解決事例ページの作り方──獲得額を規程の範囲で示す
結論・要点
離婚(請求者側)の解決事例ページは、最も難しい設計を要求されます。請求者側のキーワード2,977件の最大勢力は「いくら受け取れるか知りたい」という検索で、859KW・28.9%を占めます。しかし獲得額を前面に出せば、弁護士の業務広告に関する規程が禁じる誇大表現・過度な期待を抱かせる表示に踏み込みます。この緊張を「幅・前提・個別性」の3点セットで解く方法を、What→Why→How it looks の3層で解説します。
目次
- 解決事例ページに必要なコンテンツ(What)
- なぜ解決事例ページが必要か(Why)
- サンプルサイトで見る実例(How it looks)
- 実践チェックリスト
離婚(請求者側)の解決事例ページは、最も難しい設計を要求されます。請求者側のキーワード2,977件の最大勢力は「いくら受け取れるか知りたい」という検索で、859KW・28.9%を占めます。しかし獲得額を前面に出せば、弁護士の業務広告に関する規程が禁じる誇大表現・過度な期待を抱かせる表示に踏み込みます。この緊張を「幅・前提・個別性」の3点セットで解く方法を、What→Why→How it looks の3層で解説します。
解決事例ページに必要なコンテンツ(What)
事例ページは2層構造です。一覧ページ(/cases/)は「自分に近い事例があるか」を判断させる索引、個別事例ページは「どう解決したか」を示す実証で、役割が異なります。
事例一覧ページ──「争点」と「結果」の2軸でスキャンさせる
最初から10件も20件も必要ありません。3〜5件で足ります。件数より重要なのが争点のバリエーションです。財産分与が3件並ぶより、財産分与・養育費・慰謝料が1件ずつある方が見つけてもらえます。
カードの要素は4つ。①タイトル——争点と、弁護士が何をしてどうなったかが分かる形にする(「財産分与の事例」では足りません)。②属性タグ——年代・性別・職業など、訪問者が自分と重ねられる最小限の属性。③結果の要約——1〜2行。ここで金額に触れるかが本記事最大の論点です。④個別ページへのリンク。
争点タグは業務紹介ページの分類と揃えます。請求者側の業務紹介ページの回で解説したとおり、業務紹介は手続き別(協議・調停・裁判)と争点別(財産分与・親権・養育費等)の二軸で組むため、対応させれば自然な内部リンクが張れます。
個別事例ページの6段構成──請求者側は「前提条件」を独立させる
個別事例は次の6段で統一します。揃えれば事例が増えても一貫性が残ります。
- 相談の背景: 婚姻期間・家族構成・就労状況の概要と相談時の懸念
- 争点・問題点: 「財産分与の対象範囲」「事情の変更の有無」など争いを法的な言葉で名指しする
- 弁護士の対応: 「交渉しました」ではなく「弁護士照会で金融資産を調査した」という具体性が専門性の証拠
- 結果: 金額と期間を記述する段
- 前提条件: 婚姻期間・共有財産の総額・収入水準・証拠の有無など、この結果が出た条件
- 弁護士コメント: この事例から一般化できる学びの解説
被請求者側は「相談内容→対応→結果→ポイント解説」の4段で足りますが、請求者側では「前提条件」を独立させることを強く推奨します。請求者側の事例は必ず金額が焦点になるからです。再現性がないことを但し書きで示すのではなくページの構造で示す。この段が常にあれば、訪問者は「この金額はこの条件で出た数字だ」と理解します。文章の巧拙に頼らず、テンプレートで守れる仕組みにします。
金額の書き方3原則と免責の3点セット
結果段で金額を書く原則は3つ。①幅——総額に対する割合やレンジ、算定表などの根拠とセットで示す。②前提——その金額が出た条件を併記する。③個別性——事案により結果が異なることを明示し、金額を見出しの主語にしない。詳細は次章で扱います。
あわせて免責の3点セットを定型化します。「ご本人の了承を得て掲載」「事案により結果は異なる参考例」「特定を避けるため一部を編集」の3つ。1件ごとに文言を考えず、全事例に同じ形で置きます。
| 項目 | 請求者側での記載例 | 匿名化・表現上の要点 |
|---|---|---|
| 相談者の属性 | 40代・女性・専業主婦・婚姻期間15年 | 氏名もイニシャルも避け「ご相談者」に統一。年齢は年代、職業は大分類 |
| 争点・問題点 | 相手方が金融資産を開示せず、対象範囲が争点 | 勤務先名・金融機関名・不動産の所在地は書かない |
| 弁護士の対応 | 弁護士照会で未申告の証券口座を確認した | 法的戦略は具体的に書く。事件番号・裁判所名は除く |
| 結果(金額) | 共有財産の総額約2,800万円の2分の1にあたる額で合意 | 金額を単独で立てず総額と割合をセットに。期間は「約〇か月」 |
| 前提条件 | 婚姻期間15年・専業主婦・調査で追加資産が判明 | 再現性のなさを構造で示す段。省くと成果保証に近づく |
| 免責表示 | 本人の了承/結果は事案による/一部編集 | 全事例に同一文言で配置。1件欠けると一貫性が崩れる |
なぜ解決事例ページが必要か(Why)
検索データの最大勢力は「いくら受け取れるか知りたい」(859KW)
請求者側のキーワードは2,977件(月間検索数100以上)あり、被請求者側の約2.4倍の規模です。うち「いくら受け取れるか知りたい」という検索が最多で859KW・28.9%。この関心が強くうかがえるものまで広く数えれば914KW・30.7%になります。(キジラク調べ)
上位を見れば傾向は明白です。「養育費 相場」121,500、「養育費 算定表」66,200、「不倫 慰謝料」36,200——いずれも自分が受け取る金額の検索です。一方、自分が払う弁護士費用がいくらか知りたい検索は114KW・3.8%にとどまります。この非対称は決定的で、請求者はコストより回収額を見ています。
この最大ニーズに業務紹介ページは答えきれません。書けるのは「養育費は算定表で決まる」という一般論まで。「実際にいくらになったか」に答えられるのは事例だけです。
しかし獲得額をそのまま出すと規程に触れる──この記事の核心
ここで壁にぶつかります。訪問者が最も知りたい情報を、最も知りたい形では出せません。弁護士の業務広告に関する規程は誤導・誇大な広告を禁じ、指針では依頼者に過度な期待を抱かせる表示も問題とされます。「財産分与1,400万円獲得!」が危ういのは、訪問者に「自分も同じくらい取れる」という期待を生むからです。額は共有財産の総額・婚姻期間・寄与度の主張で決まり、再現性はありません。期待と実態が構造的にずれる——これが問題の本体です。
見落とされやすいのが選択的掲載です。うまくいった事例だけを並べれば、個々の記述が事実でも全体として誤導になります。難航した事案も混ぜたほうが信頼は高くなります。
緊張の解き方──幅・前提・個別性の3点セット
では金額を書かなければよいのか。それでは「いくら受け取れるか知りたい」859KWの需要に答えられません。解は「書かない」ではなく「書き方を変える」です。
①幅を持たせる。「約1,400万円を獲得」ではなく「共有財産の総額約2,800万円の2分の1にあたる額で合意」と書けば、金額は成果ではなく計算の帰結として読まれます。養育費なら算定表という公的基準を経由させる。訪問者は自分の事案に当てはめられ、「この額が保証される」という読み方も防げます。
②前提を併記する。 婚姻期間・共有財産の総額・証拠の有無があれば、訪問者は自分との条件差を自分で判断します。前提のある金額は「参考値」に、ない金額は「約束」に見えます。
③個別性を明示する。 免責3点セットを全事例に置き、金額を見出しやカードタイトルの主語にしない。主語は争点と対応内容です。
| 避けたい表現 | 言い換え | なぜ問題か |
|---|---|---|
| 財産分与1,400万円を獲得! | 未申告の資産を確認し、共有財産の2分の1にあたる額で合意した事例 | 金額が主語になると、その額が標準的な成果だという期待を生む |
| 養育費は必ず増額できます | 事情の変更が認められれば増額される場合があります | 結果の保証にあたる。可否は立証次第 |
| 慰謝料の満額回収に成功 | 請求額に近い水準で和解が成立した事例(証拠が揃っていた事案) | 「満額」「成功」は成果の断定。前提も読めない |
| 相場の2倍を勝ち取った実績多数 | 相場を上回る水準で解決した事案もありますが、結果は事案によります | 誇大な印象を与え、選択的掲載の疑いも生む |
| 解決率98% | 掲載しない。または母数・定義・根拠を明示する | 母数と定義のない比率は誤導になりやすい |
「進め方・手続きを知りたい」と「自分のケースについて知りたい」にも事例が効く
第2勢力は「進め方・手続きを知りたい」で679KW・22.8%。「離婚 届 書き方」29,600、「離婚 手続き」3,600、そしてこの意図がとりわけ強い「協議 離婚 流れ」880が並び、検索者が決意済みで進め方を探していることが分かります。ここに応えるのが「弁護士の対応」段と結果段の期間です。「交渉開始から約4か月」は、手続きを進めようとする訪問者にとって金額と同じ価値を持ちます。
第3勢力は「自分のケースについて知りたい」で561KW・18.8%(この関心が強くうかがえるものまで広く数えれば760KW・25.5%)。「養育費 未払い 公正証書あり」780、「離婚 財産分与 家 ローンあり」320。検索者は固有の条件を添えて検索するため、事例タイトルに状況条件を含めると届きやすくなります。
「どこに頼むか選びたい」は110KW・3.7%と少数ですが中身が示唆的です。「不倫に強い弁護士」320、「養育費に強い弁護士」140、「親権 強い弁護士」140と争点別の専門性で探されています。「強い」と自称することは規程上できませんが、事例の分布そのものが証明になります。なお検索者の段階は「相談を考え始めている」が72%、「今すぐ相談先を探している」が18%、「相談はまだ先」が10%です。多数派は情報収集中で、事例は即時CTAの直前ではなく段階的な導線に置きます。
総論07(信頼性)と総論03(守秘義務)で裏付ける
総論07で、信頼性は一次情報と実体験で担保されると学びました。E-E-A-Tのうち事例が示せるのはE(Experience=経験)です。業務紹介が「知識がある」(Expertise)を示すのに対し、事例は「実際に扱っている」を示します。評価の厳しい法律分野では両方が要ります。
| 観点 | 業務紹介ページ | 解決事例ページ |
|---|---|---|
| 答える問い | 「頼むと何をしてくれるか」 | 「実際の事案でどう進み、どうなったか」 |
| 主に応える訪問者の関心 | 制度の意味を知りたい/進め方・手続きを知りたい/できるかどうかの条件を知りたい | いくら受け取れるか知りたい/実際の進み方を知りたい/自分のケースについて知りたい |
| 掲載内容の性格 | 一般的な説明・相場の解説 | 個別事案の記録(匿名化・前提条件つき) |
| 検索での役割 | 争点名・手続き名の主要KW | 状況特定型・金額型のロングテール |
| E-E-A-Tへの寄与 | 専門性(Expertise) | 経験(Experience) |
守秘義務については、総論03のとおり弁護士法23条・弁護士職務基本規程23条が依頼者情報を保護しますが、匿名化により依頼者と結びつかなくなった情報は一般的な知識・経験の提示として扱えます。判断基準は「本人が特定されうるか」の一点です。
注意すべきは、単独では特定できない情報が組み合わせで特定可能になることです。年代・職業・婚姻期間・子の人数・地域・争点を全部書けば、狭い地域では絞り込めます。地域は書かない、勤務先は業種にとどめる、婚姻期間は結果の前提に必要な範囲に限る、という削り方をします。イニシャル表記も避けます。実名でなくとも他の属性と組み合わされば識別性は上がるからです。掲載前に依頼者へ確認し、迷う事案は所属弁護士会に相談します。
サンプルサイトで見る実例(How it looks)
以上の原則がどう表現されるかを、サンプルサイト(sample-rikon.kijiraku.com/cases/)で確認します。
事例一覧(/cases/)── 属性タグと結果要約でスキャンさせる
機能: 一覧には3件のカードが並び、「40代/女性/主婦」のような属性タグ、タイトル、結果の要約、詳細リンクで構成されています。属性タグが「自分ごと化」のトリガーです。検索から直接来た訪問者には扱う争点の全体像を、業務紹介から流入した訪問者には「自分の争点の事例はあるか」の確認を与える——この組み合わせが両方の動線を成立させています。
自事務所への適用ポイント: カードタイトルの主語を金額にしないこと。「1,400万円を獲得した事例」ではなく「財産分与で適正額を獲得した事例」のように争点と結果の性質で書き、金額は要約本文に前提とともに置きます。
財産分与の事例(/cases/case-1/)── 「約1,400万円」が成立している理由
婚姻期間15年の専業主婦の事例です。相手方は「貯金はほとんどない」と主張し、開示財産は預貯金約800万円と自宅不動産(約1,200万円)の計約2,000万円。弁護士照会で調査した結果、申告のなかった証券口座(約700万円)が判明して総額約2,800万円に。寄与を2分の1と主張して交渉し、約1,400万円で合意。約4か月での解決です。
なぜこの書き方が成立するか: 1,400万円が単独で立っていない点です。開示約2,000万円→調査で約700万円を発見→総額約2,800万円→2分の1で約1,400万円という算定の連鎖が全部書かれている。訪問者はこれを「頼めばもらえる額」ではなく「共有財産が2,800万円あったから半分がこの額になった」という計算として読みます。①幅と②前提が同時に効く構造です。
自事務所への適用ポイント: 裏返せば算定の過程を説明できない事例では金額を書かないという判断になります。「交渉の結果〇〇万円で和解した」としか書けない事案は、割合表記に落とすか、対応内容と期間だけを書く方が安全です。またこの事例で最も価値があるのは金額ではなく「開示された財産だけが対象とは限らない」という弁護士コメントで、相談の動機は多くの場合ここから生まれます。この部分を検索意図に沿った構成へ整える作業は、キジラクの記事作成機能でも支援できます。
養育費増額の事例(/cases/case-3/)── 算定表という客観基準と対向視点
5年前に月4万円と取り決めた養育費について、子の中学進学に伴う教育費の増加、本人の収入減、相手方の収入増を理由に増額を求めた事例です。算定表による試算を経て調停を申し立て、月6万5,000円への増額が認められました。「養育費 相場」121,500・「養育費 算定表」66,200という「いくら受け取れるか知りたい」需要の最上位に直接対応します。
なぜこの金額表示が成立するか: 算定表という公的基準を経由している点です。「月6万5,000円になりました」だけなら期待値の誘導になりかねませんが、「算定表で試算した結果この水準になった」と書けば、金額は交渉力の成果ではなく基準に照らした適正額になります。訪問者は自分と相手方の収入を当てはめて見当をつけられ、事務所は成果を保証せずに具体性を出せます。
自事務所への適用ポイント: この事例の相談者は40代男性、子を監護する父親です。請求者側=母親という前提でサイトを作るとこの層を取りこぼします。なお同じ養育費でも減額を求める側では焦点が「どこまで下げられたか」と「下げなかった場合のリスク」に変わります。対向視点の設計は解決事例ページの作り方(被請求者側)で解説しています。双方の依頼を受ける事務所は立場を明記し、混在させないことが重要です。
DV保護命令の事例(/cases/case-2/)── 免責3点セットと匿名化の徹底
診断書・写真・メッセージ記録を証拠に保護命令を申し立て、約2週間で接近禁止命令と電話等禁止命令が発令(各6か月)。その後の調停で親権・養育費月7万円・財産分与150万円を取得し、約5か月で成立した事例です。この「約2週間」が、行動をためらう相談を検討する人の判断材料になります。
免責の扱い: 3件とも末尾に「ご本人様のご了承を得たうえで掲載」「事案により結果は異なります。あくまで参考例としてご覧ください」「特定を避けるため、一部内容を編集」の3行が置かれています。これがサイト全体の③個別性の明示を担い、各事例が金額を書けるのはこの定型があるからです。
自事務所への適用ポイント: DV事案の匿名化は最も慎重に行います。避難先の地域や施設の種類、支援措置の具体的な運用など、安全に直結する情報は書きません。証拠の種類は訪問者に有益ですが、いつどこで取得したかまでは不要です。
なお、サンプルサイトにも改善余地があります。3件とも相談者をイニシャル+「さん」で表記していますが、前章のとおり「ご相談者」に統一する方が安全です。模範例をそのまま写さず、自事務所の地域規模や依頼者層に合わせて匿名化の水準を上げる判断を忘れないでください。
実践チェックリスト
- □ 解決事例が3件以上あり、争点(財産分与・親権・養育費等)が分散しているか
- □ 各事例が「相談の背景→争点→対応→結果→前提条件→弁護士コメント」の6段構成か
- □ 金額を単独で示さず、割合・算定表・レンジなど根拠とセットで書いているか
- □ その結果が出た前提条件(婚姻期間・共有財産の総額・証拠の有無)を独立して明記しているか
- □ 全事例の末尾に免責3点(本人の了承/結果は事案による/特定回避の編集)を置いているか
- □ 氏名・イニシャル・地域・勤務先など、組み合わせで特定されうる要素を落としているか
- □ 「必ず取れます」「満額獲得」「解決率〇%」など成果保証と受け取られる表現がないか
- □ 事例タイトルの主語が、金額ではなく争点と対応内容になっているか
請求者側の事例ページは、訪問者の最大ニーズ「いくら受け取れるか知りたい」(859KW)と広告規程の制約が正面からぶつかる場所です。その緊張は「金額を書かない」ではなく、幅・前提・個別性の3点セットで解けます。次は料金ページの設計です。請求者側は自分が払う費用への関心(114KW・3.8%)が小さく回収額への関心が突出するため、料金は費用そのものではなく回収額との対比で設計します(→ 料金ページの設計)。
監修: 花井 直哉(キジラク運営)