弁護士がポータルサイトの掲載を続けるか判断するための費用対効果の計算方法

この章で学ぶこと

ポータルサイトの掲載料が元が取れているかどうかを、数字で判断する方法を学びます。費用対効果の計算に必要な3つの数字、1件あたりの獲得コスト(CPA)の計算式、着手金との比較による損益分岐点の確認方法、分野別に費用対効果が異なる理由を整理します。

弁護士がポータルサイトの掲載を続けるか判断するための費用対効果の計算方法

体系的に集客を学んでおきたい弁護士にとって、各施策の費用対効果を計算できることは基本的なスキルだ。ポータルサイトに掲載して1年。問い合わせは月に数件あるが、掲載料と受任件数の関係を数字で計算したことがない。なんとなく元が取れている気もするし、取れていない気もする。そのまま掲載を続けている事務所は少なくない。

結論から言えば、掲載料÷受任件数で1件あたりの獲得コスト(CPA)を計算し、その案件の着手金と比較すれば、掲載を続けるべきか数字で判断できる。この章では、費用対効果を計算するために必要な数字の出し方と、判断に使う計算式を順に整理する。

費用対効果の計算に必要な3つの数字

計算に使う数字は3つだけだ。複雑な経営分析は必要ない。

  • 月額の掲載料(プランやオプションを含めた合計額)
  • ポータル経由の月間受任件数(問い合わせ件数ではなく、実際に受任した件数)
  • 受任した案件の平均着手金(分野ごとに分けるのが望ましい)

多くの事務所がつまずくのは、2番目の「ポータル経由の受任件数」が分からないという点だ。問い合わせは来るが、どの経路で来たか記録していない。この数字が出せないと、以降の計算はすべて推測になる。

まずやるべきことは、問い合わせが来たとき「どこで当事務所を知りましたか」と聞くことだ。最低でも1か月分の記録があれば、計算に使える数字になる。3か月分あればなお良い。

1件あたりの獲得コスト(CPA)を計算する

数字が揃ったら、まず1件あたりの獲得コストを計算する。計算式は単純だ。

1件あたりの獲得コスト(CPA)= 月額掲載料 ÷ 月間受任件数

たとえば、月額掲載料が仮にA円で、ポータル経由の月間受任件数が2件であれば、CPA=A÷2=A/2円となる。掲載料の金額はプランや地域によって異なるため、自分の事務所の実際の数字を入れて計算してほしい。

ここで注意すべきは、「問い合わせ件数」ではなく「受任件数」で割ることだ。問い合わせが月10件あっても、受任に至ったのが1件であれば、CPA=月額掲載料÷1だ。問い合わせ件数で割ると、実態より良い数字が出てしまう。

受任件数がゼロの月があるなら、3か月や6か月の累計で計算する。月ごとのブレが大きい場合はとくに、期間を広げて平均を取ったほうが実態に近い数字が出る。

CPAと着手金を比較して損益分岐点を確認する

CPAが分かったら、次は着手金と比較する。

着手金 > CPA → 1件受任すれば掲載料の元が取れている

着手金 < CPA → 1件の受任では掲載料の元が取れていない

ここで比較するのは、あくまでポータル経由で受任した案件の平均的な着手金だ。事務所全体の平均ではない。ポータル経由の案件は一般的に単価が低くなる傾向がある。債務整理や交通事故など、分野によって着手金の水準は大きく異なるため、分野別に計算するとより正確な判断ができる。

さらに正確に判断したい場合は、着手金だけでなく報酬金(成功報酬)を加えた案件あたりの売上合計で比較する。着手金だけ見ると赤字に見えても、報酬金を含めれば黒字になることもある。ただし、報酬金は案件終了時に確定するため、計算が複雑になる。まずは着手金ベースで判断し、余裕があれば報酬金も含めて再計算するのが現実的だ。

分野別に費用対効果が異なる理由

ポータルサイトの費用対効果は、取り扱い分野によって大きく変わる。これは次の3つの要素が分野ごとに異なるためだ。

問い合わせの数

離婚や相続のように相談者が多い分野は、問い合わせ自体の数が多い。一方、特殊な企業法務やニッチな分野では、ポータルサイト経由の問い合わせ自体が少なくなる。問い合わせが少なければ、受任に至る確率はさらに下がる。

受任率

問い合わせが来ても受任に至るかどうかは別の話だ。債務整理の相談は件数が多い一方で、複数の事務所に同時に問い合わせる相談者も多い。受任率が10%の分野と30%の分野では、同じ問い合わせ件数でもCPAは3倍違う。

案件単価

着手金が数万円の分野と数十万円の分野では、同じCPAでも損益の意味がまったく異なる。CPAが10万円でも、着手金が50万円なら十分に黒字だ。CPAが5万円でも、着手金が3万円なら赤字になる。

この3つの組み合わせで費用対効果が決まるため、「ポータルサイトは効果がある」「効果がない」と一律に言うことはできない。自分の事務所が主に受任している分野で計算することが重要だ。

掲載料と自社サイトのコストを中長期で比較する

費用対効果を計算した結果、「ギリギリ元が取れている」という状態であれば、もう1つ考えるべきことがある。掲載料は毎月固定で発生するが、自社サイトの集客は初期投資の後にランニングコストが下がっていくという違いだ。

ポータルサイトの掲載料は、掲載を続ける限り毎月同じ金額がかかる。年間で計算すると、数年分の累計額は相当な金額になる。

一方、自社サイトでSEO記事を積み上げた場合、記事の制作コストは初期にかかるが、公開後は追加費用なしで検索流入を得られる。1年後、2年後と時間が経つほど、1件あたりの獲得コストは下がっていく。

ただし、これは自社サイトの集客が軌道に乗った場合の話であり、自社サイトからの問い合わせがゼロの段階で掲載をやめるのはリスクが高い。ポータルサイトの掲載をやめるかどうかは、自社サイトの集客力がどの程度あるかとセットで判断する必要がある。

まとめ

ポータルサイトの費用対効果は、次の手順で計算できる。

  • 月額掲載料・ポータル経由の月間受任件数・受任案件の平均着手金の3つの数字を用意する
  • CPA(1件あたりの獲得コスト)= 月額掲載料 ÷ 月間受任件数 で計算する
  • CPAと着手金を比較して、1件の受任で元が取れているか確認する
  • 分野別にCPAと着手金の関係が異なるため、主要な取り扱い分野ごとに計算する

「なんとなく掲載を続けている」状態から脱するには、感覚ではなく数字で判断する必要がある。まずはポータル経由の受任件数を記録することから始めてほしい。その数字さえあれば、この章の計算式で費用対効果を確認できる。

Scroll to Top