弁護士のリスティング広告の費用相場と月額予算の決め方

弁護士のリスティング広告の費用相場と月額予算の決め方

集客の手段としてリスティング広告の名前は聞いたことがあるが、実際にどのくらいの費用がかかるのか、月額予算はどう決めるのかが分からない。「月20〜30万円が目安」と聞いても、その金額が自分の事務所に当てはまるのかを判断する基準がない。体系的に学んでおきたいが、まず仕組みと費用感の全体像を押さえたい。

リスティング広告の月額予算は「月20〜30万円」のような一律の金額で決まるものではありません。自分の取扱分野のクリック単価の水準を把握し、月に何件の相談が欲しいかを決めれば、自分の事務所に合った月額予算を逆算できます。

この記事では、クリック単価の水準を把握する、目標の相談件数を決める、月額予算を逆算する、予算を抑える要素を知る、の順で説明します。

リスティング広告の月額予算は一点では決まらない — クリック単価と目標相談件数から逆算する

「月にいくら必要ですか」と聞かれたとき、一律の金額で答えられる性質のものではありません。月額予算は、次の三つの要素で変わります。

  • 取扱分野ごとのクリック単価 — 離婚と相続ではクリック1回にかかる費用が異なります
  • 目標の相談件数 — 月に2件欲しいのか5件欲しいのかで必要な予算は大きく変わります
  • 問い合わせ率 — 広告をクリックした人のうち、実際に問い合わせにつながる割合です

制作会社から「月20〜30万円」と言われた場合、その金額がどのクリック単価と何件の相談を前提にしているかを確認しないと、自分の事務所に合っているかどうかを判断できません。

自分の数字で月額予算を出す手順は四つです。

  1. 自分の取扱分野のクリック単価の水準を把握する
  2. 月に何件の相談が欲しいかを決める
  3. 必要なクリック数から月額予算を逆算する
  4. 予算を抑える要素を知る

順に見ていきます。

手順1 自分の取扱分野のクリック単価の水準を把握する

リスティング広告では、広告がクリックされるたびに費用が発生します。このクリック1回あたりの費用を「クリック単価」と呼びます。クリック単価は、分野・地域・キーワードの組み合わせによって幅があります。

業界で報告されている水準として、弁護士の取扱分野別のクリック単価はおおむね次のとおりです。

取扱分野 キーワード例 クリック単価の水準(目安)
離婚 「弁護士 離婚」「離婚 弁護士 地域名」 1,000〜2,500円
相続 「弁護士 相続」「相続 弁護士 地域名」 800〜2,000円
交通事故 「弁護士 交通事故」「交通事故 弁護士 地域名」 1,500〜3,000円
債務整理 「弁護士 債務整理」「任意整理 弁護士」 2,000〜4,000円
刑事事件 「弁護士 刑事事件」「逮捕 弁護士」 1,500〜3,500円

※ これらの数字は一次ソース(Google公式の業種別データ等)ではなく、業界で報告されている水準です。実際のクリック単価はオークションのたびに変動するため、目安として幅で捉えてください。

この表から分かることが二つあります。

一つは、分野によってクリック単価が大きく異なることです。離婚系で1,000円のクリック単価と、債務整理系で4,000円のクリック単価では、同じ月額予算でも得られるクリック数が4倍違います。「弁護士のリスティング広告は月20〜30万円」という一律の目安が当てにならない理由はここにあります。

もう一つは、キーワードの広さで単価が変わることです。「弁護士 離婚」のような広いキーワードは競合が多く、クリック単価が高くなる傾向があります。一方、「弁護士 離婚 地域名」のように地域で絞ったキーワードは、検索する人の数は減りますがクリック単価が下がる傾向にあります。地方都市であれば大都市圏よりさらに低くなることが多いです。

自分の地域・分野でのクリック単価の概算は、Google広告のキーワードプランナーで無料で確認できます。Google広告のアカウントを作成し(広告を出稿しなくてもアカウントは作れます)、キーワードプランナーに「弁護士 離婚 地域名」などのキーワードを入力すると、推定のクリック単価が表示されます。

手順2 月に何件の相談が欲しいかを決める

クリック単価の水準が分かったら、次はリスティング広告から月に何件の相談を得たいかの目標を決めます。月額予算を計算する前に、この目標がないと計算に進めません。

小規模事務所の現実的な目標

弁護士1〜2名の事務所であれば、リスティング広告から月2〜5件の新規相談を得ることが現実的な目標になります。月に10件以上を目標にすると、必要な予算が大きくなるだけでなく、相談対応の時間が既存業務を圧迫する可能性もあります。まずは月2〜3件を目標にして始め、対応できる範囲で増やしていくのが無理のない進め方です。

着手金を念頭に置く

目標の相談件数を決める際に、着手金の水準を頭に入れておくと、手順3で計算した月額予算が自分にとって許容できるかどうかを判断しやすくなります。

たとえば、離婚事件の着手金が30万円の事務所と、相続事件の着手金が50万円の事務所では、広告費に出せる金額の感覚が異なります。「広告費が着手金の何割までなら許容できるか」の目安を持っておくと、計算結果を見たときに「高い」「安い」の判断がしやすくなります。

なお、費用対効果の詳しい計算手順(受任率を加味して受任1件あたりのコストを出し、着手金と比較する方法)はこの記事の範囲外です。ここでは月額予算を決めるために、目標の相談件数を置くところまでを扱います。

手順3 必要なクリック数から月額予算を逆算する

目標の相談件数とクリック単価の水準が分かれば、月額予算を逆算できます。計算式は次のとおりです。

目標相談件数 ÷ 問い合わせ率 × クリック単価 = 月額予算

ここで出てくる「問い合わせ率」とは、広告をクリックしてページを訪れた人のうち、実際に電話やフォームで問い合わせにつながった割合のことです。業界で報告されている水準としては3〜10%程度とされていますが、広告文の内容やページの作りによって大きく変わります。この数字も一次ソースではないため、目安として幅で捉えてください。

計算例

離婚分野で月3件の相談を目標にする場合を考えます。

  • クリック単価: 1,500円(離婚系の中間的な水準)
  • 問い合わせ率: 5%と仮定
  • 目標相談件数: 3件

3件 ÷ 5% × 1,500円 = 90,000円

この条件であれば、月額予算は約9万円が目安になります。同じ条件で問い合わせ率が3%の場合は15万円、10%の場合は4.5万円です。問い合わせ率が3%と10%では月額予算が3倍以上変わることが分かります。

以下の表で、クリック単価と問い合わせ率の組み合わせごとに、月額予算と想定相談件数の関係を確認できます。

月額予算 クリック単価 月間クリック数 問い合わせ率3%の場合 問い合わせ率5%の場合 問い合わせ率10%の場合
月5万円 1,000円 50回 約1.5件 約2.5件 約5件
月5万円 2,000円 25回 約0.8件 約1.3件 約2.5件
月10万円 1,000円 100回 約3件 約5件 約10件
月10万円 2,000円 50回 約1.5件 約2.5件 約5件
月20万円 1,500円 約133回 約4件 約6.7件 約13件
月30万円 2,000円 150回 約4.5件 約7.5件 約15件

この表の使い方は、まず手順1で把握した自分の分野のクリック単価の行を探し、次に問い合わせ率の列を見て、自分の目標相談件数に近い月額予算を見つけることです。

たとえば、相続分野(クリック単価1,000円前後)で月3件の相談を目標にする場合、問い合わせ率3%なら月10万円、問い合わせ率5%なら月6万円程度が目安になります。

注意すべき点が二つあります。

一つは、問い合わせ率は最初は分からないことです。広告を出し始めたばかりの段階では、自分のページの問い合わせ率のデータがありません。まずは3〜5%あたりを仮の数字として計算し、実際に広告を運用しながらデータを蓄積して修正していくのが現実的です。

もう一つは、月額予算にはGoogle広告の費用だけでなく、代理店に運用を依頼する場合の手数料も含める必要があることです。代理店の手数料は広告費の20%前後が一般的です。月10万円の広告費で代理店に依頼する場合、手数料を含めた総額は月12万円程度になります。

手順4 クリック単価は品質スコアとキーワードの絞り方で下げられる

手順3で計算してみたところ、月額予算が想定より高くなった場合でも、クリック単価を下げる方法があります。リスティング広告のクリック単価は、入札額(自分が払ってもよいと設定する上限額)だけで決まるわけではありません。

Google広告では、広告の掲載順位は「広告ランク」という仕組みで決まります。Google広告ヘルプでは、広告ランクについて次のように説明されています。

広告ランクは、入札単価、オークション時の広告の品質(推定クリック率、広告の関連性、ランディング ページの利便性など)、広告ランクの下限値、オークションにおける競争力、ユーザーが検索に至った背景(コンテキスト)、広告アセットやその他の広告フォーマットの効果予測に基づいて算出されます

出典: Google広告ヘルプ「広告ランクについて」

つまり、入札額が低くても、広告の品質が高ければ上位に表示される可能性があるということです。そして広告の品質を数値化したものが「品質スコア」です。

品質スコアは、推定クリック率、広告の関連性、ランディング ページの利便性の3つの要素で評価されます。各要素は「平均より上」「平均的」「平均より下」のいずれかのステータスが付きます

出典: Google広告ヘルプ「品質スコアについて」

品質スコアが高いほど、低い入札額でも上位に表示されやすくなり、結果としてクリック単価が抑えられます。これは、同じ掲載順位でも品質スコアの高い広告のほうが安いクリック単価で済むことを意味します。

小規模事務所がクリック単価を抑えるためにできること

  • キーワードを「分野×地域名」で絞る — 「弁護士 離婚」のような広いキーワードは競合が多くクリック単価が高くなります。「弁護士 離婚 地域名」のように地域と分野で絞ったキーワードから始めると、クリック単価が下がるだけでなく、実際に相談につながりやすい検索者に広告を届けられます
  • 広告文とページの内容を一致させる — 「離婚 弁護士 地域名」というキーワードで広告を出すなら、広告文にもページにも離婚と地域名を含めます。広告文とページの内容が一致していると、品質スコアの「広告の関連性」と「ランディングページの利便性」の評価が上がり、クリック単価が下がる方向に働きます
  • まず月5〜10万円の小さな予算で始める — リスティング広告は始めた日から効果が出るものではなく、データを蓄積して改善していくものです。最初から月20〜30万円を投じるのではなく、月5〜10万円で始めてクリック単価や問い合わせ率の実績データを2〜3か月かけて集め、その数字をもとに予算を増やすかどうかを判断するのが、小規模事務所にとって無理のない始め方です

まとめ — 月額予算はクリック単価と目標相談件数から逆算して自分の数字で決める

リスティング広告の月額予算は「月20〜30万円」の一点では決まりません。自分の取扱分野のクリック単価の水準と、月に何件の相談が欲しいかから逆算して、自分の事務所に合った予算を出すことができます。

  • クリック単価は分野・地域・キーワードの絞り方で変わる(離婚系で1,000〜2,500円、相続系で800〜2,000円が業界で報告されている水準)
  • 「目標相談件数 ÷ 問い合わせ率 × クリック単価」で月額予算が出る
  • 品質スコアを上げれば、同じ掲載順位でもクリック単価を抑えられる

まずはGoogle広告のキーワードプランナーで自分の地域・分野のクリック単価の概算を確認し、月5〜10万円の小さな予算から始めてデータを見てから増やすかどうかを判断するのがおすすめです。

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