この章で学ぶこと
ポータルサイトの掲載を続けるか・やめるか・縮小するかを判断するための基準を学びます。ポータル経由の獲得コストと自社サイトの集客力の2軸で判断する方法、事務所のフェーズ別の考え方、判断を先送りしないためのデータ記録の方法を整理します。
弁護士がポータルサイトの掲載を続けるか・やめるか・縮小するかを判断する基準
集客の手段を体系的に学んでいく中で、ポータルサイトの掲載をいつまで続けるべきかは多くの弁護士が直面する判断だ。ポータルサイトに2年ほど掲載を続けてきた。開業直後は月に5件ほど相談が来ていたが、最近は月2件に減った。一方で、自社サイトからも月1〜2件の問い合わせが来るようになった。掲載料を払い続けるべきなのか、やめてもよいのか、判断がつかないまま掲載を継続している事務所は多い。
結論から言えば、自社サイトの集客力と、ポータル経由の獲得コストの2軸で考えれば、続ける・やめる・縮小するの3択を選べる。この章では、判断に必要な数字の出し方と、事務所のフェーズに応じた判断基準を整理する。
判断に使う2つの軸
掲載を続けるかどうかの判断は、次の2つの軸で整理できる。
軸1:ポータル経由の獲得コスト(CPA)は許容範囲か
月額掲載料÷ポータル経由の月間受任件数で、1件あたりの獲得コスト(CPA)が分かる。このCPAが受任した案件の着手金より十分に低ければ、費用対効果は出ている。着手金に近い、あるいは上回っている場合は、掲載料を払う意味が薄い。
軸2:自社サイトの集客力はどの程度か
自社サイトから月に何件の問い合わせが来ているか。この数字がゼロなら、ポータルをやめた瞬間にウェブからの新規流入がなくなる。逆に、自社サイトから安定して月3件以上の問い合わせがあるなら、ポータルへの依存度は下がっている。
この2軸の組み合わせで、取るべき選択肢が変わる。
3つの選択肢とそれぞれの判断基準
選択肢1:掲載を続ける
次の条件に当てはまる場合は、掲載を続ける判断が妥当だ。
- ポータル経由のCPAが着手金を大きく下回っている(費用対効果が出ている)
- 自社サイトからの問い合わせがまだ少ない(ポータルが主要な集客チャネルになっている)
- 開業から日が浅く、認知度を広げる段階にある
開業直後の事務所にとって、ポータルサイトは「すでに相談者がいる場所に自分を置く」手段であり、自社サイトがまだ育っていない段階では合理的な選択だ。
選択肢2:縮小する
次の条件に当てはまる場合は、プランの見直しや掲載オプションの縮小を検討する。
- ポータル経由のCPAが着手金に近い(ギリギリ元が取れている程度)
- 自社サイトからの問い合わせが月1〜2件出始めている
- 掲載を完全にやめると不安だが、コストは下げたい
多くのポータルサイトには複数のプランがある。上位プランから下位プランに変更する、有料オプションを外すなど、費用を下げつつ掲載は維持する方法がある。これが「縮小」だ。掲載を完全にやめるよりリスクが低く、コスト削減効果は得られる。
選択肢3:やめる
次の条件に当てはまる場合は、掲載を終了する判断が妥当になる。
- ポータル経由のCPAが着手金を上回っている(赤字)
- 自社サイトからの問い合わせが安定して月3件以上ある
- ポータル経由の受任がゼロまたはほぼゼロの月が続いている
ただし、「やめる」を選ぶ場合でも、いきなり解約するのではなく、まず縮小を挟むほうが安全だ。下位プランに変更して1〜2か月様子を見て、それでも効果がなければ解約する。段階的に進めれば、判断を誤ったときのリカバリーがしやすい。
事務所のフェーズ別に判断は変わる
同じ数字でも、事務所の状況によって判断の重みは異なる。
開業期(1〜2年目)
自社サイトが検索結果に表示されるまでには時間がかかる。SEO記事を書き始めてからアクセスが安定するまで、半年から1年は見る必要がある。この期間にポータルをやめると、ウェブからの新規相談がゼロになるリスクがある。開業期は、CPAが多少高くても掲載を続けるのが現実的だ。費用対効果の改善はプロフィールの充実や回答の質を上げることで取り組む。
安定期(3〜5年目)
自社サイトからの問い合わせが出始める時期だ。この段階で確認すべきは、ポータル経由と自社サイト経由の獲得コストの差だ。自社サイト経由のほうが獲得コストが低く、件数も増えてきているなら、ポータルの縮小を検討する段階にある。
成長期(5年以上・自社サイトが軌道に乗っている)
自社サイトから安定して問い合わせが来ており、ポータルの掲載がなくても事務所の運営に支障がない状態。この場合は、ポータル掲載の費用対効果を厳密に計算し、合わなければやめる判断ができる。ポータルをやめた分の予算を自社サイトのコンテンツ強化に回すことで、長期的な獲得コストはさらに下がる。
判断を先送りしないために数字を記録する
掲載を続けるか迷っている事務所の多くは、判断に必要な数字を持っていない。「なんとなく効果がある気がする」「やめるのが不安」という状態で掲載を続けている。
この状態を脱するためにまずやるべきことは、次の3つを毎月記録することだ。
- ポータル経由の問い合わせ件数と受任件数
- 自社サイト経由の問い合わせ件数と受任件数
- それぞれの経路で受任した案件の着手金
3か月分のデータがあれば、CPAを計算し、自社サイトとの比較ができる。判断の基準は「数字で元が取れているか」と「ポータルをやめても代わりの集客手段があるか」の2つに集約される。
数字がなければ判断できない。判断できなければ、掲載を続けるしかない。逆に言えば、数字さえあれば、続けるか・やめるか・縮小するかを合理的に選べる。
まとめ
ポータルサイトの掲載を続けるか・やめるか・縮小するかは、次の2軸で判断する。
- ポータル経由の獲得コスト(CPA)は着手金に対して許容範囲か
- 自社サイトの集客力は、ポータルをやめても問い合わせが途絶えない水準か
この2軸の組み合わせで、3つの選択肢を選べる。
- CPAが低く、自社サイトが育っていない → 掲載を続ける
- CPAがギリギリで、自社サイトが育ち始めている → 縮小する
- CPAが高く、自社サイトから安定して問い合わせが来ている → やめる
判断を先送りしないためには、ポータル経由と自社サイト経由の問い合わせ件数・受任件数・着手金を毎月記録することから始める。3か月分のデータがあれば、この章の基準で判断できる。