この章で学ぶこと
この章では、弁護士が費用に関する記事を書いて相談者の不安を解消する方法を学びます。費用は相談者が弁護士を選ぶ際に最も重視する情報のひとつです。金額を出す場合と出せない場合のそれぞれに適切な書き方があり、いずれの場合も相談者の不安を解消して問い合わせにつなげることができます。
費用に関する記事は相談者が最も知りたい情報のひとつです
弁護士に相談することを検討している人が最も不安に感じるのは、費用の見通しが立たないことです。日本弁護士連合会の「弁護士白書」に掲載されている市民アンケートの結果では、弁護士に依頼する際に重視する点として「費用の明確さ」は常に上位に挙がっています。
相談者が費用について知りたいことの内訳
「費用が知りたい」と一口に言っても、相談者が知りたいことは複数の層に分かれています。
- 総額の目安 — 最終的にいくらかかるのか。数十万円なのか数百万円なのかの桁感
- 費用の内訳 — 相談料・着手金・報酬金・実費のそれぞれがいくらか
- 支払いのタイミング — いつ、いくら払えばよいのか。一括か分割か
- 追加費用の有無 — 途中で費用が増えることはあるのか。ある場合はどのような場合か
- 他の事務所との比較 — この事務所の費用は高いのか安いのか
費用に関する記事を書く際には、これらの疑問にどこまで答えるかを事前に決めておく必要があります。すべてに答える必要はありませんが、少なくとも「総額の目安」と「費用の内訳」は扱わないと、相談者の不安解消にはつながりません。
費用を書かないことのデメリット
費用に関する情報をサイトに載せていない場合、以下のデメリットがあります。
- 費用が分からないために相談を躊躇する人が、他の事務所(費用を明示している事務所)に流れます
- 「弁護士 費用」「離婚 弁護士 費用」のような検索ボリュームの大きいキーワードで記事を出せず、検索流入の機会を逃します
- 問い合わせの電話やメールで費用の質問が増え、対応コストがかかります
費用の情報を記事に書くことは、相談者の不安を解消するだけでなく、検索流入の増加と業務効率の改善にもつながります。
費用解説記事に書くべき項目
費用解説記事を書く際には、以下の項目を漏れなく含めることが重要です。具体的な金額を出すかどうかは事務所の方針によりますが、項目自体は共通です。
費用解説記事の項目チェックリスト
| 項目 | 内容 | 必須/推奨 |
|---|---|---|
| 弁護士費用の仕組みの説明 | 相談料・着手金・報酬金・実費の違いを説明する | 必須 |
| 相談料 | 初回無料か、有料の場合は30分あたりの金額 | 必須 |
| 着手金 | 依頼時に支払う費用。分野・事案の種類ごとに記載 | 必須 |
| 報酬金 | 事件が終了した際に支払う費用。成功報酬の計算方法を含む | 必須 |
| 実費 | 印紙代・郵便切手代・交通費・コピー代など | 必須 |
| 日当 | 出張や遠方の裁判所への出廷にかかる費用 | 推奨 |
| 支払い方法 | 一括・分割・クレジットカード対応の有無 | 推奨 |
| 法テラスの利用 | 法テラスの民事法律扶助を利用できる場合の条件と手続き | 推奨 |
| 追加費用が発生する場合 | 事案が複雑化した場合や、相手方が争った場合の追加費用の有無 | 推奨 |
弁護士費用の仕組みを最初に説明する理由
多くの相談者は、弁護士費用の仕組み自体を理解していません。「相談料」と「着手金」の違い、「着手金」と「報酬金」の違いが分からない人が大半です。費用の金額を書く前に、仕組みを説明しないと、読者は金額を見ても「これは合計なのか、一部なのか」が分かりません。
説明の書き方は、以下のように「いつ払うか」を軸にすると分かりやすくなります。
- 相談料 — 相談するときに払います。初回無料の事務所も多いです
- 着手金 — 依頼するときに払います。結果にかかわらず返金されません
- 報酬金 — 事件が終わったときに払います。結果に応じて金額が変わります
- 実費 — 手続きにかかった実費を払います。裁判所の手数料や郵便代などです
金額を出す場合の書き方
具体的な金額を記事に書く場合は、以下の四つの原則を守りましょう。
原則1: 幅で示す
金額は「30万円」ではなく「20〜50万円」のように幅で示します。幅で示す理由は三つあります。
- 事案の難易度や相手方の対応によって費用が変わるため、一点で示すと正確ではありません
- 後から料金を変更した場合に、記事の記述と乖離するリスクを減らせます
- 「最低いくらから」という情報があるだけで、相談者は桁感を把握できます
原則2: 条件を明示する
金額を示す際は、必ずその金額が適用される条件を明示します。「着手金30万円〜」とだけ書くのではなく、「協議離婚で争点が少ない場合の着手金は30万円〜、調停に移行した場合は追加で20万円〜」のように、どの条件でいくらになるかを分けて書きましょう。
原則3: 税込み・税抜きを明記する
金額が税込みなのか税抜きなのかを必ず明記します。記事内の金額がすべて税抜きの場合は冒頭に「本記事の金額はすべて税抜き表示です」と注記しましょう。税込みと税抜きが混在すると読者が混乱するため、記事内では統一します。
原則4: 自分の事務所の料金と一般的な相場を分ける
記事の中で自分の事務所の料金と一般的な相場の両方を書く場合は、どちらの数字なのかを明確に区別します。一般的な相場を示した後に「当事務所の料金は料金表ページをご覧ください」とリンクで誘導する書き方が、最も誤解が少なくなります。
分野別の費用記事の書き方例
| 分野 | 書くべき費用の区分 | 金額の示し方の例 |
|---|---|---|
| 離婚 | 協議/調停/訴訟の段階別に着手金・報酬金 | 「協議離婚の着手金は20〜40万円が一般的な水準」 |
| 相続 | 遺産分割協議/調停/審判の段階別、遺産額による報酬金の違い | 「遺産額が3,000万円以下の場合の着手金は20〜30万円が目安」 |
| 交通事故 | 着手金無料の完全成功報酬型の説明、弁護士費用特約の説明 | 「弁護士費用特約を使える場合は自己負担がゼロになるケースが多い」 |
| 債務整理 | 任意整理/個人再生/自己破産の手続き別 | 「任意整理の着手金は債権者1社あたり3〜5万円が一般的な水準」 |
金額を出せない場合の書き方
具体的な金額を記事に書けない場合でも、相談者の不安を解消する方法はあります。金額を出せない理由はいくつか考えられます。
- 事案ごとに費用が大きく異なるため、一般的な金額を示すと誤解を招きます
- 料金改定の頻度が高く、記事の金額と実際の料金が乖離するリスクがあります
- 競合事務所に料金を知られたくないという事情があります
いずれの場合でも、以下の三つの方法で相談者の不安をある程度解消できます。
方法1: 費用の仕組みと計算方法を説明する
金額そのものを出せなくても、費用がどのように計算されるかを説明することはできます。計算の仕組みを具体例付きで説明すれば、金額を伏せたとしても相談者の不安は軽減されます。
方法2: 費用の上限・下限の目安を示す
正確な金額は出せなくても、「通常は○万円を超えることはない」「最低でも○万円はかかる」のように上限や下限の目安を示すことはできます。相談者にとって最も不安なのは「青天井でいくらかかるか分からない」ことであるため、上限の目安を示すだけでも不安の解消につながります。
方法3: 見積もりの流れを説明する
「正式な費用は事案の内容を伺った上でお見積もりいたします」と書くだけでは、相談者は「見積もりを取ったら断れないのではないか」「見積もりだけでも費用がかかるのではないか」と不安に感じます。以下の情報を明記することで、見積もりに対するハードルを下げられます。
- 見積もりは無料であること
- 見積もり後に依頼しなくても問題ないこと
- 見積もりにかかる時間(初回相談の中で見積もりまで出せるか、後日になるか)
- 見積もりの際にどのような情報を用意しておけばよいか
金額を出す場合と出さない場合の比較
| 観点 | 金額を出す場合 | 金額を出さない場合 |
|---|---|---|
| 相談者の安心感 | 高い(桁感が分かる) | 低いが、仕組みの説明で補える |
| 問い合わせへの転換率 | 費用に納得した人が問い合わせるため質が高い | 問い合わせの段階で費用の説明が必要 |
| 料金変更時のリスク | 記事の更新が必要 | 低い |
| 競合への情報漏洩 | 料金が分かる | 分からない |
| SEOへの効果 | 具体的な数字がある記事は検索者の意図に合致しやすい | 仕組みの説明でもキーワードとの関連性は保てる |
どちらを選ぶかは事務所の方針次第ですが、少なくとも費用の仕組み(相談料・着手金・報酬金・実費の違い)は必ず書くことを推奨します。仕組みの説明だけでも、何も書かないよりは格段に相談者の不安を解消できます。
まとめ
費用に関する記事は、相談者が弁護士を選ぶ際に最も重視する情報のひとつであり、書くことで検索流入の増加、問い合わせ率の向上、対応コストの削減が期待できます。
- 費用解説記事には、弁護士費用の仕組み(相談料・着手金・報酬金・実費)の説明を必ず含めます
- 金額を出す場合は、幅で示す、条件を明示する、税込み・税抜きを明記する、自分の料金と一般的な相場を分ける、の四つの原則を守ります
- 金額を出せない場合は、計算方法の説明、上限・下限の目安、見積もりの流れの説明で相談者の不安を補います
- どちらの場合でも、費用の仕組みの説明は最低限書くべきです
まずは自分の主要な取扱分野について、費用の仕組みを説明する記事を1本書くところから始めるとよいでしょう。金額を出すかどうかは、記事の反応を見てから判断しても遅くありません。