問い合わせ導線の設計──「まだ先」の検索者を育てる
結論・要点
生前対策のサイトに来る人は、急いでいません。相談への近さを見ると「相談はまだ先」が48%を占め、ほかの分野の1〜2割に対して突出しています。したがって今すぐ連絡させる導線は空振りします。必要なのは、相談の手前で受け取れるものを用意して離脱を防ぎ、きっかけとなる出来事が訪れたときに思い出してもらう導線です。時期ではなく出来事で分ける──それが生前対策の設計です。
目次
- 問い合わせ導線に必要な要素(What)
- なぜ「育てる導線」が必要か──データと総論で理解する(Why)
- サンプルサイトで見る実例(How it looks)
- 実践チェックリスト
生前対策のサイトに来る人は、急いでいません。相談への近さを見ると「相談はまだ先」が48%を占め、ほかの分野の1〜2割に対して突出しています。したがって今すぐ連絡させる導線は空振りします。必要なのは、相談の手前で受け取れるものを用意して離脱を防ぎ、きっかけとなる出来事が訪れたときに思い出してもらう導線です。時期ではなく出来事で分ける──それが生前対策の設計です。
問い合わせ導線に必要な要素(What)
これまで扱ってきた分野は、離婚も交通事故も問題が起きた後の検索者でした。すでに当事者になっていて、放置すれば不利になるという圧力が検索者の側にあります。生前対策には、その圧力がありません。検索者は元気で、判断能力もあり、明日相談しなくても何も起きません。だからこそ「お問い合わせはこちら」というボタンを各ページに置いただけの導線は、この分野では最も機能しない形になります。
導線を分ける軸は「きっかけとなる出来事」
交通事故のような分野では、事故からの経過時間で導線を分けます。離婚のような分野では、決意の度合いで分けます。生前対策はどちらも使えません。起点となる事件が存在しないため経過時間を測れず、対策をするかしないかは決意というより「そのうち」の話だからです。
代わりに使えるのが、外から訪れるライフイベントです。生前対策の相談は、本人の心境の変化ではなく、親の入院・自身の退職・子の結婚や孫の誕生・事業承継の検討開始・判断能力の低下といった出来事をきっかけに始まります。検索も、この出来事に沿って現れます。導線をこの単位で分けると、まだ相談しない人にも「今の自分に関係のある入口」を見せられます。
相談の手前に、受け取れるものを置く
この分野の導線の中心は、相談ボタンではなく相談しなくても受け取れるものです。目的はその場で受任することではなく、連絡先を得て関係を続け、きっかけが訪れた時点で最初に思い出される事務所になることです。
- セミナー: 会場・オンラインの両方。制度の解説を聞くだけなので、相談より心理的な負担が小さい
- 小冊子・資料: 遺言の種類と選び方、贈与の制度の全体像など。ダウンロードでも郵送でもよい
- チェックリスト: 財産の棚卸し、自筆の遺言の要件確認、家族構成の整理。手を動かすと自分の課題が具体的になる
- メールマガジン・制度改正の通知: 税制や制度は変わります。変わったときに届く連絡は、数年単位の関係を保つのに向いています
- エンディングノート: 法的な効力はありませんが、書き始めた人は遺言との違いを知りたくなります。相談への自然な入口になります
いずれも「今すぐ相談する気はないが、いずれ考えたい」という半数の訪問者に対して、離脱以外の選択肢を渡すためのものです。相談ボタンしかないサイトは、この半数に対して出口が存在しない状態になっています。
きっかけごとに用意する導線
| きっかけとなる出来事 | 検索者の状態 | 検索キーワードの例 | 用意する導線 | CTA文言の方向性 |
|---|---|---|---|---|
| 親の入院・介護の始まり | 本人ではなく子が調べている。口座の管理や施設費用の支払いに直面している | 認知症 口座凍結/認知症 銀行口座/家族 信託/家族 信託 手続き | 家族向けの入口ページ+電話。判断能力があるうちにしかできないことの説明 | 「ご家族の方からのご相談も承ります」 |
| 退職・定年 | 資産の全体像を初めて把握し、遺言や贈与を漠然と考え始めた | 遺言 書 書き方/公正 証書 遺言/生前 贈与 | 小冊子・チェックリスト・セミナー。相談ではなく受け取りを第一歩にする | 「まず全体像を確かめたい方へ」 |
| 子の結婚・孫の誕生・住宅取得 | 特定の相手に特定の資金を渡したい。制度が使えるか調べている | 孫 に 贈与/生前 贈与 不動産/生前 贈与 非課税/相続時精算課税 制度 | 制度解説の記事から相談へ直接接続してよい層。個別性が高い | 「ご家族の状況に当てはめてご説明します」 |
| 事業承継の検討開始 | 後継者・株式・自社株評価の問題を抱え、複数の専門家を比べている | 事業 承継/事業 承継 弁護士 | 個別面談。士業連携の体制と担当範囲を先に示す | 「誰が何を担当するかをご説明します」 |
| 判断能力の低下の兆候 | 時間の制約が現実になった段階。この分野で最も相談に近い | 認知症 口座凍結/家族信託 危険/家族信託 後悔 | 即時の電話導線。受付時間の明示が必須 | 「できることが変わる前にご相談ください」 |
5つのうち、多くの事務所サイトが空白にしているのが退職・定年の層です。この時期の検索は相談の形をしておらず、制度の名前を調べるだけの動きに見えます。しかし人数は最も多く、ここで接点を持てた事務所は、数年後に別のきっかけが訪れたときにも最初に思い出されます。
高齢の検索者と、家族が代わりに調べている構造
この分野には、ほかにない2つの前提があります。
- 訪問者の年齢が高い: 文字サイズと行間は本文で16ピクセル以上を目安にし、電話番号は画面上部に常時見える位置へ置きます。フォームの入力が負担になる人が一定数いるため、電話とフォームのどちらでも同じ扱いを受けられることを明記します
- 本人ではなく家族が調べている: 親の対策を子が調べている場合、サイトを読む訪問者と最終的に依頼する人が違います。本人にしか語りかけていないサイトは、この訪問者を取りこぼします
後者は導線の文言に直接効きます。「ご家族の方が代わりにお問い合わせいただけます」「ご本人がご同席できない段階でのご相談も承ります」と書いておくと、代わりに調べている人が連絡してよいのかどうかで迷わずにすみます。フォームに「どなたのことについてのご相談ですか(ご本人/ご家族)」という任意の選択肢を1つ置くだけでも、折り返しの内容を切り替えられます。
お問い合わせページに必要な構成要素
- 冒頭の不安解消コピー: 「まだ具体的に決めていない段階でのご相談も承ります」の一文。相談=依頼という誤解を先に外します
- 複数の連絡手段: 電話(受付時間つき)・フォーム(24時間受付)・来所・オンライン。高齢の訪問者には電話と来所の選択肢を残します
- 相談以外の受け取り口: 資料請求とセミナー申込を、相談フォームと並べて同じページに置きます
- 担当範囲: 相続税の申告と登記を自事務所と提携先のどちらが担当するかと、費用が別建てになるかを書きます
- 最小限のフォーム項目: 必須は連絡先のみ。相談内容は任意
- 返信目安と情報の取り扱い: 「○営業日以内にご返信します」という具体的な日数と、誰が内容を確認するのか、プライバシーポリシーへのリンク
なぜ「育てる導線」が必要か──データと総論で理解する(Why)
「相談はまだ先」が48%──即時CTA一本では届かない
相続・被相続人側のキーワードを分析すると、相談への近さは「相談を考え始めている」が49%、「相談はまだ先」が48%、「今すぐ相談先を探している」が3%でした。検索の目的は、情報を集めたいが90%、比べて選びたいが9%、申し込み・相談の直前が1%です(キジラク調べ・2026年8月時点。月間検索数100以上のキーワードのうち、この分野の語を含むもの1,042件を対象としています)。
さらに、「相談窓口を探すこと自体が目的の検索」に当たるキーワードは7件・0.7%しかありません。離婚(請求する側)の3.1%と比べても4分の1以下です。この分野のサイトに来る人は、弁護士を探しに来ていません。制度の名前を調べに来ています。
ここから導かれる結論ははっきりしています。サイト全体を「まずはご相談ください」で埋めると、半数の訪問者には対応する行動が存在しません。導線の目的を「今日問い合わせてもらうこと」から「連絡先を交換して関係を続けること」に置き換える必要があります。
「制度の意味を知りたい」が24.3%──理解から相談までの距離を段階で埋める
この分野で最も多いのは「進め方・手続きを知りたい」で265件・25.4%、次いで「制度の意味を知りたい」が253件・24.3%です。制度理解のこの比率は、これまで分析してきたどの分野よりも高く、離婚(請求する側)の10.9%の2倍以上です。上位のキーワードは「相続税」(月間135,000)、「贈与 税」(90,500)、「生前 贈与」(81,000)、「相続時精算課税 制度」(33,100)、「家族 信託」(29,600)、「事業 承継」(24,200)と、名前しか知らない制度を調べる検索が並びます。
名前しか知らない人は、そのまま相談には来ません。理解と相談の間には距離があり、それを段階で埋めるのが導線です。
- 第1段階(制度を理解する): コラム記事で制度の意味と使いどころを説明する。ここでのCTAは相談ではなく「関連する記事」「制度の比較表を受け取る」
- 第2段階(自分の場合に当てはめる): 財産と家族構成のチェックリスト、対策手段の比較表、「この制度が向いている人・向いていない人」の整理を置く。ここで初めて「自分の場合はどうなのか」という個別の疑問が生まれます
- 第3段階(相談する): その直後に「ご家族の構成と財産の内容によって使える手段は変わります。初回のご相談で整理してお伝えします」と接続する
第2段階を飛ばすと、第3段階は「まだそこまでではない」と受け流されます。「家族 信託 デメリット」(3,200)、「相続時精算課税制度 デメリット」(2,400)、「家族信託 必要ない」(2,400)といった検索が示すのは、検索者が使わない理由も含めて知りたがっていることです。都合のよい面だけを書いたページは、この段階で信用を失います。
費用の検索は税金であって弁護士費用ではない
「税金や費用がいくらか知りたい」は177件・17.0%で、離婚(3.8%)や交通事故の被害者側(1.7%)より突出しています。ただし中身の大半は弁護士費用ではなく税金です。上位は「贈与税 税率」(40,500)、「生前 贈与 非課税」(16,200)、「生前 贈与 税金」(13,200)。弁護士費用への関心が高いと読み違えて料金訴求を強めても、導線は動きません。
効くのは別のことです。「どこに頼むか選びたい」は23件・2.2%と小さいのですが、その中身を見ると「遺言書 司法書士」(1,300)、「家族 信託 銀行」(1,170)、「遺言書 行政書士」(480)が上位で、「遺言 書 弁護士」(320)はその下です。検索者は最初に弁護士以外を思い浮かべています。したがって導線の近くに置くべきは料金の安さではなく、税理士・司法書士との役割の線引きと、弁護士に頼むと何が違うのかの説明です。
| テーマ | 検索の例 | 記事で扱える範囲 | 使える表現 | 避ける表現 |
|---|---|---|---|---|
| 贈与税・相続税の税額 | 贈与税 税率/生前 贈与 非課税 | 制度の枠組みの説明まで。個別の税額計算は税理士の領域 | 「制度の概要をご説明し、税額の試算は連携する税理士が行います」 | 「相続税を必ず減らせます」 |
| 制度改正 | 110万円 贈与 廃止 いつから/暦年 贈与 7 年 | 改正の内容と施行時期。適用は個別事情による | 「○年の改正でこの点が変わりました」 | 「今のうちに贈与すれば安心です」 |
| 不動産の名義 | 生前 贈与 不動産/生前 贈与 土地 | 権利関係と争いの防止。登記手続そのものは司法書士に任せる事務所が多い | 「登記は連携する司法書士が担当します」 | 「登記まで当事務所で完結します」(実際には外部に任せている場合) |
| 遺言の効力 | 遺言 書 効力/遺留分 | 要件と、遺留分によって効力が制限される場面 | 「争いになる可能性を下げる備え方があります」 | 「遺言があれば必ず揉めません」 |
相談の理由になるのは期限ではなく「できなくなる時点」
問題が起きた後の分野では、時効や示談書への署名という期限が相談を促す正当な理由になります。生前対策に、その意味での期限はありません。代わりにあるのができることが変わる時点です。判断能力が失われると、遺言も贈与も信託契約も本人の意思では行えなくなります。「認知症 口座凍結」(1,300)、「認知症 銀行口座」(1,000)という検索は、まさにその場面に直面した人の動きです。
これは導線に使えますが、書き方には注意が要ります。「今動かないと手遅れになります」は不安を煽る表現で、業務広告に関する規程が禁じる誇大な表現に近づきます。「判断能力があるうちであれば、遺言・贈与・信託のいずれも選べます」と書けば、事実を伝えたうえで訪問者に判断材料を渡せます。前者は訪問者を追い立て、後者は訪問者に選ばせます。
CTAの文言・位置・数の原則を「受け取る」に適用する(総論04)
総論04(集客できるサイトの条件)のCTA設計の原則は、この分野では「相談する」ではなく「受け取る」に適用します。
- 文言: 「お問い合わせ」より「遺言の進め方をまとめた資料を受け取る」「制度の比較表をダウンロードする」。行動の内容と得られるものを明示します
- 位置: ファーストビュー・本文中の区切り・ページ末尾の3か所が基本。制度解説の記事は長くなるため、制度の説明が終わった直後にも1つ置きます
- 数: 相談と受け取りの2系統までに絞ります。「相談」「資料請求」「セミナー」「電話」を同じ場所に4つ並べると、どれも押されません
| 手段 | 心理的ハードル | 連絡先を得られるか | 適する訪問者 | 相談までの距離 |
|---|---|---|---|---|
| 電話 | 中(受付時間内・会話への緊張) | 得られる | 高齢の本人・判断能力の低下に直面した家族 | 近い |
| 相談フォーム | 中(何を書けばよいか迷う) | 得られる | 具体的な検討に入った層 | 近い |
| 資料・小冊子の請求 | 低(読むだけ) | 得られる | 退職・定年をきっかけに調べ始めた層 | 遠い(数か月〜数年) |
| セミナー申込 | 低〜中(日程の都合) | 得られる | 対面での説明を好む層・家族と一緒に検討する層 | 中間 |
| チェックリストの配布 | 最も低い | 置き方による(ダウンロード時に取得) | 自分に必要かどうかを判断したい層 | 遠い |
運用できない手段を掲げると、返信の遅れがそのまま不信になります。まずは電話・フォーム・資料請求の3つを確実に回すところから始めます。
地域とGBPを導線に組み込む(総論09)
総論09(地域集客の実践)のとおり、Googleビジネスプロフィールはサイト外の導線として働きます。この分野では次の3点を確認します。
- 電話番号と営業時間がサイトの表記と一致しているか。高齢の検索者と家族は、検索結果から直接電話をかけます
- セミナーを開催するなら、その情報を投稿として載せているか。地域名と組み合わせた検索で見つかる入口が1つ増えます
- 口コミへの返信内容が、解決事例や事務所紹介の記述と矛盾していないか
何を成果として数えるか(総論13)
総論13(成果計測と改善)で最も注意が要るのがこの分野です。相談までの距離が長いため、今月の問い合わせ件数だけで導線を評価すると、機能している導線まで失敗と判定してしまいます。最低限、次を確認できる状態にします。
- 資料請求・セミナー申込・チェックリストのダウンロードの件数(相談と別に数える)
- 問い合わせページに来る直前のページ(どの制度の記事が相談を生んでいるか)
- メールマガジンの登録数と、そこから相談に至った件数(数か月後に効いてくる指標)
制度解説の記事にアクセスが集中しているのに相談が少ないとき、疑うべきは記事の質ではありません。理解から相談までの間を埋める段階と、相談以外の受け取り口が置かれているかどうかです。
サンプルサイトで見る実例(How it looks)
ここまでの原則が実際のページでどう現れるかを、サンプルサイト(sample-souzoku.kijiraku.com/contact/)で確認します。このサイトは遺産分割や相続放棄を扱う相続人側の構成なので、生前対策側に作り替えるとどこが変わるかを読み替えながら見ていきます。
ヘッダーの電話番号とページ末のCTAバンド
全ページのヘッダーに「TEL: 03-0000-0000」が常時表示されています。遺言書作成ページの末尾には「まずはお気軽にご相談ください」というCTAバンドがあり、「初回相談60分無料。お電話・メールでのお問い合わせを受け付けております。」という一文に加えて「お問い合わせはこちら」ボタンと「TEL: 03-0000-0000(平日 9:00〜18:00)」が併記されています。一方トップページ末のバンドは「相続のお悩み、まずはご相談ください」「初回60分相談無料。お電話・メール・フォームからお気軽にご連絡ください」と「ご相談を申し込む」ボタンのみで、電話番号も受付時間も入っていません。
機能となぜ: ヘッダーの電話番号は、本文の流れを妨げずに、電話を主要な手段とする高齢の訪問者と家族を拾う別線です。受付時間が併記されていないと、時間外にかけた人に「つながらなかった」という体験だけが残ります。
自事務所への適用ポイント: 電話番号と受付時間は必ずセットにし、全ページで同じ形に統一します。生前対策側では、バンドの選択肢を「ご相談を申し込む」の一択にせず、資料やチェックリストを受け取るボタンを並べます。
トップページの3STEPフローと強み6項目
トップページには「ご相談から解決までの流れ」として、ご相談→方針のご提案→正式受任・実行の3段階が示され、第2段階では想定される手続きの選択肢と費用・期間を説明するとあります。強みは「相続専門特化」「初回60分相談無料」「土日夜間相談予約可」「税理士連携」「司法書士連携」「オンライン相談可」の6項目です。
機能となぜ: 相談と受任の間に「方針の提案」という段階を明示すると、問い合わせが契約の申し込みではなく見通しを聞く行為に見えます。相談がまだ先の半数の検索者は「連絡したら依頼させられるのではないか」と身構えており、この段階の存在が警戒を外します。税理士連携・司法書士連携は、税金の検索が17.0%を占め、司法書士や銀行が弁護士より先に検索されるこの分野では特に重い意味を持ちます。
自事務所への適用ポイント: 生前対策側では3段階の前に0段階(資料を受け取る・セミナーに参加する)を足します。士業連携は名前を並べるだけでなく「誰がどこまでを担当するか」まで書くと、税理士と弁護士のどちらに頼めばよいか分からない訪問者の迷いが減ります。
遺言書作成ページ──生前対策側の直接の実例
このサイトで生前対策を直接扱っているページです。「公正証書遺言・自筆証書遺言の作成支援から、遺言執行者としての遺産承継まで対応します。」というサブタイトルの後、「こんなお悩みはありませんか?」の4項目、業務概要、4ステップの流れ(ヒアリング→案作成→手続き→完成)、料金目安(着手金5万5,000円〜、公正証書の場合11万円〜。「案件の内容・難易度により変動します」の注記つき)、よくある質問2項目、CTAバンドという構成です。本文中に料金一覧へのテキストリンクがあります。
機能となぜ: 手順と金額が同じページにあるため、「何が起きて」「いくらかかるか」が連絡する前に分かります。急いでいない訪問者ほど、連絡する前に全体像を確かめたがります。変動する旨の注記があることで、金額を断定していない点も適切です。
自事務所への適用ポイント: 生前贈与・家族信託・事業承継にも同じ構造のページを作ります。ただしこのページには「まだ作ると決めていない人」向けの出口がありません。作成を前提としないチェックリストや、遺言と信託を比べる資料への導線を足します。
お問い合わせページの構成──連絡先3ブロックと「お話を伺います」
お問い合わせページは「ご相談のご予約・各種お問い合わせは、下記の連絡先またはフォームよりご連絡ください。」というリードで始まり、メールアドレス・電話番号・所在地の3ブロックが並びます。その下に「お話を伺います」という見出しで「初回60分のご相談は無料です。事案の概要と、お差し支えなければご連絡先をフォームにご入力ください。」と案内されています。
機能となぜ: フォームより先に連絡手段を3つ提示することで、入力が負担になる訪問者に別の選択肢を先に見せています。「お差し支えなければ」という条件付きの依頼は、情報を出すことへの警戒を下げます。
自事務所への適用ポイント: この言い回しはそのまま使えます。ただしこのページには受付時間の記載がなく、遺言書作成ページの「平日 9:00〜18:00」と揃っていません。連絡先を出すページこそ受付時間が要ります。生前対策側では冒頭に「まだ具体的に決めていない段階でのご相談も承ります」「ご家族の方からのお問い合わせも承ります」の2文を足します。
フォームの項目設計──4項目・すべて任意・表記は英語のまま
フォームは姓・名・メールアドレス・メッセージの4項目のみで、いずれも必須指定ではありません。一方で入力欄の表示は「First Name」「Last Name」「Enter Email Address」「Enter Your Message」、送信ボタンは「SEND MESSAGE」と英語のままです。
機能となぜ: 項目数と必須指定が減るほど送信までの摩擦は小さくなります。生前対策の相談は家族関係と財産の内容という説明の重い話題を含み、相談内容を必須にすると「どこから書けばよいか分からない」という理由でページを閉じる人が出ます。任意にしておけば、名前と連絡先だけ入れて送るという行動が生まれます。
自事務所への適用ポイント: 項目の少なさは真似してよく、英語表記は真似しません。訪問者の年齢が高いこの分野では、英語の入力欄はそのまま入力の放棄につながります。加えて「どなたのことについてのご相談ですか(ご本人/ご家族)」という任意の選択肢を1つ置くと、折り返しで話す内容を切り替えられます。
生前対策側に作り替えるとどこが変わるか
このサンプルサイトは、テンプレートの見た目や構成の骨格はそのまま使えます。変わるのは次の3点です。
- CTAの選択肢: 「相談」一択から、「相談」と「受け取る」の2系統に増やします。これが最も大きい違いです
- 業務の分類軸: 遺産分割・相続放棄・遺留分といった争点別から、遺言・生前贈与・家族信託・事業承継という対策手段別に変わります
- 事例の書き方: 「解決した」ではなく「備えた結果、何が起きずにすんだか」を示す形に変わります。ただし起きなかったことを成果として保証はできないため、断定を避けた書き方が要ります
このサンプルサイトに足りない点
この記事の基準で見ると、次の不足があります。
- 相談以外の受け皿がない: セミナー・小冊子・チェックリスト・メールマガジンのいずれも用意されていません。相談がまだ先の半数の検索者に対して、離脱以外の出口が存在しない状態です
- 受付時間の表記が揃っていない: 遺言書作成ページにはありますが、トップページ末のバンドとお問い合わせページにはありません
- 返信目安がない: 「○営業日以内にご返信します」の一文を送信ボタンの直上に置きます。実際に守れる日数を書くことが前提です
- 情報の取り扱いの記載がない: 「いただいた情報は弁護士と担当者のみが確認します」の一文と、プライバシーポリシーへのリンクを添えます
- 家族からの相談を受ける旨がない: 本人が読む前提で書かれており、代わりに調べている家族が連絡してよいのか分かりません
影響が最も大きいのは1点目です。相談以外の出口がないと、いずれ相談する訪問者との接点を、その時が来る前にすべて失います。どのページに受け取り口があり、どの記事にCTAが無いかは、キジラクの解析機能で一覧すると見つけやすくなります。
なお、ここまでは生前対策側の設計です。相続がすでに発生し、遺産分割や相続放棄で相続人が困っている側のサイトでは、訪問者は問題を抱えた状態で訪れるため、相談以外の受け皿より即時の相談導線の比重が大きくなり、同じ問い合わせ導線でも重点が変わります。
実践チェックリスト
- □ 相談の手前で受け取れるもの(セミナー・小冊子・チェックリスト・メールマガジン・エンディングノート等)が2種類以上あるか
- □ きっかけとなる出来事ごとに入口が用意されているか(親の入院・退職・子の結婚や孫の誕生・事業承継の検討・判断能力の低下)
- □ 制度解説の記事の末尾に、記事のテーマに対応したCTAとクリックできるリンクが置かれているか
- □ 税理士・司法書士との担当範囲の分担と、弁護士に頼むと何が得られるかが問い合わせの近くに書かれているか
- □ 電話番号に受付時間が併記され、全ページで表記が揃っているか。文字サイズは高齢の訪問者が読める大きさか
- □ 家族が本人に代わって相談できることが明記され、フォームに「どなたのことについてのご相談か」を任意で選べる項目があるか
- □ フォームの項目が最小限で表示が日本語であり、返信目安と情報の取り扱いがフォームの近くに書かれているか
- □ 資料請求・セミナー申込を含めた受け取りの件数を相談とは別に数えられ、Googleビジネスプロフィールの電話番号・営業時間がサイトと一致しているか(総論09・13参照)
これで相続(生前対策)のサイトを構成する7記事の設計を学びました。トップページの記事で急いでいない訪問者を惹きつける構成を作り、業務紹介の記事で対策手段別の分類を、解決事例の記事で「起きなかったこと」を成果として示す方法を、料金ページの記事で税金と弁護士費用を混同させない見せ方を、事務所紹介の記事で長期の関係を前提とした信頼の作り方を、コラム記事の回で制度解説を軸にした設計を扱い、本記事でそれらを相談へつなぐ導線を仕上げました。同時に見えてきたのは、問題が起きた後の分野と、平時に備える分野では、サイトの設計思想そのものが違うということです。前者は困っている訪問者を最短で相談に運ぶ設計で、導線は短く、期限が行動の理由になります。後者は動く理由をまだ持たない訪問者と、数年単位で関係を保つ設計で、導線は長く、相談以外の出口の数が成果を決めます。同じ「問い合わせを増やす」という目的でも、打つ手はここまで変わります。次はこのグループの総合案内ページで全体を振り返り(→相続(生前対策)で集客する)、他分野の各論へ進むか、総論13(→成果計測と改善)で今回作った導線を数値で検証する方法へ進みましょう。長い時間軸の導線ほど、測り方を先に決めておく価値があります。
監修: 花井 直哉(キジラク運営)