弁護士のホームページ制作で自作と外注を同じ単位で比較する方法
自作の費用は「ゼロ」ではない──時間を金額に換算する考え方
ホームページを自分で作れば、制作会社に払う費用は発生しません。しかし、制作に使った時間は、本来であれば法律業務や営業活動に充てられた時間です。その時間に自分の時間単価を掛けた金額が、自作の実質的な費用になります。
たとえば、制作に合計80時間かかり、自分の時間単価が1万円であれば、自作の実質費用は80万円です。制作費を払っていなくても、80万円分の稼働を制作に振り向けたことになります。
この「時間 × 単価」で出る金額と、外注した場合の費用を並べると、初めて同じ単位で比較できます。自作が得か外注が得かは、この金額の大小だけでは決まりませんが、比較の出発点はここにあります。
ステップ1:自作にかかる時間を洗い出す
自作にかかる時間は「だいたい土日で何回か」ではなく、作業ごとに分けて書き出すと見積もりの精度が上がります。
ホームページの制作に必要な作業は、大きく分けると次のようになります。
| 作業 | 内容の例 |
|---|---|
| 構成の検討 | どのページを作るか、各ページに何を載せるかを決める |
| 原稿の執筆 | プロフィール、取扱分野の説明、事務所の案内、料金の説明などを書く |
| デザイン・レイアウト | テーマの選定、色・フォントの調整、画像の選定と配置 |
| 技術的な構築 | ドメイン取得、サーバー契約、WordPressの設置、テーマの設定、プラグインの導入 |
| フォームの設置 | 問い合わせフォームの作成、送信先の設定、自動返信の設定 |
| スマートフォン対応 | 各ページがスマートフォンで崩れないかの確認と修正 |
| 公開前の確認 | リンク切れ、誤字脱字、表示崩れの点検 |
| 公開後の修正 | 公開してから見つかった不具合の対応 |
見積もりの際に意識しておくとよいのは、経験のない作業ほど時間がかかるという点です。WordPressを触ったことがなければ、技術的な構築だけで相当な時間が必要になります。原稿の執筆は、取扱分野の数だけ時間が増えます。
また、表に出てこない作業もあります。テーマの候補を探す時間、参考にするサイトを眺める時間、途中で方針を変えてやり直す時間は、見積もりには載りにくいですが実際には相当な割合を占めます。合計を出したあと、2〜3割を上乗せしておくと実態に近い数字になりやすいです。
ステップ2:自分の時間単価を出す
時間単価の出し方にはいくつかの方法がありますが、最もシンプルなのは、直近1年の売上を同じ期間の稼働時間で割る方法です。
| 項目 | 自分の数字 |
|---|---|
| 直近1年の売上(税抜) | |
| 直近1年の稼働時間(時間) | |
| 時間単価(売上 ÷ 稼働時間) |
稼働時間は、法律業務に充てた時間だけを入れます。ここで出したいのは「この時間を法律業務に使っていたら、いくら稼げたか」の目安であり、法律業務の時間だけで割ったほうが制作に回す時間の機会費用に近くなります。
タイムチャージで仕事をしている場合は、自分のタイムチャージ単価をそのまま使うこともできます。ただし、タイムチャージの全時間が埋まっているわけではない場合、実際の時間単価はタイムチャージ単価より低くなります。空いている時間があるなら、売上 ÷ 稼働時間のほうが実態を反映します。
開業直後で売上の実績がまだ少ない場合は、勤務時代の年収を稼働時間で割った数字を使うか、目標とする年収から逆算する方法もあります。完璧な数字である必要はなく、桁が合っていれば比較の材料としては使えます。
ステップ3:外注の費用と並べる
自作の実質費用が出たら、外注した場合の費用と同じ表に並べます。
| 項目 | 自作 | 外注 |
|---|---|---|
| 制作会社への支払い | 0円 | (見積もりの金額) |
| 自分の時間の費用 | (ステップ2の金額) | (打ち合わせ・原稿準備の時間 × 時間単価) |
| 合計 |
外注した場合も自分の時間はゼロにはなりません。制作会社との打ち合わせ、原稿の準備、確認と修正の指示、公開前のチェックには時間がかかります。ただし、デザインや技術的な構築を自分でやる必要がないため、自作に比べれば短くなるのが一般的です。
見積もりを取るときに確認しておくと比較の精度が上がる項目があります。
| 確認する項目 | 理由 |
|---|---|
| 原稿の用意はどちらがやるか | 「お客様にてご用意」なら、原稿執筆の時間は自分の側に加算します |
| 写真撮影は含まれるか | 別途なら、撮影の手配と費用を自分の側に加算します |
| ドメイン・サーバーの費用は含まれるか | 別途なら、年間の維持費を合計に加算します |
| 公開後の修正・更新は含まれるか | 含まれなければ、修正のたびに追加費用がかかるか、自分で対応することになります |
| 保守契約の月額と期間 | 初期費用が安くても、月額を年間で積むと合計が変わります |
ステップ4:差額だけでは決まらない──時間の使い道と完成後の運用
ステップ3で合計を並べると差額が出ます。ただし、差額の大小だけで判断すると見落とす要素が3つあります。
1つ目は、自作に使う時間の代わりに何ができるかです。案件が詰まっていて断っている状態なら、制作に時間を取られることの損失は大きくなります。逆に、開業直後で時間に余裕がある場合は、自作に使う時間の機会費用は低くなります。
2つ目は、完成するまでの期間です。自作は本業の合間に進めるため、着手から公開までの期間が長くなりがちです。その間ホームページがない(あるいは古いままの)状態が続きます。集客を急いでいるかどうかで、この期間差の重みが変わります。
3つ目は、公開後の更新と修正です。ホームページは公開して終わりではありません。自作した場合、更新も自分でやることになります。外注した場合は保守契約を結べば更新を任せられますが、追加の費用がかかります。
これらを差額と合わせて考えると、次のような整理ができます。
| 判断の軸 | 自作が向く場合 | 外注が向く場合 |
|---|---|---|
| 案件の込み具合 | 時間に余裕がある | 案件が詰まっている |
| 公開の急ぎ度 | 急いでいない | 早く公開したい |
| 公開後の更新 | 自分で手を入れたい・入れられる | 更新を任せたい |
| 差額 | 自作の実質費用のほうが明らかに安い | 差が小さい、または外注のほうが安い |
まとめ
ホームページを自作すれば制作費はかかりませんが、制作に使う時間を金額に直すと、実質費用はゼロではありません。
作業を分解して合計時間を出し、自分の時間単価を掛ける。その金額と外注の見積もりを同じ表に並べる。差額に加えて、案件の込み具合、公開までの期間、公開後の更新の負担を重ねて読む。この手順で、「自分で作るか外注するか」を数字の入った比較で整理できます。
比較の精度を上げるには、自作の時間を甘く見積もっていないか、外注の見積もりに含まれていないものはないか、比較の期間を揃えているか、の3点を確認しておくとよいです。