この章で学ぶこと
ポータルサイト経由の受任率を改善するための3段階の手順を学びます。受任率の計測方法、離脱理由の分類、最も多い離脱理由に応じた対策の打ち方を、計測していない状態から始められる形で整理します。
弁護士がポータル経由の受任率を改善するための3段階の手順
体系的に集客を学んでおきたい弁護士にとって、施策の改善を「感覚」ではなく「手順」で進められるかどうかは重要な分かれ目だ。受任率が低いと感じている。しかし、そもそも受任率を数字で把握していない。何が原因かも分からないまま、プロフィールを書き直したり、対応分野を変えてみたりしているが、効果が見えない。
受任率の改善は、3段階で進める。まず受任率を数字で把握する。次に、受任に至らなかった相談の離脱理由を分類する。最後に、最も多い離脱理由から順に対策を打つ。この章では、計測していない状態から始められる手順を順に説明する。
段階1 受任率を数字で把握する — 計測していない状態からの始め方
改善の第一歩は、現状を数字で把握することだ。「なんとなく低い気がする」では、改善したかどうかも判断できない。
受任率の計算式
受任率の計算は単純だ。受任件数 ÷ 相談件数 × 100で出る。月5件の相談で1件受任なら受任率20%だ。
ここで重要なのは、「相談件数」の定義を決めておくことだ。ポータル経由の相談には、メール問い合わせ、電話相談、面談の3種類がある。メールで問い合わせがあっても返信に反応がなかったケースを「相談」に含めるかどうかで、受任率は大きく変わる。
おすすめは、弁護士が実際に対応した件数を「相談件数」とすることだ。メールを送ったが返信がなかった、電話をかけたが出なかった、といったケースは除外する。弁護士が実際に話を聞いたうえで受任に至らなかったのか、そもそも接触できなかったのかは、別の問題だからだ。
記録の方法
表計算ソフトで十分だ。最低限、以下の項目を記録する。
- 相談日
- 流入元(どのポータルサイトか)
- 相談方法(メール・電話・面談)
- 分野(離婚・相続・債務整理など)
- 結果(受任・不受任)
- 不受任の場合の理由(分かる範囲で)
最後の「不受任の理由」が、次の段階2で重要になる。最初は「費用」「検討中のまま連絡途絶」「他の弁護士に依頼」「依頼意思なし」程度のざっくりした分類で構わない。
まずは3か月分のデータを集める。1か月分では件数が少なすぎて傾向が見えない。3か月分あれば、どの分野の受任率が低いか、どの理由で離脱が多いかが見えてくる。
段階2 離脱理由を分類する — なぜ受任に至らなかったかを整理する
3か月分のデータが集まったら、不受任の理由を分類する。典型的な離脱理由は以下の5つだ。
- 費用面 — 「高い」「予算に合わない」と言われた
- 検討中のまま連絡途絶 — 「考えます」と言ったまま返事がない
- 他の弁護士に依頼 — 比較検討の結果、他を選んだ
- 依頼意思なし — そもそも弁護士に依頼するつもりがなかった(愚痴・情報収集のみ)
- 案件として受けられない — 利益相反、分野外など弁護士側の事情
5番目は弁護士側の事情なので改善対象ではない。問題は1〜4番だ。
3か月分のデータで、1〜4のどれが最も多いかを確認する。たとえば、不受任10件のうち6件が「検討中のまま連絡途絶」であれば、そこが最大のボトルネックだ。
分野別に分けるとさらに精度が上がる
全体の受任率が低くても、分野によって差があることは多い。離婚は受任率が高いのに、債務整理は低い、といったケースだ。分野別に離脱理由を見ると、「債務整理は費用面での離脱が突出して多い」といった具体的なパターンが見えてくる。分野ごとに対策を変えるべきかどうかの判断材料になる。
離脱理由が分からないケースが多い場合
「理由は分からないが受任に至らなかった」というケースが多い場合は、相談の終わり方を変える必要がある。相談の最後に、「もし今回見送られる場合、差し支えなければ理由を教えていただけますか」と一言聞くだけで、データの精度は大幅に上がる。すべての相談者が答えてくれるわけではないが、3人に1人が答えてくれれば十分な情報になる。
段階3 最も多い離脱理由から順に対策を打つ
離脱理由が分類できたら、最も件数が多い理由から対策を打つ。ここで重要なのは、すべてを一度に変えないことだ。複数の施策を同時に実行すると、何が効いたのか分からなくなる。1つずつ変えて、次の3か月で受任率が変わるかを確認する。
「費用面」が最多の場合
ポータルのプロフィール上で、費用の目安を事前に記載する。着手金の範囲、相談料の有無、報酬の計算方法の概要を書く。費用を見たうえで相談してくる人は、その金額を前提として受け入れている。費用面での離脱は減る。
それでも費用で断られる場合は、掲載している分野と料金帯の整合性を確認する。少額案件が中心の分野で掲載している場合、構造的に費用対効果が合わない可能性がある。
「検討中のまま連絡途絶」が最多の場合
相談後のフォローの仕方を見直す。相談の最後に「3日後に状況を確認するお電話をしてもよいですか」と確認を取っておくと、連絡途絶を減らせる。また、相談時に次のアクションを具体的に提示することも有効だ。「ご検討ください」で終わるのではなく、「もし進める場合は、この書類をお持ちいただければ次回の面談で方針を確定できます」と伝える。
「他の弁護士に依頼」が最多の場合
比較検討で負けている。この場合、差がつくのは応答速度と見通しの具体性だ。メール相談への返信が遅い、見通しが曖昧、といった点がないかを振り返る。相談者は複数の弁護士に連絡している。最初に具体的な見通しを示してくれた弁護士に決める人は少なくない。
「依頼意思なし」が最多の場合
集まっている相談者の層がずれている。プロフィールの訴求内容を見直す。「お気軽にご相談ください」のような表現は、依頼意思のない層も呼び込む。「離婚調停を検討中の方」「相続放棄の期限が迫っている方」のように、具体的な状況を示す表現に変えると、依頼意思のある層が集まりやすくなる。
まとめ
ポータル経由の受任率を改善する手順は、3段階で進める。
- 計測する — 受任率を数字で把握する。相談件数・受任件数・不受任の理由を3か月分記録する
- 離脱理由を分類する — 費用面・連絡途絶・他の弁護士・依頼意思なしの4つに分ける。分野別に見ると精度が上がる
- 最も多い離脱理由から対策する — 1つずつ変えて効果を確認する。複数を同時に変えない
計測を始める前に施策を打つのは、地図を持たずに歩くようなものだ。まずは表計算ソフトを開いて、直近3か月の相談を思い出せる範囲で記録するところから始めればよい。完璧なデータでなくても、傾向は見える。傾向が見えれば、的外れな対策に時間を使わずに済む。