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問い合わせ導線の設計──保険会社対応の後に来る相談者を受け止める

結論・要点

交通事故・加害者側のサイトでは、導線を分ける軸は事故からの経過時間ではなく保険会社との時間差です。加害者は事故が起きるとまず保険会社へ連絡するため、弁護士を探す検索は「保険では対応できない」と分かった後段に来ます。実際、弁護士や依頼先を探す動機が支配的な検索は0.8%しかありません。必要なのは「今すぐお電話を」という圧力ではなく、保険会社に任せていて大丈夫かを確かめたい訪問者を受け止める入口と、逮捕や出頭要請という時間制約に応じる別線です。

目次

  1. 問い合わせ導線に必要な要素(What)
  2. なぜこの導線が必要か──データと総論で理解する(Why)
  3. サンプルサイトで見る実例(How it looks)
  4. 実践チェックリスト

交通事故・加害者側のサイトでは、導線を分ける軸は事故からの経過時間ではなく保険会社との時間差です。加害者は事故が起きるとまず保険会社へ連絡するため、弁護士を探す検索は「保険では対応できない」と分かった後段に来ます。実際、弁護士や依頼先を探す動機が支配的な検索は0.8%しかありません。必要なのは「今すぐお電話を」という圧力ではなく、保険会社に任せていて大丈夫かを確かめたい訪問者を受け止める入口と、逮捕や出頭要請という時間制約に応じる別線です。

問い合わせ導線に必要な要素(What)

加害者側のサイトに来る人は、たいてい既にどこかへ連絡を済ませています。保険会社です。ここが被害者側との決定的な違いであり、導線設計のすべての前提になります。

導線を分ける軸は「保険会社との時間差」

被害者側では、事故直後・治療中・示談交渉中という事故からの経過時間で導線を分けました(→交通事故(被害者側)専門サイトの問い合わせ導線設計)。同じ人が数か月かけて3つの時期を移動し、そのたびに困りごとが入れ替わるからです。

加害者側でも時間は流れますが、導線を決めるのは経過時間そのものではありません。保険会社が対応してくれる範囲の内側にいるか、その外側に出たかです。

事故が起きると、加害者はまず保険会社に事故報告をします。対人・対物の賠償には示談代行がつき、以後の相手方とのやり取りは保険会社が引き受けます。この状態にいる限り、弁護士に連絡する理由は発生しません。依頼者になりうる人が弁護士を探し始めるのは、次のどれかが起きた後です。

  • 保険が扱わない領域に入った: 刑事手続きと行政処分は、保険会社の業務範囲の外にある
  • 保険では足りないと分かった: 任意保険に加入していない、免責に当たる、補償の上限を超える損害が出ている
  • 保険会社の対応そのものに不安が出た: 提示された過失割合に納得できない、被害者から直接連絡が来た

つまり導線設計の出発点は「今すぐ電話を」ではなく、保険会社に任せている状態の訪問者に、任せたままでよい範囲とそうでない範囲の境界線を見せることです。境界線を知った訪問者だけが、自分は外側にいると気づいて連絡してきます。

3つの状況それぞれに必要な導線

訪問者の状況 訪問者の状態 検索キーワードの例 用意する導線 CTA文言の方向性
保険会社に任せている(最も厚い層) 任せていて大丈夫か確信が持てない。自分の処分・点数・今後の生活がどうなるか分からない 等級 自動車保険/物損事故 点数/当て逃げ/謝罪 菓子折り/交通事故 加害者 その後の人生 「保険で対応できる範囲・できない範囲」を並べた解説ページを入口にし、そこから相談へ接続する 「保険会社に任せてよい範囲を確認する」
保険の外側に出たと分かった 保険が使えない、上限を超える、示談代行がつかない、刑事や行政処分は対象外だと知った 示談書 テンプレート/示談書 の書き方/損害賠償/示談 交渉 弁護士 費用/交通 事故 加害 者 弁護士 依頼できる範囲と費用の目安を示したうえでのフォーム導線 「保険で足りない部分のご相談」
時間制約のある事態が起きた 警察からの出頭要請、取り調べ、物損から人身への切替、被害者からの直接請求に直面している 救護義務違反/当て逃げ 気づかなかった 後日/物損事故から人身に変更 され た加害者側/物損事故 警察 呼ばなかった 電話番号・受付時間・時間外の受付方法を別線で明示する 「出頭要請・取り調べのご連絡を受けた方へ」

3つ目を「別線」と書いたのには理由があります。この層は数としては多くありませんが、期限が動かせません。主線の導線(保険の範囲を説明してから相談へ運ぶ流れ)に混ぜ込むと、読む時間のない人が読まされることになります。ヘッダーやページ末に、他の説明とは独立した形で置きます。

段階的CTAの設計──保険の範囲を知る→自分の場合を確かめる→相談する

最も厚い「保険会社に任せている層」は、1回のクリックで相談まで運ぼうとせず3つのステップに分けます。

  • 第1段階(範囲を知る): 保険会社が対応する範囲と対象外の範囲を並べて示す。CTAは相談ではなく「関連する解説を読む」
  • 第2段階(自分の場合を確かめる): 事故の型(物損/人身/死亡/当て逃げ/無保険)ごとに、保険が届く範囲と自分で対応が要る範囲を対照させた一覧を置く。ここで「自分の場合は外側だった」という気づきが生まれる
  • 第3段階(相談する): その直後に「保険会社は刑事手続きと行政処分には関与しません。この部分にどう備えるかを初回相談でご説明します」と接続する

第2段階を挟むかどうかで、第3段階の説得力が変わります。境界線を見た訪問者は、相談する理由を自分で見つけます。逆に第2段階がないと、訪問者は「保険会社がやってくれるはず」という理解のままページを離れます。

責めない文言と、名乗らずに済む入口

加害者側にはもう一つ、被害者側にない障害があります。負い目です。弁護士に相談することは、この訪問者にとって「自分の非を認めたうえで、それでも自分を守るための行動」であり、後ろめたさを伴います。この心理を無視した導線は、どれだけ目立たせても押されません。

  • 訪問者を評価する語を使わない: 見出しやボタン文言で訪問者の行いに言及しない。「取り返しのつかないことをしてしまった方へ」ではなく「これから何が起きるのかを整理します」
  • 「加害者」をボタン文言に使わない: ページの分類名としては必要でも、押させる場所の文言には向きません。「事故を起こしてしまった方のご相談」のように、状況の説明に置き換えます
  • 名乗らずに済む入口を用意する: フォームの氏名欄を任意にし、電話でも名乗る前に概要だけ相談できることを書きます
  • 守秘を明記する: 相談したことが被害者・勤務先・家族に伝わらないことを書きます。弁護士には自明でも、訪問者には自明ではありません
  • 依頼が被害者軽視ではないと添える: 「弁護士に依頼することは、被害者の方への対応を放棄することではありません。むしろ、何をどこまで行うべきかを整理するための手続きです」の一文が、迷いを一つ外します

お問い合わせページに必要な構成要素

お問い合わせページは3つの状況すべての受け皿です。最低限、次の5点を用意します。

  • 冒頭の受け止めコピー: 「保険会社に対応をお任せしている段階でも、確認のためのご相談を受け付けています」「まだ何も決まっていない状態からご相談いただけます」
  • 複数の連絡手段: フォーム(24時間・氏名は任意)を先に、電話(受付時間つき・時間外の扱いを明記)を後に。オンライン面談の可否も添える
  • 保険との関係の説明: 保険会社が対応する範囲と、そこから外れる部分。あわせて、弁護士費用の保険特約が加害者側の対応に使えるとは限らないことを書きます
  • 最小限のフォーム項目: 必須は連絡先のみ。氏名も相談内容も任意。加えて「刑事手続きの進み具合」を任意の選択式で1つ置きます
  • 返信目安と情報の取り扱い: 「○営業日以内にご返信します」という具体的な日数と、誰が内容を確認するのか、プライバシーポリシーへのリンク

なぜこの導線が必要か──データと総論で理解する(Why)

「点数や処分の記事にはアクセスが集まるのに、問い合わせが1件も来ない」という状態は、加害者側では珍しくありません。原因は記事の質ではなく、訪問者がまだ保険会社の内側にいることにあります。

急いでいるのに弁護士は探していない──0.8%と21%のずれ

加害者側のキーワードを分析すると、弁護士や依頼先を探す動機が支配的な検索は12件・0.8%しかありません(キジラク調べ・2026年8月時点。月間検索数100以上のキーワードのうち、交通事故の分野語を含み検索の目的が判別できた1,572件を対象としています)。被害者側の0.1%よりは多いものの、絶対値としては極小です。

ところが、相談への近さで見ると様相が変わります。「今すぐ」に当たる検索が21%あり、被害者側の11%の約2倍です。残りは「相談を考え始めている」が60%、「相談はまだ先」が19%。検索の目的は、情報を集めたいが86%、比べて選びたいが5%、申し込み・相談の直前が9%です。

急いでいる検索は確かに存在するのに、その人たちは弁護士を探していない。何を探しているかというと、警察の手続き、保険の扱い、点数と処分です。逮捕・取り調べ・出頭要請という時間制約のある事態が加害者側では実際に起きるため「今すぐ」層が一定数いるのですが、その人が最初に打つ検索語は「弁護士」ではありません。

このずれが加害者側の導線設計の核心です。受け皿は、弁護士を紹介するページではなく、手続きと処分を説明するページ側に置く必要があります。「交通事故 加害者 弁護士」で上位を取る努力より、「物損事故から人身に変更された」を説明するページの末尾に相談への出口を作るほうが、実際の件数につながります。

関心は金額ではなく「自分はこれからどうなるのか」

被害者側では「いくら受け取れるか知りたい」が40.8%を占め、金額の目安コンテンツを問い合わせの前段に置くのが定石でした。加害者側にこの集中はありません。支払う金額を調べる検索は151件・9.6%にとどまります。

代わりに関心は分散します。「自分のケースについて知りたい」が389件・24.7%で最多、「進め方・手続きを知りたい」が332件・21.1%、「制度の意味を知りたい」が219件・13.9%、「リスク・処分の重さを知りたい」が190件・12.1%です。最後の項目は被害者側の4.6%の2.6倍にあたり、加害者側に固有の関心といえます。

上位のキーワードがそれを裏づけます。「死亡事故」(月間60,500)、「等級 自動車保険」(14,800)、「物損事故 点数」(8,100)、「当て逃げ」(8,100)、「謝罪 菓子折り」(6,600)、「交通事故 加害者 その後の人生」(2,600)。金額ではなく、自分の身に何が起きるのかと、何をすればよいのかを調べています。

したがって問い合わせの前段に置くべきは金額の早見表ではなく、帰結の見取り図です。事故の型ごとに、刑事手続き・行政処分・賠償という3つの系統で何が起きるかを並べた一覧を置きます。この一覧が、そのまま「保険の範囲の境界線」を示す役割も果たします。刑事と行政の2系統は保険会社が扱わないため、一覧を見た訪問者は自然に「この部分は誰がやるのか」という疑問に到達します。

処分と賠償を扱うときの表現の線引き

ただし、処分の見通しを扱うコンテンツには表現上の制約があります。弁護士の業務広告に関する規程では、誇大な表現や成果を保証する表現は認められません。加害者側では、訪問者が最も欲しがっている情報(処分がどうなるか)と、書いてはいけない表現(必ずこうなる)が近いところにあります。

争点 前段に置くコンテンツ 使える表現 避ける表現
刑事処分 事故の型ごとの手続きの流れと、判断で考慮される事情 「示談の成立は、処分の判断で考慮される事情の一つとされています」 「必ず不起訴になります」
行政処分(点数・免許) 違反ごとの点数と、処分区分が決まる仕組み 「点数と前歴の組み合わせで処分の区分が決まります」 「免許の取消しを回避できます」
賠償額 保険で賄える範囲と、自己負担が生じる場面 「補償の上限を超える部分はご本人の負担になります」 「請求額を必ず減らせます」
被害者への謝罪・示談 進め方と、保険会社との役割分担 「保険会社が代行する範囲と、ご本人が行う部分があります」 「示談すれば事件は終わります」

もう一つ、加害者側だけに生じる注意点があります。違反行為を助長する表現を書かないことです。たとえば「当て逃げ 時効」(1,900)や「物損事故 警察 呼ばなかった」(1,000)といった検索は実在しますが、これに対して逃げ切る方法や届出を避ける方法を説明する記事を作ってはいけません。書くべきは、その状態に今いる人が取れる正しい対応です。これは広告規程以前の問題であり、事務所の信頼を根本から損ないます。

負い目が問い合わせを止める──文言でハードルを下げる

「謝罪 菓子折り」(6,600)や「物損事故 お詫び」(880)は、加害者が自分の行いをどう埋め合わせるかを調べている検索です。「交通事故 加害者 その後の人生」(2,600)は、これからの生活への不安そのものです。こうした検索者に、被害者側で有効だった圧力型の文言を当てると逆効果になります。次のように置き換えます。

  • 「今すぐ弁護士にご相談ください」→「保険会社に対応をお任せしている段階でも、確認のためのご相談を受け付けています」
  • 「加害者の方はこちら」→「事故を起こしてしまった方のご相談」
  • 「初回相談無料」の一語だけ→「初回相談は無料です。ご相談の内容が被害者の方やお勤め先に伝わることはありません」
  • 「お問い合わせはこちら」→「保険で対応できるかどうかを確認する」

いずれも、訪問者を急かす言葉を「今の状態のままでも連絡してよい」という許可の言葉に置き換えています。相談を考え始めている段階が60%を占める以上、押し出す言葉より、迷いを外す言葉のほうが機能します。

CTAの文言・位置・数の原則(総論04)

総論04(集客できるサイトの条件)のCTA設計の原則を、加害者側に当てはめます。

  • 文言: 「お問い合わせ」より「保険で対応できる範囲を確認する」「出頭要請のご連絡を受けた方へ」。状況を名指しした文言のほうが、自分向けだと認識されます
  • 位置: ファーストビュー・本文中の区切り・ページ末尾の3か所が基本。処分や点数の解説記事では、保険の範囲の境界線を示した直後にも1つ置きます
  • : 複数置いてよいが行き先は絞ります。加害者側では、主線(フォーム)と別線(時間制約のある層向けの電話)の2系統に整理し、それ以上増やさないのが扱いやすい形です
連絡手段 即時性 心理的ハードル 加害者側への適性 主に受ける状況
フォーム 低〜中(返信まで時間) 低(名乗らずに書ける・24時間) 基本の受け皿。被害者側以上に比重が高い 保険会社に任せている段階・保険の外側に出た段階
電話 高(その場で会話) 高(負い目があるぶん、名乗ることへの抵抗が強い) 時間制約のある層には必須。ただし主線にはしない 出頭要請・取り調べ・逮捕の連絡を受けた直後
オンライン面談 中(予約が必要) 中(日程調整の手間) 事務所に出入りするところを見られたくない層に有効 保険の外側に出た段階

被害者側では電話を上位に置いて構いませんが、加害者側では順序が入れ替わります。名乗ることへの抵抗が強い層が主線だからです。電話を消すのではなく、フォームを先に見せて電話を別線として残す、という形にします。

地域とGBPを導線に組み込む(総論09)

総論09(地域集客の実践)のとおり、Googleビジネスプロフィールはサイト外の導線として機能します。加害者側では次の3点を確認します。

  • 登録した電話番号と営業時間が、サイトのヘッダー・お問い合わせページと一致しているか。時間制約のある相談が来る分野では、時間外の発信で最初の接点を失う影響が大きくなります
  • 口コミへの返信が、個別の事案に触れる形になっていないか。加害者側の相談は事案の特定につながりやすく、被害者側以上に慎重さが要ります
  • 所在地の表示とあわせて、オンライン面談の可否を書いているか。加害者側の相談は「事務所に出入りするところを見られたくない」という理由で、少し離れた地域から来ることがあります

どのページが問い合わせを生んでいるかを測る(総論13)

総論13(成果計測と改善)のとおり、導線は設置して終わりではありません。最低限、次の3つを確認できる状態にします。

  • お問い合わせページに来る直前のページ(どの解説記事が問い合わせを生んでいるか)
  • フォーム送信完了の件数(送信完了ページへの到達数で代用可)
  • 手続き・処分の解説ページから相談への遷移率(加害者側では最初の接点がここに集中するため、最も重要な数字になります)

加害者側では「死亡事故」「当て逃げ」のような検索数の大きい語で集めたアクセスが、相談にまったくつながらないことがよくあります。これは記事の失敗ではなく、訪問者がまだ保険会社の内側にいることの表れです。疑うべきは記事の質より、保険の範囲の境界線を示すコンテンツがその記事の先に置かれているかどうかです。

サンプルサイトで見る実例(How it looks)

ここまでの原則が実際のページでどう現れるかを確認します。ただし前提が一つあります。サンプルサイト(sample-jiko.kijiraku.com)は被害者側の専門サイトで、加害者側の直接の実例は「加害者側対応」のページ1本だけです。以下では、その1本を見たうえで、被害者側のお問い合わせまわりを「加害者側ならどこが変わるか」という読み替えで説明します。立場が変わると同じページ種別で何が変わるかを掴むことが、この節の目的です。

加害者側対応ページの末尾CTA──唯一の直接の実例

「加害者側対応」のページは「こんなお悩みはありませんか?」で始まり、「交通事故で人を怪我させてしまい、どう対応すればよいかわからない」「任意保険に入っていない、または保険で対応できない部分がある」「被害者側から過大な慰謝料を請求されており、金額が妥当かどうか知りたい」「刑事事件として処理されており、弁護人が必要」の4項目が並びます。続いて解決までの流れが、事故状況の確認→保険会社との連携→被害者への対応→刑事手続きへの対応の4段階で示され、着手金の目安とFAQ2件(「任意保険に入っていますが、弁護士は必要ですか?」「被害者から法外な金額を請求されています。支払わなければなりませんか?」)が置かれます。ページ末には電話番号と受付時間(平日 9:00〜18:00)が入ります。

機能となぜ: 4項目のうち2つ目と4つ目が、保険の外側に出た訪問者をそのまま名指ししています。さらに重要なのがFAQの1つ目「任意保険に入っていますが、弁護士は必要ですか?」で、これは保険会社に任せている最も厚い層の疑問を正面から拾っています。加害者側の導線で最初に用意すべきなのは、まさにこの問いへの答えです。

自事務所への適用ポイント: 悩みの4項目はほぼそのまま使えます。ただし解決までの流れの第2段階が「保険会社との連携」とだけ書かれており、訪問者の最大の疑問「どこまでを保険会社が、どこからを弁護士がやるのか」の答えにはなっていません。ここで役割分担を具体的に書き分ければ、この1ページだけで境界線を示す役割を果たせます。

お問い合わせページのリードと連絡先3ブロック──加害者側では何が変わるか

お問い合わせページは「ご相談のご予約・各種お問い合わせは、下記の連絡先またはフォームよりご連絡ください。」というリードで始まり、メールアドレス・電話番号・所在地の3ブロックが並びます(いずれも架空のサンプル設定です)。

機能となぜ: フォームより先に連絡手段を提示することで、入力が苦手な訪問者に別の選択肢を見せています。被害者側では、リードが事務的な案内であっても足ります。事故に遭った側には、連絡してよいかどうかを迷う理由がないからです。

自事務所への適用ポイント(加害者側への読み替え): 変えるべきはリード文と並び順です。加害者側では最初の1文が「連絡してよいのか」という迷いに答えている必要があるため、「保険会社に対応をお任せしている段階でも、確認のためのご相談を受け付けています」を先頭に置きます。並び順は、名乗ることへの抵抗が強い層が主線であることから、電話よりフォームを先に見せる構成に変えます。所在地は残し、オンライン面談の可否を併記します。

「お話を伺います」の一文──加害者側では受け止めが要る

連絡先ブロックの下には「お話を伺います」という見出しがあり、「初回60分のご相談は無料です。事故の概要と、お差し支えなければご連絡先をフォームにご入力ください。」と案内されています。

機能となぜ: 「お差し支えなければ」という条件付きの依頼は、情報を出すことへの警戒を下げます。求める内容を「事故の概要」だけに絞っているのも、書くべきことを最小限にする良い設計です。

自事務所への適用ポイント: この言い回しは加害者側でも使えますが、そのままでは足りません。加害者側の訪問者は、その「概要」を書く手前で止まります。自分がしたことを文章にすること自体が負担だからです。「うまく書けなくても構いません。分かる範囲で、いつ・どのような事故かだけをお書きください」「経緯を責めるようなことは申し上げません」の2文を足します。あわせて、相談したことが被害者・勤務先・家族に伝わらないことを明記します。守秘義務の存在は弁護士には自明でも、訪問者には自明ではありません。

フォームの項目設計──「事故日」より先に置くべき項目

フォームは姓・名・メールアドレス・メッセージの4項目のみで、いずれも必須指定ではありません。一方で入力欄の表示は英語のままで、送信ボタンは「SEND MESSAGE」です。

機能となぜ: 項目数と必須指定が減るほど送信までの摩擦は小さくなります。とくに氏名が必須でないことは、加害者側では被害者側以上に価値があります。名乗らずに送れる状態が、負い目を抱えた訪問者の最初の一歩を軽くするからです。

自事務所への適用ポイント: 項目の少なさと必須指定のなさは真似します。英語表記は真似せず、押した後に何が起きるかが分かる日本語にします。そのうえで、被害者側では「事故日」を任意項目で足す価値があると述べましたが、加害者側で先に置くべきは別の項目です。「刑事手続きの進み具合」を任意の選択式で1つ置きます(何も連絡がない/警察から連絡が来た/出頭要請を受けた/既に身柄を拘束されている)。この一項目があるだけで、折り返しの優先順位を即座に判断できます。期限のある相談が混ざる分野では、受信側の仕分けまでが導線の一部です。

料金ページの「弁護士費用特約で実質0円」──加害者側にそのまま持ち込まない

料金ページのモデルケースの合計欄には「弁護士費用特約適用で実質0円」とあり、お支払い方法の欄に「弁護士費用特約にご加入の場合は、保険会社が費用を負担するため、実質的なご負担は0円となります。まずは保険証券をご確認ください。」と書かれています。

機能となぜ: 被害者側では、費用そのものより「自分は特約を使えるのか」が障害になっているため、「まずは保険証券をご確認ください」という一文が今すぐできる次の行動を渡す役割を果たします。

自事務所への適用ポイント: これを加害者側にそのまま流用してはいけません。弁護士費用の保険特約は、一般に自分に過失のない被害事故での費用を対象とするもので、加害者側の刑事手続きや行政処分への対応に使えるとは限らないからです。「特約で実質0円」とだけ書けば、使えると期待した訪問者を誤らせます。加害者側では保険で賄える部分(示談代行の範囲)と、賄えず自己負担になる部分(刑事手続き・行政処分への対応)を分けて示し、後者の目安を出すのが正しい形です。着手金の目安が1つだけ載っている状態は、この区分の説明が伴って初めて機能します。

このサンプルサイトに足りない点(加害者側の視点で)

この記事の基準で見ると、加害者側の導線としては次の不足があります。

  • 加害者側の受け皿が独立していない: 加害者側対応のページは1本ありますが、その先の受け皿は被害者向けと共通のお問い合わせページです。被害者向けの文言が残ったページに着地した訪問者は「ここは自分向けではない」と判断して離脱します
  • 保険の範囲の境界線を示すコンテンツがない: どこまでを保険会社が対応し、どこからが対象外なのかを一覧できるページがありません。最も厚い層の入口が空白になっています
  • 受付時間の表記が揃っていない: 加害者側対応のページには「平日 9:00〜18:00」がありますが、お問い合わせページには記載がありません。期限のある相談が来る分野では、時間外にどうすればよいかまで書く必要があります
  • 返信目安と情報の取り扱いの記載がない: 「○営業日以内にご返信します」の一文と、誰が内容を確認するのかの説明を、送信ボタンの直上に置きます。守秘の明記は加害者側で特に効きます
  • 匿名性への配慮が文言に現れていない: 氏名欄が任意になっているのは良いのですが、「氏名は任意です」と明示されていないため、訪問者はその配慮に気づけません

影響が最も大きいのは1点目と2点目です。加害者側の訪問者を集められても、着地したページが自分向けに見えなければその場で失われますし、境界線を示すコンテンツがなければ、そもそも相談すべき状況にいることに気づけません。どのページにCTAが無いか、どの入口が空いているかは、キジラクの解析機能で一覧すると見つけやすくなります。

実践チェックリスト

  • □ 保険会社に任せている段階・保険の外側に出た段階・時間制約のある事態、の3つの状況それぞれに対応する導線が用意されているか
  • □ 「保険で対応できる範囲・できない範囲」の境界線を示すコンテンツが、問い合わせの前段に置かれているか
  • □ 手続き・処分を解説する記事の末尾に、テーマに対応したCTAとクリックできるリンクが置かれているか
  • □ 文言が訪問者を責める形になっていないか。氏名を名乗らずに送れる状態になっており、そのことが明示されているか
  • □ 相談したことが被害者・勤務先・家族に伝わらないことが、問い合わせの近くに書かれているか
  • □ 処分や賠償について成果を保証する表現になっていないか。処分や届出を逃れる方法を示唆していないか
  • □ 弁護士費用の保険特約が、加害者側の対応にも使えるかのように読める記述になっていないか
  • □ 電話番号に受付時間が併記され、時間外にどうすればよいかまで書かれているか。全ページで表記が揃っているか
  • □ Googleビジネスプロフィールの電話番号・営業時間がサイトと一致し、どのページから問い合わせが発生しているかを確認できる状態になっているか(総論09・13参照)

これで交通事故・加害者側のサイトを構成する7記事の設計を学びました。トップページの記事で「自分はこれからどうなるのか」に短時間で答える構成を作り、業務紹介の記事で刑事手続き・行政処分・賠償という3系統の分類を、解決事例の記事で不起訴や減刑という結果を成果保証にせず示す方法を、料金ページの記事で保険で賄えない範囲を誠実に説明する設計を、事務所紹介の記事で刑事弁護の経験を信頼につなげる書き方を、コラム記事の回で処分と手続きに関するキーワードに基づく作り方を扱い、本記事でそれらを相談へつなぐ導線を仕上げました。これで交通事故は被害者側・加害者側の両方の各論が揃い、同じ分野・同じキーワードでも立場が変われば設計がどう反転するかを、一通り確かめられる状態になりました。次は交通事故(加害者側)の総合案内ページで全体を振り返り(→交通事故(加害者側)で集客する)、他分野の各論へ進むか、総論13(→成果計測と改善)で今回作った導線を数値で検証する方法へ進みましょう。作ったものを測り、測った結果で直す。ここからが継続的な集客の始まりです。

監修: 花井 直哉(キジラク運営)

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