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小規模事務所のKPI設計──追うべき数字を3〜5個に絞る

結論・要点

集客を改善するには「何がうまくいっていて、何が足りないか」を数字で把握する必要があります。しかし、KPIを10個も20個も追う余裕は小規模事務所にはありません。本記事では、前の記事で学んだ集客ファネルの4段階から、追うべきKPIを3〜5個に絞る方法と、現実的な目標値の設定方法を解説します。月1回・30分の確認で改善サイクルを回せる、小規模事務所向けのKPI設計です。

目次

  1. KPIとは何か──「測る」ことで初めて改善できる
  2. ファネルの各段階とKPIの対応関係
  3. 小規模事務所が追うべきKPIは3〜5個でいい
  4. 目標値の決め方──大きすぎず小さすぎない現実的な設定
  5. モデルケース──KPI設計をやってみる

KPIとは何か──「測る」ことで初めて改善できる

なぜ「感覚」では集客が改善しないのか

「今月は相談が多かった」「先月はなぜか暇だった」──小規模法律事務所では、集客の手応えをこうした感覚で判断しているケースが少なくありません。しかし「なぜ多かったのか」「何が効いたのか」が分からなければ、うまくいった月を再現することも、うまくいかなかった月を改善することもできません。

たとえば、ある月に新規相談が増えたとします。紹介が重なっただけなのか、自社サイトからの問い合わせが増えたのか、ポータルサイトの掲載順位が上がったのか。原因が特定できなければ「たまたま良かった月」で終わってしまいます。集客を安定させるには、感覚ではなく数字で状況を把握し、改善すべきポイントを特定する仕組みが必要です。

KPIとKGIの違い──目標と指標を分ける

ここで登場するのが、KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)とKGI(Key Goal Indicator=重要目標達成指標)という考え方です。難しそうに見えますが、役割はシンプルです。

KGIは最終的なゴールを示す数字です。法律事務所の集客でいえば「自社サイト経由の新規受任を月3件にする」のように、最終的に達成したい成果を1つ設定します。

KPIは、KGIに至る過程で「うまくいっているか」を確認するための数字です。月間アクセス数、問い合わせ件数、検索表示回数など、集客の各段階で追いかける指標がKPIにあたります。

KPIを設定する目的は「改善すべきポイントを数字で特定すること」です。「集客ファネル」の記事で学んだとおり、集客には認知・流入・問い合わせ・受任の4段階があります。どの段階に問題があるかを数字で裏づけるのがKPIの役割です。「アクセスは十分あるのに問い合わせが来ない」と分かれば、サイトの導線や問い合わせフォームの改善に集中できます。逆に「そもそもアクセスが少ない」なら、記事の追加や検索対策が優先です。感覚ではなく数字で判断するからこそ、限られた時間を正しい改善に使えるようになります。

ファネルの各段階とKPIの対応関係

認知のKPI──検索表示回数と検索順位

認知の段階では「自事務所のサイトが、どれだけ検索結果に表示されているか」を測ります。主な指標は2つです。

検索表示回数(インプレッション)は、自事務所のページが検索結果に表示された回数です。Search Consoleで確認できます。この数字が少なければ、そもそも検索結果に登場できていないことを意味します。

検索順位は、対策しているキーワードごとの掲載位置です。同じくSearch Consoleで確認します。法律事務所の場合、「地域名 相続 弁護士」のように地域と分野を掛け合わせたキーワードで順位を追うことが重要です。全国規模のキーワードではなく、自事務所の商圏に関連するキーワードに絞って確認しましょう。

流入のKPI──月間アクセス数とクリック率

流入の段階では「検索結果を見た人が、実際にサイトに来ているか」を測ります。

月間アクセス数(ページビュー・ユニークユーザー数)は、サイトに訪れた人の数です。GA4(Googleアナリティクス4)で確認します。法律事務所のサイトでは、トップページだけでなく、各分野の解説ページや事例紹介ページごとのアクセス数を見ることで、どの分野に関心が集まっているかも把握できます。

クリック率(CTR=Click Through Rate)は、検索結果に表示された回数のうち、実際にクリックされた割合です。Search Consoleで確認します。表示回数は多いのにクリック率が低い場合、検索結果に表示されるタイトルや説明文(メタディスクリプション)の改善が必要です。

問い合わせのKPI──問い合わせ率と問い合わせ件数

問い合わせの段階では「サイトに来た人が、実際に連絡をくれているか」を測ります。

問い合わせ率(CVR=コンバージョン率)は、アクセス数に対する問い合わせの割合です。GA4でフォーム送信をイベントとして設定すれば算出できます。法律事務所では電話での問い合わせも多いため、電話タップ数もあわせて計測することが大切です。具体的な設定方法は「計測して改善する」の記事群で詳しく解説しています。

問い合わせ件数は、月間の電話・フォームによる問い合わせの合計です。GA4の数値と手元の記録を突き合わせて確認します。

受任のKPI──受任率と受任件数

受任の段階では「問い合わせから実際に依頼に至っているか」を測ります。

受任率は、問い合わせ件数に対して実際に受任した割合です。これはGA4では測れないため、事務所内での手集計が必要です。相談シートや案件管理表に「流入経路」の項目を設けておくと、Web経由の受任率が把握しやすくなります。

受任件数は、月間の新規受任数です。こちらも手集計になります。Web経由に限定して追うことで、サイト改善の効果を正確に測定できます。

ファネル段階 KPI名 意味 確認方法 法律事務所の注意点
認知 検索表示回数 検索結果に表示された回数 Search Console 地域×分野のキーワードに絞って確認する
認知 検索順位 対策キーワードの掲載順位 Search Console 全国キーワードではなく商圏内のキーワードで追う
流入 月間アクセス数 サイトに訪れた人の数 GA4 分野別ページごとのアクセスも確認する
流入 クリック率(CTR) 表示に対するクリックの割合 Search Console 低い場合はタイトル・説明文の見直しを検討する
問い合わせ 問い合わせ率(CVR) アクセスに対する問い合わせの割合 GA4+手集計 電話タップ数もあわせて計測する
問い合わせ 問い合わせ件数 月間の電話・フォーム合計 GA4+手集計 Web経由とそれ以外を区別して記録する
受任 受任率 問い合わせに対する受任の割合 手集計 流入経路を相談シートに記録しておく
受任 受任件数 月間の新規受任数 手集計 Web経由に限定して追うと改善効果が見えやすい

小規模事務所が追うべきKPIは3〜5個でいい

KPIが多すぎると続かない──「月1回・30分」で確認できる量にする

前のセクションでKPI候補を8つ挙げましたが、小規模事務所がすべてを追う必要はありません。弁護士1〜3名の事務所では、集客の分析に割ける時間は限られています。月に1回、30分程度の確認で回せる数に絞ることが、継続の鍵です。

KPIを10個も設定すると、確認作業だけで1〜2時間かかります。忙しい月に「今月はいいか」と飛ばしてしまい、そのまま確認自体をやめてしまう──これが最もよくある失敗パターンです。追う数字は3〜5個。これなら月1回・30分で確認でき、無理なく続けられます。

フェーズ別のKPI選定──今の段階に合った指標を選ぶ

どのKPIを選ぶかは、事務所の集客フェーズによって変わります。すべてのKPIを最初から追う必要はなく、段階に合った指標から始めるのが現実的です。

フェーズ 期間目安 追うKPI 理由
始めたばかり 開始〜3ヶ月 月間アクセス数・問い合わせ件数 まず「人が来ているか」「連絡があるか」の全体像をつかむ
記事を蓄積中 3〜6ヶ月目 上記+検索表示回数・クリック率 記事が検索結果に出始める時期。表示と流入の関係を把握する
安定期 6ヶ月以降 上記+問い合わせ率・受任率 アクセスが安定したら「質」の指標で改善点を絞る

始めたばかりの時期に「問い合わせ率」を追っても、アクセス数が少なすぎて数字がブレます。月間アクセス数が300PV程度の段階では、1件の問い合わせで率が大きく変動するため、傾向を読み取れません。まずはアクセス数と問い合わせ件数の2つに集中し、3ヶ月後にSearch Consoleのデータが蓄積されたタイミングで検索系の指標を追加する、という流れが無理のない進め方です。

「まだ測れない」は問題ない──段階的に増やす考え方

Search Consoleをまだ設置していない場合、検索表示回数やクリック率は取得できません。それでも問題ありません。まずSearch Consoleを設置し、3ヶ月分のデータが溜まるのを待てばよいだけです。GA4も同様で、設置した時点からデータの蓄積が始まります。具体的な設定手順は「計測して改善する」の記事群で解説しています。

重要なのは「今すぐすべてを完璧に測ろう」とせず、段階的にKPIを増やす姿勢です。最初は2個、3ヶ月後に4個、6ヶ月後に5個と増やしていけば、確認作業に慣れながらKPIの精度も上がっていきます。初期に全指標を追おうとして設定が面倒になり、結局何も測らなくなるよりも、2個だけ確実に追い続ける方がはるかに価値があります。

目標値の決め方──大きすぎず小さすぎない現実的な設定

目標値の3つの決め方(現状比・業界参考値・逆算法)

KPIを選んだら、次は目標値の設定です。目標が大きすぎると達成感が得られず挫折し、小さすぎると意味のある改善になりません。現実的な目標値を設定するには、3つの方法があります。

方法 やり方 メリット 注意点
現状比 現状値の1.5〜2倍を3ヶ月後の目標にする 自事務所のデータに基づくため現実的 現状値がゼロに近い場合は使えない
業界参考値 法律事務所サイトの一般的な数値を目安にする 自事務所にデータがなくても設定できる 規模・分野・地域で差が大きいため、あくまで目安
逆算法 KGI(月の受任目標)から逆算して各KPIの必要値を求める KGIとKPIの整合が取れる 問い合わせ率・受任率の仮定が必要

おすすめは、逆算法をベースにしつつ、現状比で「3ヶ月でどこまで現実的に伸ばせるか」を調整する方法です。たとえば、現在月300PVの事務所が逆算で600PVが必要と分かった場合、3ヶ月の目標を600PVに設定するのは現状比2倍で無理がありません。

法律事務所の参考値──アクセス数・問い合わせ率・受任率の目安

法律事務所サイトの参考値として、以下の範囲を目安にしてください。

  • 問い合わせ率(CVR): アクセス数に対して0.5〜2%程度(読者プロフィールより)
  • 受任率: 問い合わせに対して30〜60%程度(読者プロフィールより)
  • 月間アクセス数: 小規模事務所の開設初期は月300PV前後が多い(読者プロフィールより)

これらはあくまで参考値であり、分野・地域・サイトの状態によって大きく異なります。自事務所のデータが蓄積されたら、実績に基づいて目標を更新していくことが重要です。

分野で変わるKPIの特徴──相続と交通事故では数字が違う

法律事務所の集客では、取扱分野によってKPIの数字の傾向が異なります。目標設定の際は、この違いを考慮に入れてください。

分野 問い合わせ率の傾向 受任率の傾向 理由
交通事故 やや高め やや高め 事故直後の緊急性が高く、すぐに相談したい人が多い
相続 やや低め 高め じっくり検討してから問い合わせる傾向があり、信頼した上で依頼に至る
債務整理 中程度 分かれる 秘匿性が高くフォーム経由が多い。費用面の不安が受任判断に影響する
離婚 中程度 中程度 感情面の整理と並行して検討するため、相談から受任まで時間がかかることがある

たとえば相続を看板分野にしている事務所では、問い合わせ率が低めでも受任率が高い傾向にあります。問い合わせ率だけを見て「うまくいっていない」と判断するのではなく、受任率とセットで評価することが大切です。

モデルケース──KPI設計をやってみる

ここからは、「集客ファネル」の記事と同じモデルケース(弁護士2名・開業5年・人口20万の都市・相続と離婚が中心)を使い、実際にKPIを設計してみます。

STEP1: KGI(最終目標)を決める

まず最終目標であるKGIを1つ設定します。このモデルケースでは、現状の自社サイト経由の新規受任がほぼ0件です。最終的には月3〜5件を目指しますが、いきなり高い目標を掲げると現実感がなくなります。

そこで、12ヶ月後の中間目標として次のKGIを設定します。

KGI: 12ヶ月後に自社サイト経由の新規受任を月2件にする

月2件は、弁護士2名の事務所にとって「確実に手応えを感じられる」規模であり、24ヶ月後に月3〜5件へ拡大するための足がかりになります。

STEP2: ファネルから3〜5個のKPIを選ぶ

この事務所は自社サイトでの集客を「始めたばかり」の段階です。前のセクションで整理したフェーズ別の考え方に沿い、最初に追うKPIは3個に絞ります。

  • 月間アクセス数: 現状約300PV。サイトに人が来ているかの基本指標
  • 問い合わせ件数: 現状月0〜1件。集客の成果を直接示す指標
  • 検索表示回数: 現状未計測。Search Consoleを設置して計測を開始する

検索表示回数はすぐにデータが出ませんが、Search Consoleを設置しておけば3ヶ月後にはデータが蓄積されます。3ヶ月目以降にクリック率を追加し、6ヶ月目以降に問い合わせ率と受任率を加える計画です。

STEP3: 各KPIに目標値を設定する

KGI「月2件の受任」から逆算して、各KPIの目標値を求めます。

項目 数値 算出根拠
月間受任件数(KGI) 2件 12ヶ月後の目標として設定
受任率 50% 相続・離婚分野の参考値(読者プロフィールより)
必要な月間問い合わせ件数 4件 2件 ÷ 50% = 4件
問い合わせ率(CVR) 1% 法律事務所サイトの参考値(読者プロフィールより)
必要な月間アクセス数 400PV 4件 ÷ 1% = 400PV

逆算すると月400PVが最低ラインです。しかし、現状の300PVから400PVへの増加だけでは余裕がありません。記事を追加していけばアクセスは段階的に伸びるため、12ヶ月後の目標を1,000PVに設定します。1,000PVあれば、問い合わせ率1%で月10件の問い合わせが期待でき、受任率50%で月5件。KGIの月2件を十分にクリアできる水準です。

なお、アクセス数や問い合わせ率の現状把握には、GA4やSearch Consoleの設定が必要です。キジラクのサイト診断機能(※WordPressのみ対応)を使えば、自社サイトの現状スコアを手軽に確認することもできます(キジラク調べ・抽出日: 2026-07-14)。

KPIシートのテンプレート

設定したKPIは一覧にまとめておくと、毎月の確認がスムーズです。以下のテンプレートを参考に、自事務所の数値を書き込んでみてください。

KPI名 現状値 3ヶ月目標 6ヶ月目標 12ヶ月目標 確認方法
月間アクセス数 300PV 500PV 600PV 1,000PV GA4
問い合わせ件数 0〜1件 1件 3件 4件 GA4+手集計
検索表示回数 未計測 計測開始 現状値把握 前月比増を維持 Search Console
クリック率(CTR) 未計測 計測開始 2.6%以上 Search Console
受任件数(KGI) 0件 1件 2件 手集計

3ヶ月目の段階ではSearch Console関連のKPIはまだデータ蓄積中のため、目標を設定せず「計測開始」としています。データが揃った6ヶ月目から本格的に追い始める形です。このように、KPIシートは一度作って終わりではなく、3ヶ月ごとに見直して更新していくものです。

✓ 実践チェックリスト

  • □ 自事務所のKGI(最終目標)を1つ設定した
  • □ ファネルの各段階から追うKPIを3〜5個選んだ
  • □ 各KPIの現状値を可能な範囲で確認した
  • □ 各KPIに3ヶ月後の目標値を設定した
  • □ KPIの確認方法(GA4・Search Console・手集計)を把握した

この記事でKPIを設計し、何を測るかが決まりました。では、複数あるKPIの中で「どこから改善に手をつけるべきか」は、どう判断すればよいのでしょうか。次の記事「改善の優先順位と計測の考え方」では、ファネルのどの段階にボトルネックがあるかを特定し、最小限の手間で改善サイクルを回す方法を解説します。

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