弁護士が集客の施策を1つに絞る4つの条件
結論・要点
どれが最も効くかは施策の名前では決まりません。同じ名前でも、事務所によって要る作業が違うためです。分かれ目になるのは、相談が来てほしい範囲・受けたい分野・自分が毎週使える時間の形・すでに手元にあるものという自分の側の4つです。この4つに候補を当てると、候補は「今選ぶ」「範囲を狭めれば選べる」「今回は外す」に分かれます。1つに絞るとは、残りを捨てることではなく、同時に持つのを1つにするという意味です。
目次
- 候補は並んでいるのに手が足りないとき──どれが最も効くかは施策の名前では決まらない
- 判定を分けているのは、自分の側の4つの条件
- 4つの条件を自分の事務所で書き出す
- 候補を4つの条件に当てて振り分ける
- 【モデルケース解説】相続と離婚を扱う事務所が、候補5つを3つに振り分ける
- 1つに絞りきれない場合と、選んだ後に条件が変わった場合
- まとめ──最も効く1つは、自分の側の4つの条件に候補を当てれば絞れる
候補は並んでいるのに手が足りないとき──どれが最も効くかは施策の名前では決まらない
読む記事ごとに勧めるものが違う
ホームページを直す、事務所のページに記事を足す、Googleマップの事務所情報を整える、ポータルサイトに載せる、SNSを始める。どれも勧められますが、全部に回せる人手はありません。事務員は電話と期日の管理で手一杯で、ウェブに回せる人はいない。結局は自分でやるしかないが、途中で止まりそうで踏み出せない。どれが一番効くのかを調べても、読む記事ごとに勧めるものが違う。
弁護士1〜3名の事務所では、ここで施策の選択が止まりやすくなります。
先に断っておくこと
どれが最も効くかを、こちらから名指しすることはできません。施策ごとの効果の大きさを比べた数字を持っていないからです。持っていない数字で順番を付ければ、それは根拠ではなく好みになります。
ただ、名指しはできなくても、候補を減らすことはできます。減らす材料は施策の側ではなく、自分の事務所の側にあります。相談が来てほしい範囲、受けたい分野、自分が毎週使える時間の形、すでに手元にあるもの。この4つに候補を当てると、いまの事務所で持てるものと持てないものが分かれます。
前のページで、相談が届くまでの全体像を段階に分けて見ました。このページでは、その全体像の中でいま自分が持てる1つを決めるところまでを扱います。着手の手順には入りません。順位の付け方は次のページで扱います。
判定を分けているのは、自分の側の4つの条件
同じ名前の施策でも、事務所によって要る作業が違う
「ホームページを直す」は、すでにサイトがある事務所では直す範囲を決める作業ですが、サイトがない事務所では作るところからの作業です。「記事を足す」も、相談で繰り返し聞かれる質問を書き留めてある事務所と、何も残っていない事務所とでは、書き始めるまでの距離が違います。受けたい分野を1つに決めている事務所と、決めていない事務所とでも、書く範囲の広さが変わります。
つまり、施策の名前は判定の材料になりません。名前が同じでも中身が違うからです。
判定を分けている4つ
- 相談が来てほしい範囲。 近隣の市区からか、都道府県くらいの広さか、地域を問わないか
- 受けたい分野。 1つに決めているか、決めていないか
- 自分が毎週使える時間の形。 量ではなく形です。まとまった時間が月に何回取れるか、細切れの時間が週に何回取れるか、どちらも取れないか
- すでに手元にあるもの。 サイト、原稿の元になる記録、事務所の写真、アカウント
候補は3つに分かれる
| 判定 | どういう場合か | その候補をどう扱うか |
|---|---|---|
| 今選ぶ | 4つの条件のすべてに当てはまる | 今回持つ1つにする |
| 範囲を狭めれば選べる | どれかに当たらないが、分野を1つに絞る・範囲を狭める・作業の一部を外に出す、のどれかで当たるようになる | 狭めた形に直してから当て直す |
| 今回は外す | 狭めても当たらない | 候補から外し、条件が動いたときに戻す |
4つのうち1つでも当たらないものは、いまの事務所では続きにくくなります。これは、ウェブ集客を支援する側から見た判断です。効きの大小の話ではありません。効きが大きい候補であっても、毎週の時間が取れなければ着手した週で止まりますし、止まれば、効きが大きいかどうかは事務所にとって関係のない話になります。
「今回は外す」は、その施策が良くないという意味ではない
いまの4つの条件では持てない、というだけのことです。条件は動きます。分野を決めた、サイトができた、手が空く時期が来た。そのときに、外した候補をもう一度同じ表に当て直せます。だから、外した理由を一行でいいので残しておいてください。理由が残っていれば、次に当て直すときに条件のどれを見ればいいかが分かります。
そして、1つに絞るというのは、残りを捨てるという意味ではありません。同時に持つのを1つにする、という意味です。手が1人分しかない事務所で2つを同時に持つと、どちらも中途になり、止まったときにどちらが原因かも分かりません。
4つの条件を自分の事務所で書き出す
4つの条件は、頭の中で思い浮かべるのではなく、書き出してください。書き出すと、条件どうしが噛み合っていない箇所が見えます。
条件1 相談が来てほしい範囲
近隣の市区からか、都道府県くらいの広さか、地域を問わないか。いま来ている相談の来所のしかたが手がかりになります。来所して打ち合わせをする前提で進めている相談が多いのか、電話とオンラインで完結している相談があるのか。どちらが良いという話ではなく、事務所として今どちらで動いているかを書きます。
範囲を広く書きたくなったときは、その範囲から相談が来たときに実際に受けられるかを確かめてください。受けられない範囲まで広げて書くと、条件1が判定の役に立たなくなります。範囲は、後から広げられます。
条件2 受けたい分野
1つに決めているか、決めていないかを書きます。決めていない場合は、ここを先に決めてください。分野を決めないまま候補に当てると、どの候補も対象の範囲が広くなり、条件3の時間を多く使います。分野を決めるのは施策の話ではなく、施策の手前の話です。
決めきれない場合は、いま受けている相談のうち、もう一度受けたいと思う相談がどの分野かを、直近1年分から拾ってください。
条件3 自分が毎週使える時間の形
ここが4つの中で一番ずれやすいところです。ずれるのは、取れるはずの時間を書いてしまうからです。書くのは、実際に取れた時間です。
こちらから「週に何時間」といった数を示すことはしません。示せる根拠を持っていないからです。代わりに、しばらくのあいだ、その週に実際に手が空いた時間を書き留めてから、この欄を埋めてください。書き留める長さは、期日が重なった週と、そうでない週の両方が入るところまで取ってください。どちらか一方しか入らない長さで測ると、取れる時間を多く見るか、少なく見るかのどちらかに寄ります。
見るのは合計の量ではなく、次の形です。
- まとまった時間(数時間続けて取れる時間)が、月に何回取れたか
- 細切れの時間(続けては取れないが、合間に何度か取れる時間)が、週に何回取れたか
- どちらも取れなかった週が、書き留めたあいだに何週あったか
3つ目を数えるのは、期日が重なる月があるからです。その週にも止まらない形の候補でなければ、続きません。
条件4 すでに手元にあるもの
サイトがあるか、あるとして自分で文字を直せるか。原稿の元になる記録があるか。事務所や自分の写真があるか。使えるアカウントがあるか。ここは「ある」「ない」で書けば足ります。ゼロから作る候補と、あるものを直す候補とでは、条件3の時間の使い方がまるで違うためです。
| 条件 | 自分の事務所では |
|---|---|
| 1 相談が来てほしい範囲(市区/都道府県/地域を問わない) | |
| 2 受けたい分野(1つに決めている/決めていない) | |
| 3 自分が毎週使える時間の形(まとまった時間/細切れ/どちらも取れない週) | |
| 4 すでに手元にあるもの(サイト/原稿の元になる記録/写真/アカウント) |
条件3に、事務員の時間を足さない
電話と期日の管理で埋まっている時間は、空いている時間ではありません。空いていない時間を条件に書き込むと、判定は通っても、着手した週に止まります。しかも止まったときに、判定が間違っていたのか、続け方が悪かったのかを切り分けられなくなります。いま事務所として動かせる手が1人分なら、1人分で判定してください。人が増えたときに、条件3を書き直して当て直せば足ります。
候補を4つの条件に当てて振り分ける
候補の側は、作業の性質で並べる
- 要る時間の形。 一度まとまって作れば手が空くのか、毎週または毎月続ける前提か
- 手元にあるものを使えるか。 ゼロから作るのか、あるものを直すのか
- 自分でないと書けない部分がどれだけあるか。 ここが、作業を外に出せる範囲を決めます
- 止めたときに残るもの。 続けられなくなったときに、作ったものが残るのか、止めた時点で見えなくなるのか
| 候補 | 要る時間の形 | 手元にあるものを使えるか | 自分でないと書けない部分 | 止めたときに残るもの | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ホームページを直す | 直す範囲を決めるまでにまとまった時間。決めた後は制作の側の作業 | サイトがあれば使える。なければ作るところから | 取扱分野・料金・対応できる範囲など、事務所として決める部分 | 直した内容はページに残る | |
| 事務所のページに記事を足す | 続ける前提の作業。細切れの時間でも進められる部分がある | 相談で繰り返し聞かれる質問の記録があれば使える | 中身が正しいかを見る部分 | 公開したページは残る | |
| Googleマップの事務所情報を整える | 情報を入れるところは一度で終わる部分が多い。写真や案内の追加はそのつど | 事務所の写真・営業時間・電話番号 | 載せる情報が正しいかの確認 | 入れた情報は残る | |
| ポータルサイトに載せる | 申込みと紹介文の用意。載せた後は、届いた問い合わせへの返信が続く | 事務所の紹介文・取扱分野 | 紹介文と、問い合わせへの返信 | 掲載をやめると、掲載の面は残らない | |
| SNSを続ける | 続ける前提の作業。間が空くと更新が止まったことが見える | アカウントがあれば使える | 投稿の中身 | 過去の投稿は残るが、時間とともに流れていく |
この表は、支援している側から見た作業の性質を並べたものです。どれが多く相談を連れてくるかを比べたものではありません。比べるための数字を持っていないので、効きの列は置いていません。
当て方は2段
一段目は、条件1と条件2に結びつく形で出せるかどうかです。決めた範囲と分野に向けて出せる候補かを見ます。範囲を近隣の市区に置いているのに、その候補が地域と結びつかない形でしか出せないなら、そこは噛み合っていません。逆に、地域を問わず分野で選ばれたい事務所が、所在地と強く結びついた形の候補を主役に置いても、同じことが起きます。ここで噛み合わない候補は、「範囲を狭めれば選べる」に回します。
二段目は、条件3と条件4に、その候補の作業の形が合うかどうかです。続ける前提の候補は、細切れの時間が週に何回か取れる事務所でなければ持てません。まとまった時間しか取れないなら、続ける前提の候補は「今回は外す」に寄ります。逆に、まとまった時間が月に何回か取れて、細切れが取れない事務所なら、一度まとまって作れば手が空く候補のほうが形が合います。
分野を決めていない場合は、二段目に進まないでください。決めていない状態のまま当てると、どの候補も対象が広くなり、時間の欄がどれも足りなくなります。全部が「今回は外す」になる場合、その原因が条件2にあることは珍しくありません。
外に出す判断も、この表の列で切る
事務所として決める部分と、中身が正しいかを見る部分は、外に出せません。それ以外は外に出せる可能性があります。どこまで外に出すのが妥当かを費用の側から示すことはしません。費用の相場を持っていないためです。切るのは費用ではなく、自分でないと書けない部分がどれだけ残るか、です。
【モデルケース解説】相続と離婚を扱う事務所が、候補5つを3つに振り分ける
事務所の設定
想定読者にあたる事務所を1つ立てて、条件の書き出しから1つに絞るところまでを通しで見ていきます。地方都市で相続と離婚を扱う、弁護士2名・事務員1名の事務所です。サイトは開業のときに作ってもらったまま、事務員は電話と期日の管理で手一杯です。ウェブの作業を回すのは、実質的に弁護士1名です。
STEP1: 条件3を、測ってから書いた
この事務所では、条件3を先に測ることにしました。取れるはずの時間で書いてしまうと、判定が通っても着手した週に止まるためです。期日が重なった週と、そうでない週の両方が入る長さで、手が空いた時間を書き留めました。
書き留めてみると、まとまった時間は月に数えるほどしか取れず、細切れの時間のほうが取りやすいことが分かりました。どちらも取れなかった週も、期日の集中する時期に出ていました。
STEP2: 条件1・2・4を書き出した
| 条件 | この事務所では | 書き出して見えたこと |
|---|---|---|
| 1 範囲 | 近隣の市区。来所しての面談が前提 | 広く書きたくなったが、遠方から来た相談を実際に受けられるかで戻した |
| 2 分野 | 決めていなかった → 相続に決めた | 直近1年で繰り返し来ていて、もう一度受けたい分野から拾った |
| 3 時間の形 | 細切れが取りやすい。まとまった時間は少ない。取れない週もある | 実測してから書いた |
| 4 手元にあるもの | サイトあり(文字は自分で直せない)。写真あり。相談で繰り返し聞かれることの記録なし | 記録がないことが、この段で分かった |
STEP3: 候補を当てて振り分けた
| 候補 | 判定 | そう判定した理由 |
|---|---|---|
| Googleマップの事務所情報を整える | 今選ぶ | 範囲が近隣の市区と噛み合う。情報を入れるところは一度で終わり、写真も手元にある |
| ホームページを直す | 範囲を狭めれば選べる | 直す範囲を決めるまでにまとまった時間が要る。相続のページに絞れば当たる |
| 事務所のページに記事を足す | 範囲を狭めれば選べる | 細切れでも進むが、原稿の元になる記録がない。相談で聞かれることを書き留めるところから |
| ポータルサイトに載せる | 今回は外す | 届いた問い合わせへの返信が続く。取れない週があると滞る |
| SNSを続ける | 今回は外す | 続ける前提で、間が空くと止まったことが見える。取れない週の頻度と合わない |
STEP4: 「今選ぶ」が1つだったので、それを持つことにした
「今選ぶ」はGoogleマップの1つでした。「範囲を狭めれば選べる」の2つは、次に持つものとして書き留め、「今回は外す」の2つには外した理由を一行ずつ残しました。条件が動いたときに、その行を読み返して当て直せます。
STEP5: 記録を3つ始めた
選ぶことを決めたと同時に、経路別の新規相談の件数、その候補に実際に使った時間、止まった週があったかの3つを記録し始めました。動く前の数を持っていなければ、動いたかどうかが分かりません。
1つに絞りきれない場合と、選んだ後に条件が変わった場合
残り方は4つ
「今選ぶ」が2つ以上残った場合。どちらも持てるということなので、どちらを選んでも判定としては誤りではありません。分けるとすれば、条件3に余りが出るほうから持ってください。取れる時間をちょうど使い切る候補は、期日が重なった月に止まります。もう1つは外すのではなく、「次に持つもの」として書き留めておいてください。
「範囲を狭めれば選べる」だけが残った場合。狭めた形に直してから、もう一度当て直してください。ここで直すのは候補の側ではなく、条件2(分野)と条件1(範囲)の側です。頭の中だけで狭めて当て直すと、狭めた前提を忘れたまま着手することになり、実際の作業は狭める前の広さで進みます。
全部が「今回は外す」になった場合。狭め方が3つあります。分野を1つに絞る、出す範囲を狭める、自分でないと書けない部分だけを残して他を外に出す。この3つを1つずつ当ててから、もう一度表に戻ってください。3つとも当てても全部が外れるなら、条件3の時間が足りていないということになります。その場合に足すべきなのは施策ではなく、時間か手です。
時間がどうしても取れない場合。測る前に決めないでください。条件3を実際に書き留めてみると、思っていたより取れていたか、取れていなかったかのどちらかが分かります。どちらであっても、測った後の判定は、測る前の判定より外れにくくなります。
見直しの合図は、期間ではなく条件が動いたとき
分野を変えた、サイトができた、事務員の手が空くようになった、範囲を広げた。動いたら、その条件だけを書き直して、表に当て直します。
どれくらいの期間で何が見えるかを、こちらから示すことはしません。示せる根拠を持っていないからです。見えるかどうかは、記録が溜まってから、自分の事務所の数字で判断してください。
まとめ──最も効く1つは、自分の側の4つの条件に候補を当てれば絞れる
このページで学んだこと──4つの条件と、3つの判定
どれが最も効くかは、施策の名前では決まりません。同じ名前でも、事務所によって要る作業が違うからです。分かれ目になるのは、相談が来てほしい範囲、受けたい分野、自分が毎週使える時間の形、すでに手元にあるものという自分の側の4つです。この4つに候補を当てると、候補は「今選ぶ」「範囲を狭めれば選べる」「今回は外す」に分かれます。
当て方は2段です。一段目は、決めた範囲と分野に結びつく形で出せるか。二段目は、その候補の作業の形が、自分の時間の形と、手元にあるものに合うか。分野を決めていない場合は、そこを決めるところが先です。条件3には事務員の時間を足さず、動かせる手が1人分なら1人分で判定してください。
1つに絞るとは、残りを捨てることではなく、同時に持つのを1つにするという意味です。外した候補には理由を一行残してください。
次のステップ──着手できる順に並べ替える
次のページ「集客施策の優先順位の決め方」では、持てるようになった候補を、着手できる順に並べ替える方法を扱います。このページで「範囲を狭めれば選べる」「次に持つもの」として書き留めた候補が、そこで順位表に乗ります。
その先では、KPIの設計と測り方に進みます。ここで始めた3つの記録が、その章で扱う数字の土台になります。
✓ 実践チェックリスト
- □ 条件3(毎週使える時間の形)を、取れるはずの時間ではなく実際に取れた時間で書いた
- □ 期日が重なった週と、そうでない週の両方が入る長さで書き留めた
- □ 条件3に事務員の時間を足していない
- □ 条件2(受けたい分野)を1つに決めた(決めていなければ、二段目に進んでいない)
- □ 条件1(範囲)を、実際に受けられる範囲で書いた
- □ 候補を作業の性質4つで並べ、効きの列を置いていない
- □ 当て方を2段で行い、噛み合わない候補を「範囲を狭めれば選べる」に回した
- □ 「今回は外す」の候補に、外した理由を一行ずつ残した
- □ 経路別の相談件数・使った時間・止まった週の3つを記録し始めた