え方 |
|---|---|
| 「取扱分野」 | 事実として扱っている分野を示すものであり、広告規程上も「取扱業務の表示」として認められている |
| 「得意分野」 | 日弁連の指針において「取扱分野」との区別が説明されており、「得意分野」は主観的評価を含むとされるが、直ちに禁止されているわけではない。ただし、客観的な裏付けなく表示すると「誤導のおそれ」に該当する可能性がある |
| 「注力分野」「力を入れている分野」 | 事務所としてリソースを割いていることを示す表現であり、能力の優劣を断定するものではないため、比較的リスクが低い |
| 実績の客観的記載 | 「離婚事件の対応件数 年間○件」のように、事実を数字で示す。ただし、数字の正確性が求められる |
要点は、能力の優劣を断定する表現を避け、事実として確認できる情報で伝えるということに尽きます。「この分野に強い」と言いたい場合は、解決事例の数や対応の流れの具体性で示すほうが、規制上も安全で、相談者にとっても説得力があります。
何分野のページを作るかの判断基準
取扱分野が5つあるなら5ページ作るのが原則ですが、すべてを同時に作ろうとすると手が止まります。優先順位をつけるための判断基準は3つあります。
基準1: 受任実績があるかどうか
過去に受任した実績がある分野は、対応の流れや費用の目安を書きやすくなります。解決事例も載せられる可能性があります。実績がない分野のページは、内容が薄くなるため後回しにしてよいでしょう。
基準2: 問い合わせが来ている分野かどうか
すでに電話やメールで問い合わせが来ている分野は、需要があることが分かっています。その分野のページを充実させることで、問い合わせから受任への転換率を上げられる見込みがあります。
基準3: 競合の状況
「分野名 弁護士 地域名」で検索して、上位に表示されるサイトの分野別ページを確認します。競合のページが薄い場合は、しっかりした内容のページを作ればそれだけで差がつきます。逆に、すでに充実したページが並んでいる分野では、相応の内容を用意する必要があります。
まず1〜2分野のページを作り、その反応を見てから残りの分野に広げるという進め方が現実的です。すべてを一度に作ろうとすると、どのページも中途半端になるリスクがあります。
まとめ — 分野別ページは相談者の判断を助ける入口になる
取扱分野を1ページにまとめている状態は、事務所の側から見れば「載せてある」ことになります。しかし相談者の側から見ると、自分の問題を扱っているかどうかが判断できません。検索エンジンも同様で、どの分野について書かれたページなのかを判定できません。
分野ごとにページを分け、対応する問題の範囲・対応の流れ・費用の目安・よくある質問・解決事例・相談方法の6項目を載せることで、相談者が「この事務所に相談してよいのか」を判断できるようになります。広告規制の観点では「専門」という表現を避け、取扱分野・注力分野といった表現を使うか、実績の数字で示します。すべての分野を一度に作る必要はなく、受任実績のある分野から1〜2ページずつ始めるのが現実的な進め方です。